今年、5月以降に行われたG1レースでは「平成最後」という枕詞が使われることが多かった。
競馬の世界で「元号」が大きな意味を持つことはそんなにないから、個人的にはほとんど聞き流す類のキャッチコピーだったのだが、そんな中行われた安田記念で、奇しくも「平成」という時代の中で完結するストーリーを目にすることになるとは・・・。
人気になっていたのは、最内枠、ミルコ・デムーロ騎手騎乗のスワーヴリチャード。
元々は5〜6歳世代が強いレースとはいえ、今季の4歳世代の強さと、同馬の東京コースでの圧倒的な相性(4戦2勝、2着2回、1800m〜2500m、全ての距離で連を外していない)や金鯱賞、大阪杯での圧巻のパフォーマンスを考慮すると、十分理解できたところ。
自分はここまで人気になっていると、どうしても食指が伸びず、同じ4歳世代でも、マイルで底を見せていないサングレーザーと前走の敗因(湿った馬場での失速)がはっきりしているアエロリットの組み合わせを本線にしたのだが、そんな中、ヒモでこっそり馬券の片隅に入れていたのがモズアスコット、という馬だった。
賞金不足を憂いて前週のオープン特別(安土城S)に出走させたものの、伏兵ダイメイフジに敗れて2着。
上位馬の回避で運よく出走できたものの、このローテーションでは・・・ということで9番人気に甘んじていたのだが、サングレーザーとともにあのエアスピネルを完封したマイラーズC(2着)でのレースぶりと、マイルで連を外していないというサングレーザー以上の安定感、そして、馬に合わせたレース選択に定評がある矢作厩舎からの出走馬のうち、最も人気がなかったこと*1から、目を付けていたのだが・・・。
蓋を開けてみたら、後方から今一つ伸びなかったサングレーザー(5着)、伸びたが前が止まらない馬場では追い始めた時点での位置取りが悪すぎたサトノアレス(4着)を横目に、スワーヴリチャードの真後ろからモズアスコットが進出。
スワーヴリチャード(3着)には出し抜けを食らわせ、先行集団から本来の力を発揮して押し切ろうとしたアエロリットまでゴール前でクビ差捉えて、モズアスコットがタイレコード、かつ先頭でゴールを駆け抜ける結果となってしまった。
自分は馬券が取れたこともあって満足感を味わい、“これぞ矢作マジック”だな、と悦に入っていたのだが、同じ4歳馬でも上位3頭以外の馬に賭けていた人にとっては、何とも悔しいレースとなったことだろう*2。
で、そんな中、見かけたニュースが、「連闘での安田記念勝利は29年ぶり」というもの。
歴史を紐解けば、バンブーメモリーが当時オープン特別だったシルクロードSで3着に敗れた後、連闘で臨んだ安田記念で優勝を飾った、というデータが出てくるのだが、普通に計算すれば分かる通り、そのバンブーメモリーが優勝した安田記念が行われた年は「平成元年」・・・。
さすがに、あの頃のレースで覚えているのは、オグリキャップが出ていたレースくらいで*3、この安田記念がどういうレースだったのか全く記憶には残っていないのだが、こんなところで、奇妙なローテーションの符合が生じることになるとは、偶然にしては出来過ぎている気がしてならない。
幾ら最初と最後だからといって、オグリキャップのような人気・実力を兼ね備えた傑出したスーパーホースが今年の秋までに誕生することはあまり期待できない状況だし、マイルCSからジャパンCに連闘で参戦して世界レコードで走る、なんてことをしでかす馬が出てくるとも考えにくいのだが、「29年前」に隠されたヒントがないかどうか、はしばらくの間は調べておいた方が良いかな、と思った次第である。