「独禁法」適用領域の拡大はまだまだ止まらないのか?

今年の4月に、「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」の動きと相まって、新聞紙上を賑わせた「独禁法によるプラットフォーマー規制」問題。

「大手プラットフォーマーによる寡占状態に適切な規律を及ぼすのは競争政策の役割だ」という点には、自分も何ら異論のないところだし、下手に他の役所がしゃしゃり出て問題を複雑化させるくらいなら、端的に独禁法の運用で処理する方が良いだろう、と思っているのだが、「公取委が競争法の問題としてどこまで踏み込むべきか?」という点に関しては、↓のエントリー等でも少々疑問を呈していたところだった。

k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

個人的には、さらに1年くらいはじっくり議論して、という話なのかな、と思っていたところだが、本件に限らず、政府の頭の方から落ちてくる施策って、動きだけは矢のように早い(中身の当否はともかくとして)、というのが最近の傾向。

検討会のもわっとした報告が出てから3か月も経たないうちに、日経紙の朝刊の1面に以下のような記事が躍った。

プラットフォーマーと呼ばれるIT(情報技術)大手による個人データの不適切な収集・利用を防ぐため、公正取引委員会が検討している規制の指針案が16日、わかった。サイトでの購買履歴や位置情報を含め、個人データを同意なく利用すると独占禁止法(略)の「優越的地位の乱用」にあたると示す。不適切な場合は改善命令を出し、支配力を高めるIT大手から個人を守る仕組みをめざす。」(日本経済新聞2019年7月17日付朝刊・第1面)

これまでの議論の流れからすれば、この指針案は決して「個人情報の利用」だけを対象としたものではないと思うし、あまりにざっくりと広い網をかけているように読めるのは、リークを受けた記者の読解力の問題で、実際にはもう少し配慮した表現にはなっているだろうと思う。

だが、ここで気になるのは、そういった細かい要件は抜きにして、そもそも「個人」対「事業者」の取引に独禁法の規制をストレートに適用する、ということのインパクトがどこまで考慮されているのか?ということ。

個人情報保護法や、他の消費者保護に係る法律との役割分担の話もさることながら、「寡占プラットフォーマー」と個人ユーザーとの間の取引に「優越的地位の濫用」規制を適用できる、というのであれば、ネットの世界以外のリアルな取引においても、応用できそうな場面は多々出てくるような気がするわけで、影響は「GAFA」の世界だけに留まるものでは到底ない*1

今は「7月21日」を見据えたいやらしい時期だけに、わざわざこのタイミングでこんな「リーク」が出た、ということに対しては、どうしても穿った見方をしてしまうところがあるのだけれど*2、動機はともかく、もう少し冷静に考えた方が良いのではないだろうか、というのが、現時点での自分の素朴な意見である。

■追記

なお、最近、「あっぱれ」というほかないアーカイブをネット上にアップしてくださった企業法務界のスターブロガーさんのエントリーがあるので、自分でも忘れないように、ということで、以下、リンクさせていただくことにしたい。
ronnor.hatenablog.com

末尾の「私はこの分野は全く詳しくないので、ぜひ「不足している情報」を教えて下さい」というコメントがまた心憎いというか何というか。
この謙虚さ(?)が世界を変えるのだろう、きっと。

*1:この点につき、検討会報告の段階では、もう少し謙抑的なスタンスが示されているようにも読めたのだが、はてどうしてここまで・・・?という疑問はどうしてもぬぐえない。

*2:「個人情報保護」というフレーズに敏感なネット民まで味方に付けよう、的な・・・さすがにそれは穿ちすぎだろうか?