「自爆テロ」を「効果的手法」に変えた「司法取引」という裏ワザ。

依然収まらない日産のカルロス・ゴーン会長をめぐる一連の騒動。「容疑者」としてこれだけ報道され続けながら、未だに「代表取締役会長」という肩書を持ち続けているのは何とも不思議な気がする*1

海外在住のボードメンバーもいる会社だから、(既に取締役2名が欠けている状態で)簡単には取締役会を開けない、ということなのかもしれないが、やはりこういうところ一つとっても、何となく“日本の常識”から乖離しているように見えてしまう(不正検査問題以来ずっとそういう状況ではあるが)のが、この会社の最大の弱点なのだろう、と思わずにはいられない。

で、今日になって俄然盛り上がったのが、今回の金商法違反の捜査に先立って「司法取引」が行われていた、というニュースである。

最初そのニュースに接した時は、「なるほど、両罰規定があるにもかかわらず、会社が「金商法違反」という材料を会長追い落としのために使うことができたのは、『(日本版)司法取引』を使ったからなのか・・・」と勝手に納得してしまっていたのだが、続報によると、「司法取引を使ったのはオランダ子会社を統括していた外国人専務執行役員」とも言われている。

「かねて噂されていたゴーン会長の会社資金の公私混同。極秘の社内調査が始まった。当時、外国人の専務執行役員がゴーン会長の自宅購入に使っていたオランダの子会社を管理していたことを把握。調査の協力を取り付けた結果、ゴーン会長らとやりとりしたメールなど不正行為を示す直接証拠を収集し、東京地検特捜部に持ち込んだ。その後、外国人の専務執行役員らと特捜部が司法取引で合意。カリスマ経営者ら2人が逮捕に追い込まれた。専務執行役員らが取引に応じた理由には、自身の刑事処分の減免につなげる目的があったとみられる。」(日本経済新聞2018年11月21日付Web)*2

会社自身も「司法取引」の対象となっているかどうか、というもっとも重要な点はいずれ明らかになるのだろうが、仮に会社が直接適用対象になっていないとしても、一連の捜査協力で寛容な処分となる可能性は十分にあるから、当初は一見すると「自爆テロ」のような様相を見せていた本件も、実際には周到な用意の下、「肉を切らせて骨を絶つ」対応をした模範事例となりそうな気配である。そして「司法取引」というツールが社内不正の責任追及にも有力だ、ということを知らしめてくれた、という点でも本件には大きな意味がある。

自分は古い人間だから、どうしても、「次のタイミングまで待って・・・」*3と言いたくなるし、昨日のエントリーでも書いたように、「外からの力」に頼らないと正常な状況に戻れない会社、というのは、やはり組織としては異常だと思っているから、今日に入ってからの報道を眺めていても非常に複雑な思いだったのだが、今回の出来事が(トップ起因の)企業不祥事対応の転換点になるかどうか、もう少しじっくり様子を見守っていきたいと思っている。

*1:上場企業トップの逮捕といえば、思い出すのは未だにライブドア事件だが、当時現役バリバリのカリスマ経営者だった堀江社長ですら、代表取締役と社長職を退いたのは逮捕後1日か2日くらいのことだった。

*2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37998330Q8A121C1EA2000/?n_cid=TPRN0003、強調筆者

*3:いきなり外に持ち出して、ドラスティックな公開捜査で事を世間にさらす前に、社内での真相解明と自浄作用の発揮をできるところまでやってみよう・・・という主旨で。

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html