昨日の一番のニュース、といえばやはりこれ。
「東京地検特捜部は4日、オマーンの販売代理店に支出した資金を自らに還流させていたとして、日産自動車元会長、カルロス・ゴーン容疑者(65)を会社法違反(特別背任)容疑で逮捕した。「オマーンルート」の強制捜査着手で、特捜部が描く「日産私物化」の構図が強まった。経営者としての威信にかけて無罪主張する元会長側との攻防が一段と激しさを増す。」(日本経済新聞2019年4月5日付朝刊・第1面)
昨年、カルロス・ゴーン元会長をめぐる一連の騒動が始まった頃から、海外での資金還流の話は公然と報じられていたが、一方で、「立件が難しい」「捜査の限界」といった声もよく耳にしていたところだった。そして、昨年末、「形式犯」の金商法違反から特別背任に踏み込んで再逮捕勾留をした時も、ネタになったのは、反論される余地がありそうな「付け替え」の被疑事実の方で、まだ本丸には少し遠かった。
それが、既に公判準備も始まり、当の被告人は保釈まで勝ち取っている、という段階で、再びの身柄を押さえての捜査着手。
記事の中で、
「確実に立証できるよう慎重に判断した。これなら誰からも文句を言われない内容だ」(上記第3面)
という検察幹部の声が紹介されているように、おそらくこれは、司法共助等も活用した満を持した捜査の結果だろうし、グローバルに行われた経済犯罪*1、という被疑事実の性質を考慮すると、いかに先行する起訴事実に関して保釈され、保釈条件を被告人が遵守しているといっても、証拠隠滅の恐れ等を考慮して逮捕勾留する、という判断になることもわからないではない。
ただ・・・
個人的には、来週8日に「取締役解任」が議題になっている株主総会を控え*2、ゴーン氏本人も「11日の記者会見」をほのめかしていた状況の下で、今回の逮捕・勾留請求は、あまりにタイミングが良すぎないか、と思うところである*3。
そして、まだ起訴済みの事実に関する公判が始まるまでには、だいぶ時間があったと思われるこのタイミングで、いきなり、こういう形で「4度目」に踏み切ったことで、そうでなくてもいろいろと勘繰られている本件に、また新たに雑音が加わることを憂いざるを得ない。
まぁ、冷静に見れば、誰でも気にしそうなことでも、別の価値観の下で押し切ってしまう、というのが、大組織の中で「権力」を持つ人たちの発想なのかもしれないけれど、そういうものとは距離を置きたい、と思っているのが今の自分だったりもする。