制度創設3年目の吉報?

2015年4月に鳴り物入りで始まった「新しい商標」制度だが、これまで度々、本ブログ上でもブーイングを浴びせてきたとおり*1、これまでの特許庁の審査運用は実に不愉快なものだった。

今年の3月1日には、申し訳なさそうに、経済産業省「色彩のみからなる商標について初の登録を行います」というプレスリリース*2を出したものの、認められたのはトンボ鉛筆セブンイレブン・ジャパンの、「これで取れなきゃ誰がとれるの?」という感じの2件のみ。

そして、9月26日付の日経紙朝刊に掲載された以下の記事は、より怒りを増幅させるものとなった。

特許庁は歌詞のない曲の商標登録を初めて認める。大幸薬品と独BMW、米インテルの3社が出願していた商標を登録する。CMなどで長年使われており、広く認知されていると判断した。」(日本経済新聞2017年9月26日付朝刊・第5面)

特許庁は、その日のうちに「音楽的要素のみからなる音商標について初の登録を行いました」というプレスリリース*3を出したのだが、大幸薬品と米インテルはまだ分かるとしても、マドプロルートで出されていたBMWの登録まで認めてしまった(国際登録1177675)のは、おいおい、という感じである。

制度導入直前の熱気に押され、歌詞を付けずに音楽的要素だけで商標を出願した会社は他にも多数あるのに、どこよりも先んじて「聞いたことはあるが、どこの会社のCMで流れていた曲か分からない」レベルの商標の登録を認める、というのは、いかなる了見なのか・・・。

同じプレスリリースの下の方には、これまでの新しい商標に関する出願・登録数も掲載されているのだが、色彩商標は509件出願されている中、依然としてたった2件の登録しか認められていない。

自分は、「単純な色彩や音だけでは商標としての出所識別機能を発揮しえないから、原則として登録を認めない」という特許庁の審査運用を否定するつもりはないし、それ自体は一応の理屈が通った話だとは思っている。

ただ、その原則を貫こうとするのであれば、制度創設前のあのPRはなんだったのか。

そして、これだけ時間をかけてもなお、多くの商標で登録するか否かの判断が留保されている、という現実*4を前にしてしまうと、結局は、斜陽の商標部門に瞬間的なスポットライトを当てるための「特売セール」に過ぎなかったのか、と、嫌みの一つや二つは言いたくなる。

現在行われている審査の結果、大量の屍が生まれてそのまま不服審判にまでもつれ込むのか、それともある程度まで整った段階で一気に査定祭りの春が訪れるのか。

今は全く予想もつかない状況ではあるのだけれど、どこかでもう少し納得感のある線引きがなされることを、自分は願ってやまない。

*1:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20151201/1449416848の記事などを参照。

*2:http://www.meti.go.jp/press/2016/03/20170301003/20170301003.html

*3:https://www.jpo.go.jp/seido/s_shouhyou/otoshouhyou-hatsutouroku.htm

*4:しかも、異動で審査官が変わるたびに教示する内容が変わったり、明らかに制度の本質にそぐわない教示をして、余計に出願人をイラつかせる、という現実

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