見え始めた世代交代の息吹。

今年も遂にやってきた年末の風物詩、日経新聞法務面の「企業法務・弁護士調査」。

これで「15回目」ということだから、始まったのは2005年ということになるが、なんとも恐ろしいことに、このブログでは第1回*1から、多分一度も欠かさず、この年に一度の特集記事を取り上げている。

長年の読者であれば、自分が「調査」に対して毎年ぶつくさ言っているのは重々ご承知だと思うし、特に本来なら「コア」となるはずの本題に関しては、今年も評価できるのは2年も引っ張った「社内弁護士」ネタをやめたことくらいで、中身にコメントする気分には到底なれないのだが*2、毎年のお約束として取り上げている「企業が選ぶ弁護士ランキング(2019)」だけは、今年もやはり取り上げないわけにはいかない。

<企業法務分野>
1.中村直人(中村・角田・松本)16票
2.太田洋(西村あさひ)13票
3.野村晋右(野村綜合)11票
4.沢口実(森・浜田松本)10票
5.柳田一宏(柳田国際)9票

そう、今年も中村直人弁護士がトップの得票数で、堂々の8年連続1位を達成。

中村弁護士がこの企画で首位を奪回されたのは、それまで評判が悪かった「企業票+弁護士票」ではなく、「企業からの得票数」だけの順位を発表するようになった2012年のことだったのだが、それ以降、一度も首位を譲っていないのだから、これはもう素晴らしいというほかない*3

そして、もっと驚くべきは、今回2位に入っている太田洋弁護士も、中村弁護士が制したこの8年の間、7度の2位*4、という地位を保ち続けておられることだろう。

あたかも、V9時代の巨人と阪神の関係を彷彿させるような伝統の対決。

今思えば、過去には、中村弁護士と太田弁護士がわずか「1票」差だった*5という歴史もあるわけで、今年も前年よりは差を詰めて僅か3票差。

それでもあとちょっとのところで手が届かない、というもどかしさは、江夏豊田淵幸一の時代のタイガースファンの心情とも重なるところがあるのだが、これもまた運命、ということなのかもしれない。

・・・で。

もう何年も、このブログがこのランキングを取り上げつつ、「マンネリだなぁ」と悪態をついていたのは、皆さまご承知のとおり*6

今年も上に出てくる顔ぶれだけ見れば、同じセリフになるのかもしれない。

だが、電子版で「6位以下」の顔ぶれを見ていくと、今年事務所を旗揚げされたばかりの三浦亮太弁護士が8票獲得で6位。

さらに、ここ数年、健闘されている塚本英巨弁護士(アンダーソン毛利)、倉橋雄作弁護士(中村・角田・松本)といった30代の弁護士がランクインされたことで、これまでと比べると「可能性」を感じる結果となっているし、他の部門に目を移すと、「データ関連」で、影島広泰弁護士に続いて堂々のの2位に食い込んだ石川智也弁護士(西村あさひ)もこれまた30代。

もちろん、この世界、「経験」が醸し出す安心感、というのが、クライアントにとって非常に大きいのも確かだから、”若返り”が進めば進むほど良い、というわけでは全くないのだが、10年前、20年前に「新進気鋭の若手・中堅」だった先生方がそのまま持ち上がって、紅白歌合戦の最後の1時間の枠を独占し続けているような状態は、もうちょっと何とか・・・と思うところもあるわけで、ちょっとずつ見え始めた変化が来年以降どういううねりになっていくか、これからじっくりと見定めていければ、と思っている。

*1:当時はまだ「企業法務・弁護士アンケート」という企画だった。日本経済新聞社「企業法務・弁護士アンケート」 - 企業法務戦士の雑感 ~Season2~ 元々、「日経ビジネス」誌ではこの手の弁護士ランキングの企画が時々行われていて、久保利英明弁護士の独壇場、と言わんばかりの世界になっていたのだが(ご本人の著書の中にもその辺の歴史は出てくる)、ちょうど”世代交代”的な雰囲気になっていたところで新聞紙上での企画が始まり、その流れで「四大」のスター弁護士たちの名前が次々と紙面を飾るようになった、ということで、今思えば、この企画の始まりが一つの時代を作った、と言えるのかもしれない。

*2:だって、メインテーマが「米中貿易摩擦」だから・・・。アンケート回答企業に大手製造業が多く、調査対象の弁護士にも渉外系の事務所に所属する弁護士が多いため、だとは思うが、法務業界全体の関心事からは、やはりちょっとズレているような気がする。

*3:しかも、電子版に掲載された「総合」ランキング(弁護士票を合算したランキング)でも、中村直人弁護士は堂々の首位である。www.nikkei.com

*4:唯一の例外が2016年で、この年2位に食い込んだのは野村晋右弁護士だった。そして、今年も波乱なき年の瀬。 - 企業法務戦士の雑感 ~Season2~

*5:2014年のランキング、年の瀬にようやく出た弁護士ランキング。 - 企業法務戦士の雑感 ~Season2~

*6:特に悲嘆に暮れていたのは、2年前のことだっただろうか。「クボリ伝」を読んだ直後だった、ということの影響もたぶんにあったのだが・・・。マンネリ化した余興とそれに踊らされる人たち? - 企業法務戦士の雑感 ~Season2~

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