一時期はアントラーズがほぼ優勝決定、というムードだったJリーグだったが、最後の最後で2戦連続スコアレスドローで急ブレーキがかかった常勝チームを尻目に川崎フロンターレが怒涛の3連勝を飾り、勝ち点で並んで得失点差で逆転、という見事な逆転優勝劇を飾った。
ストーリーだけ見ると“優勝を拾った”ように見えてしまうが、今季、川崎と鹿島のリーグ戦での対戦結果を見れば、ホームでもアウェーでも完膚なきまでに川崎が鹿島を叩きのめしているのであって、今年のシーズンで一番強く、魅力的なサッカーをしたチームが順当に優勝しただけだ、と自分は思っている。
いや、今年に限らず、もう何年も、フロンターレのサッカーはずっと魅力にあふれていた*1。
短期間で強化方針がぶれず、一人の監督にじっくり土台作りを任せるのがこのチームの良いところで、その結果もたらされたのが関塚隆(2004〜2009年)、風間八宏(2012年〜2016年)の両監督時代の躍進である。
もちろん、縦に速いカウンターサッカー志向が強かった関塚監督の時代と、ボールを奪い、ゴールまで「運ぶ」華やかな攻撃的戦術に彩られた風間監督の時代とでは、チームカラーも大きく変わっているのだが、スピード感ある攻撃で上位の常連だった名門チームを混乱に陥れ、毎年終わってみれば安定して上位の実績を残してきた、という点に変わりはなかった。
そんなチームが、唯一手がしていなかったのが、J1レベルでの「優勝」。
初めてJ1に昇格した年のナビスコ杯準優勝はフロック、と言われても仕方ないものだったし、その後も「無欲の勝利」の積み重ね、と評価されるようなシーズンもあったが、上位常連となったこの10年くらいは、一度や二度ではなく「火が付いた時の勢いを見ればもっとも優勝にふさわしい」と称されるシーズンや、「サッカーの美しさでは一番」と称えられたシーズンの繰り返しだった。
しかし、結果的に関塚監督最後のシーズンとなった2009年は、リーグ戦もナビスコ杯も「まさか」の取りこぼし、そして、円熟期を迎えた風間サッカーの最終年だった昨年度も、リーグ戦の栄冠にあと一歩届かず、天皇杯でアントラーズに苦杯をなめる。
途中から押しに押しまくりながらも、延長戦で勝負強い鹿島に勝ち越しを許し、終戦を迎えた今年の元旦、その日をもって名監督と絶対的エースを失うことになったチームが、その後、新体制の下で新しい歴史を開くことになるとは、当時、夢にも思わなかったものだが、これも勝負の巡りあわせ、というべきものなのかもしれない*2。
そして、個人的には、チーム一筋15年、J2時代から主軸として活躍し続けてきた中村憲剛騎手が、この瞬間にピッチ上で立ち会えた、ということにも感じ入るところはあった*3。
長く在籍し続けることが美徳、という世界ではないし、国内外、チームを離れても行けるところはいくらでもあったはずなのに、それでも、彼がチームの主軸としてそこに居続けた、ということの重さ・・・。