「新卒一括採用」の呪縛から解き放たれるとき。

ここ数年の迷走を見ながら、いつかはこうなるだろう、と思っていたが、この国にしては意外と早く事が決まったようである。

経団連は新卒の学生の就職活動について、通年採用を広げていくことで大学側と合意した。春の一括採用に偏った慣行を見直す。能力を重視した採用の動きが強まるなか、大学を卒業した後での選考など複数の方式による採用へ移る。自由な採用活動が広がる契機となり、横並びの一括採用と年功序列を象徴とする日本型の雇用慣行が大きく変わりそうだ。」(日本経済新聞2019年4月19日付朝刊・第1面)

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以下のフォロー記事をはじめ、いろいろとキレイな理屈が並べ立てられているが、どちらかといえばこれらは単なる「口実」で、経済界側の事情を端的に言えば、もはや各社一斉にスタートを切って学生を取り合う「新卒一括採用」だと、どこの会社も求めている水準の人材を必要数採れなくなってしまっている、ということ*1

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自分はもともと、”学業に配慮して”採用活動の時期に縛りをかける、という思想自体が、「大学の都合ファースト、学生の事情二の次」ということで大嫌いだったので、今回の見直しによって、そういった縛りが解かれ、「どの会社も必要な時期に必要な人を採用する、学生もそれに合わせて自分の進路を決めたいタイミングで動く」ということになるのであれば万々歳だと思う。

もちろん、今も昔も、「自分から意欲的に勉強して、意欲的に進路を決める」という学生が、決して多数派ではない、ということは十分理解しているし、これまでの一括採用が、多数派の学生たちを「シューカツ」という人工的な波に乗せることで「進路未決定者」を減らす、という効果を発揮していたことを否定するつもりはない。

「雇用慣行の変化」だって、一朝一夕に起きるものではないだろう。

ただ、「群がってくる魚を、多少粗くても大きい網で一気に囲い込んで連れてきて、何年か池の中で餌をやって育てて、見事に育った魚だけ大海に放つ(他の魚は衰えるまで池の中で面倒を見る)」というようなやり方が通用する世の中ではなくなっている、そういう現実を踏まえるなら、しばしの混乱、路線輻輳期があったとしても、いずれは、新卒(&+α)採用に関しても、「必要な人材を必要な時に取る」というスタイルが定着するはずだし、才気溢れた学生たちにとっても、採用する学生を細かい網の目でじっくりと吟味したい企業側にとっても、それがまさにベストなのだと自分は思っている。

今予定されている「2022年春」というタイミングで、自分がどこで何をしているかはわからないけれど、社会人生活の振り出しから四半世紀近く経って、ようやくこうなる、というのは、非常に感慨深い。それだけである。

*1:この点については、混乱が続いていた時期のエントリーでも予言(?)していたとおりである。生々しく語られる就職戦線の混乱。 - 企業法務戦士の雑感

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