株主総会シーズンの到来を前に思うこと。

6月の1週目も終わり、3月期決算の会社の総務、法務関係の仕事で飯を食っている人間にとっては、いよいよ、という時期になりつつある。

自分は、金融庁が「余計なお世話」な感じの報告書を出す20年近く前から、預金利息の低さに危機感を抱いていた人間だから、20代の頃から、株式にもちょこちょこ手を出していた。
しかも、博打好きなくせに、「買った直後には大体株価が下がる。それでしばらく持ち続けていると愛着がわいて売るに売れなくなる」*1という、短期投資には極めて不向きな性格だから、1単元、2単元くらいのレベルで、脈絡のない超分散型のポートフォリオが組まれることになる。

したがって、毎年この時期になると、あちこちから大量に「株主総会招集ご通知」が届くことになり、今年も、大体出そろった今日の時点で数えてみたら、ざっと30弱。

世の中には、Webにアップされる招集通知をくまなくチェックして、的確なコメントを発信されている機関法務パーソンの鑑のような方もいらっしゃるので、「紙で送られてきてようやく目を通す」レベルの自分があれこれコメントするのは申し訳ない気もするのだが、せっかくサンプルがあるのだから、ということで、気づいたことをいくつか書き残しておくことにしたい。

グレードアップした招集通知&添付書類のカラフルさ。

自分が株を買い始めた頃、総会招集通知と言えば、極めて「定型的」なものだった。
招集通知の定型フォーマットに始まる一貫した白黒のコントラストの束の中に、参考書類、事業報告、計算書類が続き、最後に監査報告が載る、という一種の「様式美」。

それが年を追うごとに、実に各社様々、バリエーションのあるものになってきている。

今年に関して言えば、特に目立つのが、SDGsのカラフルなアイコンを使って「サスティナビリティ課題」の説明をしている会社で、そういうのを見ると、「資金潤沢な一流企業は違うなぁ」と感心せざるを得ない。

もっとも、あまりに各社の個性が際立ってくるようになると、同業社間での記述を比較したい時などに、該当箇所にたどり着くまで結構苦労する、という事態にもなってしまうわけで*2、多少フォントとかレイアウトは凝っていても、記載事項の「配列」に関しては「様式美」をある程度踏襲してくれている会社の添付書類の方が、何となく落ち着くのも確か。

あと、どんなに資料全体のビジュアルに気合が入っていても、肝心の「株主総会参考書類」が資料の末尾の方にならないと出てこないようなものを見てしまうと、「ちょっと目的を勘違いしていないか?」という突っ込みも入れたくなってしまうわけで、「主」と「従」の区別はきっちりつけていただいた方が良いのではないかな、と思うところである。

株主提案は増えた、のか?

このテーマに関しては、前日の日経朝刊に、以下のような記事が載っていた。

「2019年の株主総会で、株主が議案を提出する「株主提案」を受けた企業が54社と過去最多となった。目立つのは投資ファンドなど機関投資家による提案だ。」(日本経済新聞2019年6月8日付朝刊・第2面、強調筆者、以下同じ。)

この数字の母数がいくつなのか、ということは確認できていないのだが、自分の手元に来たものだけで5社あるし、1社はプロキシーファイトの対象にもなっているようだから、確かにまぁ活発、と言えば活発なのだろう。

ただ、長年、銀行とか電力会社の株式を保有している身としては、かつてに比べると「個人株主」による集中砲火的な提案の数はむしろ減っているような気もしていて、「増えた」と言われてもあまり実感は湧かない。

そして「この内容なら受けてもいいんじゃないかな?」という提案に、取締役会から「反対」意見がかぶせられているのを見てしまうと、その会社の会社提案に対しても、どうしても厳しい目を向けざるを得ない、ということは、正直に申し上げておきたいところである。

関西拠点企業の総会担当者の苦悩やいかに・・・。

添付書類の中身以上に、今年の「変化」として目についたのは、関西拠点企業の日程や会場の変更。
最初、何社か見た時は理由がよく分からなかったのだが*3、↓の記事を見て、なるほど、と思った。

www.sankei.com

国際的な大イベントだけに、やむなしと言えばやむなし、なのかもしれないが、株主が多い東京圏の会社の場合、場所を変えずに株主総会の日程(曜日)を一つ動かすだけでも、かなりの大ごとだったりするわけで、東京に比べれば会社数が少ないとはいえ、その分会場に適した〝ハコ”の数も限られている関西圏で、こんな試練に立ち向かわないといけなかった各社の総会担当者がどれだけ苦労したか、察するに余りあるところである。

個人的には、「よりによって何でこんな時期に、大規模な国際会議の日程を都市圏で設定したのか」という突っ込みを入れたいところではあるのだけれど、民間企業の裏方の苦労を、役人や政治家に理解してもらうのは、そうたやすいことではない、というのも分かっているだけに、何とも言えない気分になる。

「監査報告書」への苦言

添付書類の記載に会社ごとの個性が色濃く反映されるようになったり、株主提案が出てきて参考書類の中身もエキサイティングになっていたりする中で、唯一不変の「様式美」を保ち続けているのが「監査報告書」の3連発(独立監査人の連結、単体&監査役会の監査報告書)である。

どこの会社のものを見ても、ほぼ例外なく、ほぼ同一の文言のテンプレ。それが20年近く変わらない。

別に、財務諸表を隅から隅まで叩いても全く埃が出ないような優良企業で、面白い監査報告書を書く必要はないと思うし、かつて某料理レシピサイトの会社であったようなエキサイティングな監査報告書ばかりだと、株主としては頭を抱えてしまうのだが*4、「継続企業の前提に関する重要な不確実性」を「強調事項」として記載しなければいけないような会社に関しては、もうちょっと踏み込んで書いてくれてもいいんじゃないかな、と思うところはあるわけで・・・。

計算書類の「注記」の方でしっかり書いているから、総会招集通知の添付資料として付ける方の記述はシンプルでよいのだ、という考え方はあるのかもしれないが、全ての株主が、わざわざ当該会社の計算書類を見に行くわけでもないのだから、せめてダイジェストでまとめて記載するくらいはしておいてほしいかな、と個人的には思った次第*5

この部分の「様式美」が改められてはじめて企業統治に新時代が訪れる、と思うところはあるだけに、今後の監査報告書の記載の見直しの動きに沿って、今年度の決算以降、徐々に変化の兆しが出てくることに期待したいところである。


以上、本エントリーでは、一介の株主、として、評論家のごとくいろいろと書いてしまったが、各社の当事者(中の人)にとっては、「とにかく無事に、何事もなく終わってくれ」という思いしか出てこないのがこの時期の常だし、総会専従でない担当者(自分も基本的にはこのカテゴリーにいた)が、本来は通常業務に費やすべき貴重な時間を割かれながら、それでも綱渡りで何とか必死に6月を乗り切ることに注力している、ということも身に染みて分かっているので、立場は変われども、温かい心だけは忘れずに見守りたいな、と思っていることは、最後に明確に申し上げておくことにしたい(そして、この時期の、総会の仕事だけには、できることなら二度とかかわりたくない、と思っていることも・・・(苦笑))。

*1:特に、食べ物系の株主優待が付いている銘柄は、自分の愛着以前に、「家族も楽しみにしている手前、売るに売れない」という蟻地獄にはまる・・・。

*2:例えば、自分が毎年楽しみにしている「業務の適正を確保するための体制」の書きぶりや、「社外役員に関する事項」の注記等。

*3:某製薬会社などは、事実上もう関東圏の会社になっているわけで、大阪でやる方が違和感があったし・・・。

*4:当該会社の株式はいまだに売れずに持ち続けている・・・。

*5:一番問題なのは、そんな会社の株式を未だに売り逃げ出来ずに持ち続けていること、だったりもするのだが・・・。