阪神に舞台を移して4度目の開催となった朝日杯フューチュリティステークス(朝日杯FS)。
武豊騎手が制覇していない数少ないG1の1つ*1ということで毎年注目が集まるレースでもあるが、今年は騎乗馬が早熟短距離血統のアサクサゲンキ、という時点でその興味は早々と消滅し*2、後は、ここに照準を合わせてきたサウジアラビアロイヤルカップの上位2頭(ダノンプレミアム、スティルヴィオ)と、4戦3勝、京王杯2歳S優勝のタワーオブロンドンのどちらが強いか、という点に関心が絞られることになった。
一昔前までは、2歳牡馬にとって唯一のG1、ということもあって、東スポ杯2歳Sをはじめ、もう少し長い距離を使ってきた馬たちも多く参戦していたし*3、“クラシック路線”に進めるような大物刊を漂わせつつ距離的にどうかなぁ、という馬が少なからずいたので予想も困難を極めたのだが、ホープフルSが皐月賞と同じ舞台・距離で「G1」として行われることになった今、こちらのレースは、より“スピード重視のマイル色”を強めている。
それゆえ、今年もこれまでのレースで“速さ”を見せつけた馬が順当に人気上位を構成し、蓋を開けても、1〜3番人気馬が予定調和的に上位を分け合う、という穴党には何とも面白くない結果となってしまった・・・。
優勝したダノンプレミアムは、前走も東京マイルレコード勝ち、ということで、元々「死角」を強いてあげるなら、鞍上が川田騎手*4、ということくらいしかなかった馬だ。
そして、そんな大本命馬が、「絶好のスタートから好位に付け、最後の直線手前くらいから、さしたる不利を受けることなく馬なりで先頭に立つ」というレースを演じてしまえば、当然ながらぶっちぎることになる。
2着との差は実に3.5馬身。最初の1000m・59秒3というのは決して楽なペースではなかったが、追い込んでくる2着馬(スティルヴィオ)を尻目にゴール前でさらに粘り脚を使い、叩き出した走破タイムは1分33秒3、という驚愕の数字。
これはもう、鞍上がルメール騎手だろうが川田騎手だろうが、あるいは藤田菜七子騎手だろうが、先頭でゴール板を駆け抜けただろうな、というほかない。
もちろん、今回あまりに強い勝ち方を見せてしまったために、陣営としては今後の使い方が悩ましくなるのも確かだろう。
過去の朝日杯FSの「成績欄」の馬たちを見ても、この10年で「1分33秒台」という好タイムでレースを制した馬は、グランプリボス、アルフレードのように、NHKマイルC以外は好成績を残していない馬が多いし、好タイム+後続を2.5馬身差も離したゴスホークケンなどは、NHKマイルCSすら惨敗し、3歳以降、ほとんど誇れる戦績を残せないままJRAでの現役生活を終えた。
有力馬が揃った来週のホープフルSで、強い勝ち方をする馬が出て来たら、今年の最優秀2歳牡馬のタイトルはもちろん、「クラシック候補」の称号すらも薄れてしまう、という悲しい立場にあるのが今日の勝ち馬の避けられない運命とも言える。
だが、それでも、今日の圧巻のパフォーマンスはしばらく脳裏から離れないだろうし、「もしかしたら距離が伸びても」と思わせてくれた感覚は、あと半年忘れない方が良いのかな、と思えてならないのである。