「日本馬の日本馬による日本馬のためのジャパンカップ」が華々しく開催された今日の中央競馬。
外国招待馬の不在を嘆く声は依然として多いのだが*1、当事者であるJRAのリソースが、「あのコウペンちゃんと馬を組み合わせる」という荒々しい”反則技”を使ってまで「国内の」の女性ファンを開拓する方向に向けられている以上、もはや外野からあれこれ言っても仕方ない。
それに、出走する馬は日本調教馬だけだが、それにまたがる騎手の顔ぶれの中には、デットーリ騎手を筆頭に、ムーア騎手、スミヨン騎手、ビュイック騎手、マーフィー騎手+国内拠点の2人と、実に国際色豊かなメンバーが揃っているわけで、どうせ来ても勝てない”かませ”の欧州馬、豪州馬に外国人騎手を乗せるくらいなら、日本の有力馬に乗せて、それぞれの馬たちの新たな境地を開拓してもらった方が、日本競馬にとってもプラスになるような気がするわけで・・・。
その意味で、今年に入ってからしばらく消化不良なレースが続いていたスワーヴリチャードにマーフィー騎手が騎乗し、重馬場の中、実に見事な末脚を引き出して栄冠に導いた、という決着は、今年のジャパンカップにふさわしい結末だったように思う*2。
そして、日本人騎手の最上位が、先手を取って前に行き、見事に粘り切った3歳牝馬・カレンブーケドールの津村騎手で、その後に川田、武豊、岩田康誠という名騎手たちが続く、という結果や、2頭のダービー馬を含む5頭出し、という空前絶後の挑戦をやってのけた友道康夫厩舎が3~5着独占*3、しかも、去年のダービー馬・ワグネリアンを最上位(3着)に持ってきただけでなく、3年前の悩めるダービー馬・マカヒキを武豊騎手に委ねて4着に持ってこさせた、という結果もなかなかのインパクトだった。
昨年、アーモンドアイによって2分20秒台にまで縮められたタイムが、今年は久しぶりにキタサンブラックの時と同レベルの2分25秒台にまで下がったことで、再び外国の競馬関係者に来年の「第40回」を目指す機運が出てくるのであればそれでよしだし、馬は来なくても、若干24歳のマーフィー騎手の活躍に刺激されて*4、海外の有望若手騎手たちが次々と日本を訪れてくれるようになれば、それもまたよし。
出走馬の「国籍」にかかわらず、レベルの高いレースが行われている限り、ジャパンカップの価値が失われることは決してない、と思っている。
・・・で、そこまでは良い週末だったのだが、日曜日の最後の最後になって、残念なニュースが飛び込んできた。
京都12レース、GⅢ・京阪杯で、まだ3歳のファンタジストがレース中に心不全を発症して死亡、さらに騎乗していた浜中俊騎手が前のめりに落馬して重傷を負う、という事故の発生である。
ファンタジストといえば2歳時に重賞2勝。対抗視された朝日杯FSでは4着に敗れたものの、スプリングSで2着に入った頃まではクラシック候補の一角、というポジションを保っていた(皐月賞も5番人気に支持されている)馬であり、加えてデビューしてからこれまでの間、1戦*5を除いてずっと武豊騎手が騎乗していた馬でもある。
そんな牡3歳馬が、ジャパンカップの「裏」開催の京都の重賞に出たことで、そして、本来ならジャパンカップに出ていても不思議ではなかった今年のダービー馬(ロジャーバローズ)が引退を余儀なくされたことで、ファンタジスト×浜中俊騎手、というコラボレーションが初めて実現したのだが、その挑戦がたったの一度で終わった、という運命の悪戯やいかに・・・。
浜中騎手にとっては、ダービーを制覇した年にまさかの展開になってしまったが、今は少しでも早く、ターフに戻ってきてくれることを願うばかりである。
*1:この点に関する筆者自身の意見を含め、日本の競馬が目指すべき道。 - 企業法務戦士の雑感 ~Season2~参照。
*2:元々はミルコ・デムーロ騎手のお手馬だし、さらに遡るとダービーまでは四位騎手が主戦騎手だった、ということを考えると、一つの馬の中にこの10年来の日本競馬の歴史が凝縮されているような気がして、少々複雑な気分にはなるのだが・・・。
*3:残念な結果に見えるが、3~5着の本賞金を合計すると2着馬の賞金よりも高くなる(1億5000万円)ので、厩舎としては決して悪い結果ではないはず。
*4:この騎手、冷静に考えたら、昨年末に初めて日本で騎乗始めたばかりのジョッキーだった・・・。
*5:和田騎手に手綱を譲ったセントウルS。このレースで和田騎手が会心の好騎乗を見せ、久々の2着という好成績を残したにもかかわらず、次のスプリンターズSから再び手綱を手にするなど、武豊騎手との絆は実に強い馬だった。