嵐の前の東西レコード決着。

先週、悲喜こもごもの「夏競馬」が終わり、今週から中山・阪神の二場開催に。
3つの競馬場のレースを同時進行で追いかける週がしばらく続いていたから、二場になると何となく間が抜けた感じもするのだが、レースの合間に余裕をもって検討するには、これくらいがちょうどいい。

そして本日は、東西で華々しく短距離&マイルの重賞が行われた。

台風15号が接近中ということで、土曜日の時点では前日販売が見合わせになっていたのだが、起きてみたらまだまだ台風は南の海上
真夏を思わせる暑さの中、無事秋の重賞シーズン開幕を迎えられたのは何より。そして、その結果も実に「開幕」にふさわしい衝撃的なものだった。

まず、先に行われた阪神芝1200m、セントウルステークス
春の高松宮記念馬・ミスターメロディに、夏の短距離重賞で結果を残した馬たちが挑む、という構図で、久々とはいえ先行力のあるミスターメロディに一日の長があるかな、と思っていたのだが、蓋を開けてみたら、札幌・キーンランドカップから中1週の強行軍で臨んできた差し馬・タワーオブロンドンが中団から強烈な決め手を発揮して3馬身差優勝。

タイムは1分6秒7

2002年、同じレースでGⅠウィナーになる直前のビリーヴが叩き出して以来、誰も破れていなかったレコードタイム(1分7秒1)を更新し、一気に1分6秒台に突入した。

元々タイムが出やすいのが開幕週の馬場。この日の阪神では、既に第9レース(瀬戸内海特別、芝1400m)でも、まだ2勝しか挙げていなかった4歳牝馬・メモリーコロネットがあのイスラボニータの渾身のレコードタイム*1を塗り替えていたくらいだから(1分19秒3)、さらにレベルの高い重賞で好タイムが出ても不思議ではなかったのだが、17年ぶりの記録更新、というのはやはりインパクトが大きい。

そして、その余韻が冷めやらぬうちに、中山1600m戦、京成杯オータムハンデで飛び出したのが、とてつもない日本レコードだった。

最初の1000mを55秒4の超ハイペースで逃げたトロワゼトワルがセーフティリードを保ったまま最後の直線に突っ込み、文字通り「影をも踏ませない」逃走劇で3.5馬身ちぎって優勝。
鞍上の横山典弘騎手の面目躍如*2というレースだったのだが、そこで記されたタイムは、なんと1分30秒3

こちらも2012年、同じレースでレオアクティブが叩き出した1分30秒7*3、という記録がしばらく破られていなかったし、当時のインパクトが相当強烈だっただけに、テレビの中の着順表示板に映った「レコード」の表示と記録されたタイムを見て、何度か瞬きする羽目に・・・。


日本の競馬場の芝コースが年々高速化を遂げていることに対しては、「故障を招く」とか「海外で通用しなくなる」等、批判の声も大きいのだが、人間の陸上競技を見る時の感覚と同じで、やっぱり目の前で「新記録」が出るとその場にいた人は気持ちいいし、その場にいなくても「見ていた!」というだけでしばらく語れるネタになる。

だから、自分は、あえて「高速化」の潮流を止める必要はないと思っているし、僅か10分程度の間に、東西の重賞で次々とレコードタイムが塗り替えられた、というわくわくするような結果に接することができただけでも、日本の競馬ファンで良かったな、という思いを新たにしている。


ちなみに今週の中山は、あまりの馬場状態のよさゆえに前に行った馬が止まらず、(予想は当てやすかったものの)レース自体は楽しみづらいところはあった。
でも、いずれもう少し時が経てば、コースの内側が踏み荒らされ、雨風にも晒され、その分、「大外一気」の展開が増えることにもなってくる。

そんな季節の変化を楽しみながら、長いけどあっという間の今年の秋競馬を、これからたっぷり堪能することにしたい。

*1:皐月賞優勝後、ダービー2着を皮切りに、GⅠレースで善戦しながらもあと一歩タイトルに届いていなかった彼が、「最後」と決まっていたレースで劇的なハナ差差し切り勝ちを収めた、という記憶に残るレースだったのだが・・・。

*2:御年51歳。さすがに最近は騎乗機会が減ったものの、巧みな手綱さばきは健在で土曜日にも2勝を挙げていた。

*3:日本初の1分30秒台。さらにぶっちぎりの世界レコードということで、7年間維持されていた記録だった。

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