これぞ正真正銘の「必死のパッチ」

歳をとると、いろんなものに免疫ができてきてしまって、いわゆる”煽り”的な演出には、「感動」する前に引いてしまうことの方が多いのだけど、さすがに昨日の原口文仁選手の「劇的復活」には、いろいろと感じ入るところがあった。

「甘く入った4球目のスライダーを力強く一振りすると、打球は左翼手を超えてフェンスを直撃。勢いよく走った原口は「2~3年ぶり」というヘッドスライディングで二塁に到達した。復帰初打席で見事に期待に応え、笑顔で何度も拳を突き上げた。」(日本経済新聞2019年6月5日付朝刊・第29面)

キャンプインを前に、突然の「大腸がん手術」公表。
おそらくは、人間ドックを機とした早期発見だったのだろうけど、普通の勤め人でも結構堪えるシチュエーション、しかも彼は常に一軍当落線上にいる中堅プロ野球選手である。

2016年に育成選手の立場から一転して大ブレイクを果たしたものの、その後は激しいレギュラー争いの中でスタメンになかなか定着できず。
昨シーズンなどは、「代打」として持ち前の勝負強さを存分に発揮していたものの、最初から「自分は代打でいい」と思っているプロ野球選手などいないわけで、同じ捕手出身の矢野監督に代わって「これからアピールするぞ!」と思っていた矢先に突然のアクシデントで離脱、となれば、その理由が「がん」でなくても、大抵の人間ならしばらくは立ち直れないくらいの失意のどん底に落ち込んでしまうだろう・・・。

だが、それから半年も経たないうちに一軍復帰し、選手登録されたその日に、代打でタイムリーヒット

試合の行方がほぼ決まった9回、しかも、凡ゴロでも得点が入る一死三塁という場面で彼を起用した矢野監督の粋な計らいには「さすが」の一言だけど*1、そこで食らいついてヒットを打ち、しかも二塁までかっ飛ばす原口選手の根性も見上げたものだ。

今日の試合では、1点を追う5回、一死一、三塁という難しい場面で代打の一番手として登場したものの三振に倒れ、2日続けてのヒーローインタビューという栄誉には預かれなかったが、このまま体調を崩さずに一軍に定着してくれるのであれば、ここまで”そこそこ”の健闘を見せている前年最下位チームにとって非常に心強いのは、言うまでもないことである。

3年前にお立ち台で連呼して、甲子園でもちょっとした流行語になった「必死のパッチ」は、”本家”だった矢野監督の就任に伴い封印する予定だったみたいだが*2、グラウンドの内でも外でも名実ともに”サバイバル”な状況を耐え抜いてきている原口選手ならば、使っても誰も文句は言わない。

そして、体を張り続ける彼の姿を見てしまうと、「ちょっとやそっとのアクシデントで挫けるな自分」という思いも、また強く持たざるを得ない・・・。

できることなら、あと10日ちょっとのオールスターファン投票期間に、みんなで集中投票して*3、3年ぶりの大舞台にも立たせてあげたいところではあるのだが、自分としては、まずはこの先一試合、一試合の活躍を願うばかりである。

npb.jp

*1:「暗黒の3年」時代の監督と比べると、矢野監督の選手の使い方は上手だな、というのは今シーズンが始まってからずっと感じていることでもある。

*2:阪神・原口、『必死のパッチ』一時“封印”「矢野さんの言葉なので」 (1/2ページ) - 野球 - SANSPO.COM(サンスポ)参照。

*3:捕手だと梅野隆太郎選手と共倒れになってしまうので、一塁手部門で集中投票したいところだけど、そううまくはいかないかな・・・。

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html