「3対1」の構図の中で。

何で沈黙を保ってるんだろう、と呟いた数時間後に、こんな記事を持ってくるとはさすが日経、である。

リニア中央新幹線の建設工事を巡る入札談合事件で、鹿島、大成建設清水建設の大手ゼネコン3社が、独占禁止法の課徴金減免(リーニエンシー)制度に基づく違反の自主申告をしない方針を固めたことが16日、関係者への取材で分かった。不正な受注調整には関与していないと判断したもよう。申告期限の22日までに最終決定する。」(日本経済新聞2018年1月17日付朝刊・第35面、強調筆者)

昨年の時点では、大林組の自主申告等もあって勝負あったか、と思われたこの事件だが、鹿島建設に続き、大成、清水まで「受注調整には関与していないので自主申告しない」ということになると、形勢は一気に逆転する。

当然のことながら、「不当な取引制限」の行為要件(法2条6項)は、

「事業者が、契約、協定その他何らの名義をもつてするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行すること

ということで、現在、被疑事実として指摘されている“入札談合”は、一事業者単独では行うことはできない。
そして、大林組がいかに「受注調整した」と主張したところで、他の三社がそのような調整に応じていないのであれば、こと現在の筋での独禁法違反は成立しない、ということになる。

もっとも、現在関与を否定している3社も「担当者同士で会合を持って情報交換をしたことなどはあった」(同上)というところまでは認めているので、今回の選択が危うい橋を渡るものであることに変わりはない。

そして、諸説あるものの、間接事実の積み重ねによって、であっても、事業者間の「意思の連絡」を立証できてしまえば、前記行為要件に該当する、ということは可能だから、交換していた情報の内容や情報交換の時期、態様によっては、当事者がいかに関与を否定したところで、検察も公取委も着々と処分に向けて動いていく可能性は否定できない・・・*1

「3対1」といっても、「?」が検察・公取委のストーリーに乗っかった動きをしている以上、まだまだ事態は予断を許さない、というのが率直な感想になってくるのである。

果たして、公権力サイドは、被疑事業者が争うスタンスであることを承知で徹底的に攻め続けるのか、それとも、全面敗北のリスクを避けて、いったん振り上げた拳を降ろすタイミングを模索していくことになるのか。

いずれにしても、なかなか見られない展開になっているだけに、「今後」には要注意だな、と思った次第である。

*1:当然ながら、課徴金減免制度の恩恵は、自ら申請しない限り受けられない。

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