刻まれなかった「108」の数字

7月最後の日曜日。神宮球場で行われた夏の高校野球西東京大会の決勝戦

2年前からずっと騒がれ続けた清宮幸太郎選手が、チームの甲子園の切符と「108号」を賭けて頂上決戦に挑む、ということで、前日までは、高校野球にあまり関心がなくなって久しい自分ですら「これは見ておきたいなぁ」と思うくらいの盛り上がりだった*1

これが漫画なら、「苦戦しながらも清宮選手の劇的な逆転ホームランでチームを甲子園に!」ということに必ずなるはずだし、高校野球の世界では漫画以上に劇的なことも多々起きるから*2、自分も、人気が先行し過ぎだな、と思いつつも、最後はやっぱり早実が勝つんだろう、と思っていたところはあった。

ところが、ふたを開けてみれば、ヒールを演じた東海大菅生高校が常に先手を取る展開の中、清宮選手はヒット1本に封じられ、2-6であえなく敗退。

2年前に、同じ対戦相手に大逆転勝利を収めたことが甲子園での大フィーバーにつながったことを考えると、巡り巡って何たる皮肉・・・と思わざるを得ないのだけれど、レベルの高い西東京大会で、高い注目を浴び、厳しくマークもされる中で、決して盤石な体制とは言えなかった早実、というチームが最後まで勝ち残っていたことは本来もっと評価されて然るべきことではなかったかと思う*3

そして、地方大会あるある、で、プロが注目するような有名選手を擁していたのに甲子園に行けなかった、というチームは、必ず次のシーズンで新たなスターと共に躍進を遂げることが多いわけで、雪山投手、野村捕手の2年生バッテリーが健在であれば、来年の早実はかなりいいところまで行くのではなかろうか。

なお、今回の敗退を受けて、業界的には「清宮選手の今後の進路」に関心の目が向けられることになるのだろうけど、個人的には、現在の清宮選手に、このままプロに進んで大活躍できるようなスケールの大きさはあまり感じないし、甲子園での戦績が尻すぼみ(に見える)、というところもちょっと気になる*4
なので、このまま早大に進学して、六大学野球に再びフィーバーを巻き起こす、という方向に行ってくれないかな、というのが、今の自分のささやかな願いだし、これから始まる甲子園で新しいスター候補生が続々と登場してくれれば、清宮選手も心置きなく進学できるのに・・・、と思わずにはいられないのである。

もちろん、これからスポットを浴びるどんな高校球児も、ひと夏だけで「107」という数字を積み上げられるはずもなく、少なくともメディアの中では、“高校球界No.1打者”という称号が、清宮選手以外の選手のところに移ることはなかなかないのかもしれないのだけれど・・・。

*1:残念ながら、午前中、躊躇している間に早くも「満員札止め」というニュースが流れ、足を運ぶことは断念せざるを得なかったが。

*2:自分にとっての代表例はやはり98年の横浜高校だが、今日行われた大阪大会の決勝(準決勝で履正社との頂上対決を制した大阪桐蔭が、決勝戦の9回になって無名の公立高校にあわや、のところまで追い詰められた・・・)のように、毎年何かしらか、出来過ぎたエピソードが出てくるのが高校野球の面白いところである。

*3:トーナメントの組み合わせのアヤもあるとはいえ、春の大会で覇権を争い、夏の大会でも最大のライバルだと思われた日大三高が準々決勝で敗退していただけに、なおさら、である。

*4:プロで活躍する選手は、どこか“持っている”ものだから。

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