決して「悲しい」なんていうなかれ。

いつの間にかルメール騎手の手に落ちたドバイG1馬のヴィヴロスが人気の中心となっていたエリザベス女王杯だったが、スローな展開の中、先行したクロコスミアを最後に捕まえ、ミッキークイーンの火を噴くような追込みを交わしきったモズカッチャンが、初めてのG1に輝く結果となった。

道中の位置取りといい、最後の直線の一追いごとの馬の動かし方といい、名手、ミルコ・デムーロ騎手の良さがこれでもか、というほど発揮されたレースだったが、興味深かったのは、レース後のインタビューでM・デムーロ騎手が、会心の勝利であるにもかかわらず「悲しいです」と漏らしたこと。

背景としては、M・デムーロ騎手が、春シーズン、フローラSオークスと、低人気をものともせずに実績を残し、モズカッチャンを世代のトップホースに押し上げた主戦・和田竜二騎手から手綱を「奪う」形になってしまったこと、そしてよりによって、今日最後の最後で大金星を逃したクロコスミアに乗っていたのがその和田騎手だった、ということから出たコメント、だということだが・・・。


競馬の勝敗を左右するのは、一義的には「馬の力」なのだけど、トップレベルの馬たちが覇を競う古馬混合G1ともなってくると、「騎手の腕」も勝敗をかなり左右する、というのは改めて言うまでもないことで、それは、馬のデキ自体は秋華賞の時と比べても遜色なかったのに、今回乗り替わった騎手の下で、スタート出遅れ、4コーナーでも後手を踏んだために、最速の上がりを空砲にしてしまったリスグラシュー*1を見れば明らかだろう。

和田騎手は今週絶好調で、日曜日だけで3勝という固め打ちをしているくらい調子が良かったから、仮にモズカッチャンに騎乗していたとしても遜色ない結果を残した可能性は高いのだが、やはり確率としてはM・デムーロ騎手の方が高かったのは間違いないわけで、見方を変えれば思い入れの深いモズカッチャンではなく、テン乗りのクロコスミアだったからこそ無理のない先行策で2着、という結果を出すことができた、ともいえるだろう*2

このご時世、どんな馬も、デビュー戦から一人の騎手の下でだけ使い続ける、というのはかなり難しいし、「替えたい」と馬主、調教師が思う騎手には、皆それなりの理由がある。
だから、必要以上に日本人的な「悲しい」なんてフレーズを口にする必要はなかったのに・・・と思わずにはいられない。

そして、まだまだ続く功名争いを兼ねた戦いの中で、乗り替わりを余儀なくされた騎手たちが、一矢でも二矢でも打ち込めば、それがまた新しいドラマになるのだ、と。

*1:鞍上の騎手の名をあえて言うなら「福永」である。瀬戸口調教師急逝の報を受けて、いつも以上に力が入ってしまったこともあるのかもしれないが、個人的にはまたか、という思いがこみ上げてくる・・・。

*2:ローズSではラビットランで春のクラシック組をまとめて葬るなど、今季の和田騎手の勝負強さには特筆すべきものがあるのも事実だが。

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