マジョルカの18歳を追いかけて。

今日は少し余裕時間ができた、ということもあり、先週発売のNumber誌に目を通していた。

表紙も特集記事も、今夏レアル・マドリード移籍が決まり、更にリーガ開幕前にマジョルカへの電撃レンタル移籍が決まった久保建英選手一色。

3か月前に同じ雑誌で彼が表紙を飾ったのを見た頃は、彼の名前を「たけふさ」と読めるかどうかも怪しかったし*1、当時絶賛されていた彼のプレーをテレビ越しで眺めることさえできていなかった。

k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

そして、その後の南米選手権での活躍も結局見ることができなかったから*2Jリーグが再開したら、味の素スタジアムにライブで観に行けばいいかな、とのんきに構えていたら、あっという間に移籍決定&お別れセレモニー・・・。

2001年6月生まれ、18歳になりたての新鋭だからこそ進化のスピードは桁違いに早いし、有望な選手の囲い込みには金を惜しまない欧州のクラブチームの動きはそれに輪をかけて早い。

バルセロナに渡った少年が日本に戻ってきた、というニュースを聞いた数年前から、記憶をアップデートする努力もしないまま同じような毎日を繰り返していた自分のような人間はあっという間に置いていかれ、久保選手の(代表戦ではない)普段のプレースタイルを目の前で見るためのハードルも随分と高くなってしまった。


ちなみに今号の特集は、「日本の天才」との比較が取り上げられていた前回の特集からさらにグレードアップしており、ワールドクラスの選手たちの「18歳だった頃。」を、今の久保選手とラップさせる、という構成になっている。

1990年 ジネディーヌ・ジダン
1995年 ラウル・ゴンザレス
2002年 フェルナンド・トーレス
2002年 アンドレス・イニエスタ
2003年 ルカ・モドリッチ
2003年 クリスティアーノ・ロナウド
2004年 セルヒオ・ラモス
2005年 ルイス・スアレス
2005年 リオネル・メッシ
2008年 トニ・クロース
2009年 エデン・アザール
2010年 ネイマール

この中には、18歳の時点で既にスーパースターへの道を驀進していた選手もいれば、ブレイクする前の雌伏の時を過ごしていた選手もいるのだけれど、その後のサッカー人生を通して見れば文句なしの大スターばかり。

そして、まだまだ期待先行とはいえ、こういった名だたる選手たちと並んで特集されるような存在になっている、という時点で、久保選手のスケールの大きさと、それに寄せられる期待の大きさをはっきりと見て取ることができる。

もちろん、日本国内の表舞台から消えていった多くの「天才」たちと同じく、海外でも「10代で大活躍したもののその後苦難の道のりを歩くことになった」選手はより大勢いるし*3、ましてやこのタイミングで初めて欧州の主要リーグに足を踏み入れた、という久保選手が現地の「同世代」の他の選手たちと比べて突出したポジションにいるのか? と言えば、決してそうではない。

マジョルカでのリーグデビュー戦となったバレンシア戦でも、出場時間はわずか16分程度。

現地では「大きな見せ場は作れなかった」という評価も飛び交っているということだから*4、チームに浸透して真価を発揮できるようになるまでにはまだまだ時間がかかる、というのが現時点での正しい見立て、ということになりそうだ。

ただ、日本でのこの数年間、濃密な時間の中で進化を遂げてきた久保選手が、この先も同じようなスピードで進化を遂げる可能性を誰が否定することができるだろうか?

そして、少年時の経験からスペイン語でのコミュニケーションまで不自由なくできる彼が、これまで他の日本選手が苦労してきた様々な「移籍の壁」「海外の壁」の問題を易々と超えていく可能性も決して低くないような気はする。

今回の特集の中にあった「現地レポート」(豊福晋「KUBOを迎えた島の熱狂」(Number985号16頁))等の記事の影響もあって*5、今は自分の中にも、(現地の観光名所をネットで検索しながら)「彼の試合を見るためにマジョルカ島まで行きたいな・・・」という思いが芽生えてきているのだが、うかうかしていると、マジョルカに行っても、もう彼はそこにはいない。」ということになってしまいそうだな、と。

だから、せめて今は、何十年か後に、「レアルのエースになる前の久保ってね・・・」「スペインに戻ってすぐの頃はね・・・」と語れる人間の一人になれるくらいは、つかの間の”マジョルカ時代”の海を渡ってくる映像だけでも、見届けておきたいと思うのである。

*1:最近の日本語入力のタイムリーぶりはすごくて、既に自分のPC上でも一発で変換できるようになっているが・・・。

*2:その代わりにアフリカ選手権を堪能した、というのは以前にも触れた通り(情熱フットボール大陸。 - 企業法務戦士の雑感 ~Season2~)である。

*3:その一端が、吉田治良「僕らが18歳だった頃。」(Number985号60頁)でも取り上げられている。

*4:久保建英の初出場に現地メディア「悲しいデビュー」。力の片鱗見せたと評価も | フットボールチャンネルの記事等も参照のこと。

*5:なお、豊福氏の今号の記事としては、先日のアフリカ選手権と絡めて「エジプトの英雄、モハメド・サラー選手の足跡を追いかける旅」を綴った豊福晋「エジプトの祈りと泣き虫ハメダ」(Number985号62頁)という記事も非常に良かった(自分もその一端に触れた、アフリカの人々の「サッカーと自国出身のスターに寄せる思い」がひしひしと伝わってくる、という点で)。そして、Number誌のサッカー執筆陣、当面はスペイン語圏に強いライター陣(豊福氏もバルセロナ在住)の出番が多くなるのだろうな、ということも漠然と思った次第(この豊福氏の記事も、アギーレ・前エジプト代表監督との会話から始まっている)。

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