どこまでも、完璧過ぎたから・・・。

ディープインパクトが、逝った。

自分は「強すぎる馬」は決して好きではない。
大きいレースになればなるほど、”絶対的本命”視された馬に、何かとケチを付けて買わない口実を探し、結果的には順当に収まっているのに、「今日は運がなかっただけ」と呟くしょうもない人間である。

だから、「無敗の三冠馬」、「4歳で国内GI4連勝」、「引退レースでも完璧なまでの勝利」、「種牡馬としてもGI馬続々輩出」、「7年連続リーディングサイヤーと、まぁ普通に眺めれば非の打ちどころがないこのタイプの馬に熱狂する要素は本来何一つない。

それでも、なぜか現役時代から、この馬だけはあまり嫌いにはなれなかった。いや、むしろ、なぜか大レースの時はこの馬を応援していた*1

当時、先々の見通しがあまり立っておらず、迷走していた自分にとって、「無敗のまま全ての中長距離GⅠレースを制覇してくれるんじゃないか」とか*2「日本馬初の凱旋門賞に手が届くんじゃないか」*3といった、途方もないことを実現する一歩手前まで突き抜けてくれるこの馬の存在は、一種の希望だったのか・・・。

種牡馬になってからは、高額な種付け料や、「親のブランド」に起因する高評価の割に、産駒が大舞台では今一つ力を発揮できていなかったことなどから、ディープインパクトに対してはシニカルな目を向けていたことが多かったし、実際、自分が好きなキングカメハメハハーツクライに比べると種牡馬としての力は一枚落ちるのではないかな、と思いながら見ていたところはある。

だけど、まだ産駒が第一線で活躍しているさなかに訃報に接し、金子真人オーナーから池江泰郎調教師、市川昭彦厩務員に武豊騎手まで、現役時代に関わった方々のコメントを見聞きすると、一気に記憶は遡り「やっぱり偉大な馬だったんだよなぁ」という思いと、「もう少し長生きして「余生」まで楽しんでほしかったな」という思いが、どうしても湧いてきてしまう。

17歳、と聞くと早いようだけど、先日亡くなったウォッカディープインパクトより何年か下の世代だし、種牡馬組では同世代のカネヒキリも既にこの世を去っている。
そもそも、父・サンデーサイレンスも、長く種牡馬として活躍していたような気がしたけど、亡くなったのは16歳の時のこと*4

ゆえに、早逝を惜しむより、「デビューしてから亡くなるまで、最後まで優等生として、衰えた姿を見せることなく生き切った」ことを称えるべきなのかもしれないが、あと数年も経てばデビューする馬の父馬の欄から「ディープインパクト」が消えるかと思うと、やっぱり寂しく感じるところはある。

果たしてこの先、ディープインパクトのサイヤーラインが順当に継承されるのか、それとも「母父」という形でしか生き残ることができないのか、そういったところは運に委ねるほかないのだけれど、最後は、13年前の有馬記念を見て自分が感じたことをありのまま書いた当時のエントリーをアップすることで、最大の哀悼の意を表することとしたい。

k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

*1:さすがに単独で馬券を買ったのは、「三冠」がかかった3歳の菊花賞単勝一度きりで、あとは応援しつつワイドの2‐3着の組み合わせを探すか、3連単、3連複の軸馬として活用する程度だったと思うが、熱狂的に応援していたナリタブライアンが絡む馬券ですら、クラシック三冠の時までは一切買っていなかった人間としては、かなり珍しいケースである。

*2:残念ながら3歳最後の有馬記念で、刺客ハーツクライに足元を掬われてこの夢は途絶えた。皮肉なことに、種牡馬になってからはハーツクライ産駒の方が自分の好みだったりもする。

*3:これも残念ながら・・・というか、かなり悲劇的な結末となってしまった。

*4:ちなみに、サンデーサイレンスがこの世を去った2002年に生まれたのがディープインパクト。こういう歴史は繰り返すものだけに、今年セレクトセールで落札された当歳馬の中にいた2019年生まれのディープインパクト産駒9頭のどれかが「最高傑作」となっても不思議ではないかな、と思っている(最高額は近藤利一氏が4億7000万円で落札したタイタンクイーンの2019だが、一見すると見栄えはよくないビーコンターンの2019あたりで血が爆発すると、日本の競馬も面白くなるんだけどな、と何となく思ったり。

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html