「最後の改造」の凄みとその先にあるもの。

週が変わる頃から様々なアドバルーンが打ち上げられ、昨日、正式に発表となった「第4次安倍改造内閣」発足のニュース。

おそらくこれが現政権下では最後の内閣改造だろう、というタイミングで「初入閣13人」。しかも、その中に、首相との距離が近いと目されていた議員が複数含まれていることから、いろいろと揶揄する声も見かける。

だが、よく見ると、今回の人事は相当したたかに行われている。

政権の要になっている副総理・財務相官房長官は動かさず、常に課題山積みの総務相厚生労働相には実力派経験者の返り咲き。

外相には語学堪能なエース級の人材を充て、文科相農水相にはまさにそこが「畑」の人材を充てる。

そして、他の初入閣組の経産相、法相と合わせ、徹底的に首相・官房長官に近い人材で、新聞では左段に来る「要職」を固める一方で、敵に回したくない議員もちゃんと閣内に取り込み、PRを担えるようなポジションに配置。

”大人の事情”が透けて見えるような「待機組」に軒並み無難なポストを割り当てたことや、五輪相にうってつけのオリンピアン、橋本聖子議員を充てたこと。さらに敵対勢力に一つもポストを与えなかったことまで合わせて考えると、これまでの中でも一番「完璧」と自画自賛されそうな構成になった、というべきではないだろうか。

もちろん、素人目に見ても分かってしまうような露骨さに眉を顰める人は多いだろうし、これが長期政権の弊害だ、という意見も当然出てくるだろうけど・・・


来年にオリンピックという一大イベントを控え、しかも、アンチも多いがそれ以上に岩盤のような支持層を抱える今の首相の下では、政権交代など望むべくもない、というのが現実。

だとすれば、官邸への忠誠心が高い実力派の閣僚たちが内輪もめすることなく、向こう一年淡々と仕事をこなしてくれるのが国民にとっては一番安心、という見方もできるはず。

もしかしたら、この顔ぶれが、一部の人たちが懸念するような「レガシー」づくりに使われてしまう可能性もあるのかもしれないが、仮にそうなったとしても、そのやり方が強引であればあるほど、逆に「ポスト安倍」の時代にいろいろなものがひっくり返る風が吹く可能性も高くなるわけだから*1、「アンチ」派にとってもそれは決して悪い話ではない。

そして、そういう「風」に恐れを抱く冷静さを誰かが持っている限り、「レガシー」づくりもほどほどのところに収まるのではないか、というのが自分の見立てである*2

あと、政権復帰してから約7年、というのは、日本の政治家のトップの地位にいる人としてはかなり長い部類に入るのだけれど、民間の大企業における社長任期+会長に退いてからも影響力を及ぼしうる期間だってそれと同じくらい(あるいはそれ以上)なわけで、かたや、後者がろくろく第三者のチェックを受けることもなく、気儘に差配して優れた「ポスト○○」を永久に追い出してしまうことも稀ではない状況にあることを考えると*3、メディア等の厳しいチェックを受け、干されて政権内に入れなかった人でも(建前上は)「実力派議員」として活動することができる前者における「弊害」など、相対的にはまだまだ全然マシといえるだろう*4

だから、決して好む顔ぶれ、配役ではないけれど、次に訪れるドラマへの布石だと思えば気分も楽になる、ということで、「あと一年」は辛抱かな、というのが、今の偽らざる心境である。

*1:それが小選挙区制のいいところでもあり、悪いところでもある。個人的には、今の首相が退任した後に誰をトップの座に付ければ自民党政権が続くことになるのか、全くイメージできずにいる。

*2:現政権は最後まで「改憲」の旗を降ろすことはないだろうが、国を二分しかねないような内容の発議を強行するところまで持っていく気があるかどうかは、かなり疑わしい。

*3:最近は経営トップの選任を法定又は任意に設置した指名委員会に委ねるケースも多いのだが、会社のガバナンスを利かせるために本当に大事なのは、「トップになる前の段階」での副社長、上位取締役クラスの選別や、さらにその下のレベルの役員の選別だったりするわけで(そこで変なフィルターがかかってしまうと、誰もトップを止められなくなるし、後継者も「前任者の息がかかった人」の中から選ぶしかなくなってしまう)、どうせ第三者の目を入れるのであれば、そこまで含めてしっかりチェックを入れる体制にする必要があるのではないかと思う。

*4:卑しくも国家の最高権力者が行う人事と、民間企業の人事の話を一緒にするな、というお叱りを受けてしまうかもしれないが、教科書的な理屈を抜きにすれば、様々なステークホルダーの利害により密接な影響を与えるのは後者の話の方なわけで、せめて「株主の信託を受けてあるべき人事体制をチェックする」ような監督機関を設けることは、本気で考えて良いのではないかな、と思う次第である。

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