日本時間、7月16日午前0時から行われたW杯決勝。
延長戦そしてその先のPK戦まで見据えて準備万端で臨んでいたのだが、勝利祝いのシャンパンはもちろん、それまでのつなぎのつもりで用意した酒すら飲み切れないまま、あっけなく90分で終わってしまった。
14日付のエントリー*1で引用したのと同じ形式で、決勝の試合を表現するなら、以下のようになる。
勝者 決勝 対クロアチア 4-2
ボール支配率38%、シュート8本(うち枠内6本)/相手シュート13本(うち枠内4本)
シュート者上位:エムバペ3、グリーズマン2、ポグバ2
パス成功者上位:ポグバ29、エルナンデス24、ロリス21
敗者 決勝 対フランス 2-4
ボール支配率62%、シュート13本(うち枠内4本)/相手シュート8本(うち枠内6本)
シュート者上位:レビッチ3、ラキティッチ3、ブルサリコ2 ほか
パス成功者上位:ブロゾビッチ88、モドリッチ68、ブルサリコ61
今大会随所で見られた「矛&盾」対決の中でも、お互いが「攻められる盾」「守れる矛」であった分、極上のクオリティとなったこの戦い。そして、両者の持ち味が存分に発揮された、ということは、62:38というボール支配率の圧倒的な格差と、シュート数と枠内シュート数の優劣が見事に逆転する、というマジカルな結果が十分に物語っている。
そして、セットプレーからあっけなくフランスが先制したのは「青」の勝ちパターン通りだったし、クロアチアが10分後、怒涛のような波状攻撃で10分後にすかさず追いついた、というのも、まさに「赤白」の勝ちパターン通り。
今大会を象徴するようなVAR判定*2がクロアチアのプランをちょっとだけ狂わせたが、後半に入ってからも、フランスの攻撃は全く形にならず*3、圧倒的に攻めていたのはクロアチアの方。
決勝トーナメントに入ってから3試合連続で120分を戦い、「もはやこれまでのようなパフォーマンスは期待すべくもない」という大方の想像をいい意味で裏切ってくれたクロアチアの不屈の魂をもってすれば、ちょっとしたきっかけで再逆転、という展開も十分に予想できたし、後半10分にフランスの守備の要、カンテ選手をベンチに追いやったところまでは、まさに「シナリオ通り」の展開になっていたはずだった・・・。
多くの識者は、その後、痛恨の2失点で勝負が決まったこの試合を「後半、クロアチアが力尽きた」と評している。
だが、真実は、カンテ選手という楔から解き放たれ、それまでは多少なりとも守備に比重を置いていたクロアチア中盤の名手たちが、名実ともに「美しく、攻めて、勝ちにいく」というマインドで統一されてしまったことが悲劇の始まりではなかったか。
90分を通じて、「これはやられるかも」というシーンを必ずきっちりと得点に結びつけたフランスイレブンの完成度の高さには、ただただ賛辞を贈るしかないのだが、ポグバ選手の3点目にしても、エムバペ選手のとどめの4点目にしても、守備陣の心がもう少し自軍寄りにあったら、そして、GKのスバシッチ選手がこれまで通りの集中力と反応の良さを発揮していてくれれば、と思いたくなるような代物。
幸いにも、終盤まで「2点」というセーフティリードを保ち続けることができたことで、勝者は準決勝とは打って変わって「誇り高き勝者」のプライドを最後まで保つことができたし、敗者も過度にヒートアップすることなく、「グッドルーザー」としての印象を残すことができた。
だが、それまでの拮抗した戦いの中で、クロアチア人のハートに心打たれ、姑息なフランス人の立ち回りを憎んだ者からすれば、「W杯決勝、あと一つ勝てば優勝」という舞台にしては、時間が過ぎれば過ぎるほど試合が大味なものになっていたことは否めないわけで、振り返れば振り返るほど、この千載一遇のチャンスを逃したクロアチア代表の“惜しさ”に目を向けずにはいられない。
大会が最後まで終わってしまえば、いかに代表チームとはいえ、もう全く同じメンバーで試合をすることはできない。
そして、それが分かっていたからこそ、とことん勝利にはこだわってほしかった。
それが、“にわか”でクロアチア代表のここ数週の試合を見続けた者が抱いた、率直な思いである。
*1:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20180714/1531595336
*2:いろいろと批判している人は多いが、個人的にはあの「手」は、DFの選手が自分の「意思」で瞬間的に出したもののように見えたし、それまでの「ハンド」に対する今大会の判定と比較しても、「誤審」といわれるレベルのものでは決してなかったと思う。
*3:これまでフランスの攻撃の鍵になっていたジル―選手にしてもパバール選手にしても、味方へのパスはことごとくカットされ、ほとんど機能していなかったに等しかった。