恩讐を越えて

昔はそんなに好きではなかった、というか、むしろ嫌いだったのに、同じ時間の流れの中で同じように歳をとり、いつのまにか「まだ頑張ってるんだ~」みたいな感覚で、好感を持つようになることが時々ある。

サッカーで言えばカズは別格として、小野伸二選手とか稲本潤一選手あたり。

音楽で言えばELTが典型で、20世紀の終わりにバカ売れしていた時は、小生意気な女性ボーカルともども大嫌いなアーティストだったのだが、最近は時々メディアに出ているのを見かけても、有線で昔の曲がかかっているのを耳にしても、何となくいいなぁ・・・と思ってしまうのが不思議この上ない。

で、そのつながりで、思わず反応してしまったのがこのニュース。

プロ野球巨人の阿部慎之助捕手(40)が今季限りで引退することが24日、分かった。球団関係者が明らかにした。現役19年で通算2000安打、400本塁打を達成し、強打の捕手として活躍した。5年ぶりのセ・リーグ優勝を花道にする。」(日本経済新聞2019年9月24日付夕刊・第9面、強調筆者)

まだ贔屓チームの日々の勝ち負けに一喜一憂していた今世紀初頭。
敵方でマスクをかぶって、ラインナップの下の方に名を連ねながら、嫌なところで嫌な長打を放つこの選手が自分は大嫌いだった。

そもそも、彼のポジションは「キャッチャー」である。

キャッチャーといえば、嫌み混じりのクレバーさを備えた選手(当時縦縞のユニフォームを着ていた野村克也監督から、当時球界ナンバー1だった古田敦也選手につながる系譜・・・)か、地味に耐え忍ぶか(星野監督に捨てられて花開いた矢野輝弘現監督などはその典型・・・)、という時代に、あっけらかんとした雰囲気でホームランを打ちまくる。

地肩は強いが、リード面では酷評されることが度々。
それでも、当時のジャイアンツで数少ない「嫌いではなかった選手」の一人、村田真一捕手を完全に追いやって看板選手に。

いわば「ID」より才能とスター性が最優先される当時のかの球団の象徴のようなところもあって、どうにもこうにも好きにはなれなかった選手だった。

だが、そこから18年。

プロ野球を取り巻く環境が大きく変わる中で、主将になり、4番になり、故障だらけの体になっても巨人一筋でポジションを守り抜き・・・

今はネットメディアで結果を見て、時々気になるシーンがあれば動画で見て、というくらいのかかわりしかないプロ野球の世界だけど、今シーズン、代打でも活躍している姿を見ると、何となく頑張れ~と思ってしまっていた自分がいた。

自分の記憶が正しければ、一昨年、2000本安打を打った時には既に事実上捕手からは「引退」していて、”選手生活晩年”の雰囲気を醸し出していたはず。
だけど、それでもそこから100本以上のヒットを積み重ね、通算本塁打も400本の大台を超えた。

「捕手」という過酷なポジションを背負っていた選手としては、実に異色の、歴史に残る存在で、彼を超えるだけの実績を残せる選手がこの先出てくるのかどうかも分からない。

そういう背景ゆえに、一時代を築いた選手たちの引退の報が相次ぐこの時期のニュースの中でも、ひときわ印象に残ったのだろうな、と。

そして、報道が流れたその日に、甲子園で同世代の藤川球児投手とのガチンコストレート対決を演じる、というのも、また見事なシーンだった*1

まぁ、実のところ、今シーズンはもう一人の大物、阿部選手より2学年下のはずの縦縞の遊撃手の去就問題というのもあり、同じ年に「2000本安打達成」のニュースに接したときに、以下のようにコメントした者としては、「未だに阿部選手に50本近く安打数で差を付けられたまま追い抜けていない」という現実がなんとも寂しかったりもするのであるが・・・。

k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

千両役者の阿部選手がCS、日本シリーズで「ザ・ラストシーズン」というが如くの活躍を見せている影で、まだまだやれる(はずの)鳥谷敬選手が、次の行き先を見つけてくれていることを、今はただ願うのみである。

*1:「代打・阿部」を三振に切って取った余勢をかってそのまま1イニング3K で締められる藤川選手あっての名勝負だったというのは言うまでもないことだが・・・。

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