競馬の世界では、ここ数年、「年末の変則開催」が定番になっている。
ずっと長い間「一年の締め」のレースとなっていた有馬記念の後に、2歳GⅠ(芝2000)のホープフルステークスをもう一日入れる、というパターンで、このパターンになった最初の年の違和感は当時のエントリーにも書き残したとおりだが*1、3回目になっても慣れない*2。
そして、今年は暦の都合もあって、「土曜日」という通常の競馬開催日にこのGⅠレースが設定されてしまったことで、違和感はさらに増幅・・・*3。
まぁ、ここは自分に暗示をかけて、「2019年の競馬は有馬記念で終わり。このレースは2020年のスタート。」とでも割り切ることができればよいのだが、朝からラジオを聞いていれば、当然ながら「今年何勝目」という話とか、一年の振り返りだとか、という話も出てくるわけで、どうしてもモヤモヤしてくる。
幸いにも、レースの方は、福永騎手騎乗(そして先週に引き続き矢作芳人調教師管理の)コントレイルが来年に楽しみをつなぐ快勝劇を飾り、2着・ヴェルトライゼンデ、3着・ワーケアと、これまで無敗だった馬たちも波乱なく上位を占める、という実に美しい決着となったのだが、やはり来年以降は、レースの日程だけは何とかしてくれい、というのが率直な願いである*4。
で、「土曜日に中央GⅠ」という変則日程に合わせて、懐かしのPUFFYとともに「プレミアムウィーク」と銘打ったキャンペーンを仕掛けてきたのが地方競馬界。
確かに、彼らの世界では、平日だろうが休日だろうが、どこかで馬が走っている、というのが当たり前なのだが、そんな中、金曜日にヤングジョッキーズシリーズの第1戦を行い、土曜日を挟んで日曜日に東京大賞典、という年末のビッグイベントを持ってくる、という戦略は実に見事だった。
土曜日に入金し、そのお金がIPATの口座に残ったまま、「わずか12×2=24レースでは物足りない」とお腹をすかせていたファンたちが、同じシステム上で購入できる大井競馬の馬券を買いまくったものだから、売り上げは前年比116.5%で地方競馬の売り上げレコードを更新、実にあっぱれな結果となったのである*5。
そして肝心のレースの方も、今年、あちこちで「不振」と叩かれ、バッシングに近い扱いを受け続けていたミルコ・デムーロ騎手が大井巧者のオメガパフュームを操り、ハイペースに沈んだルメール騎手騎乗のゴールドドリームらを蹴散らして堂々の優勝。
「不振」といっても中央で91勝(ランキング8位)、G1も2勝しているのだから、並のジョッキーに比べれば一枚も二枚も役者が上なのだが、それなりに年齢も重ねたことで、若手騎手や次々と来日してくる海外の新進気鋭の騎手たちに活躍の場を奪われつつあったことも事実。このオメガパフュームに関しても、昨年の東京大賞典以来、デムーロ騎手の手綱による優勝はなく、唯一この馬が勝った今夏の帝王賞で騎乗していたのはレーン騎手、と、今年のデムーロ騎手を象徴するような戦績になっていただけに、ここでようやくGⅠ勝利を飾れたというのは実に大きな話だったのではなかろうか。
腕一本、残した結果だけが全ての世界。
年が変われば、今年の成績もすべてリセットされ、全ての騎手が横一線(もちろん、いい馬に乗れるかどうか、というところで多少の差はあるのだが、それも未来永劫固定化されているわけではない)でスタートすることになる厳しい世界だけに、来年のデムーロ騎手がどうなるかなんて、誰にも保証はできないのだけれど、早いペースの中、後方でしっかり折り合って、最後きっちり脚を伸ばしてきたこの日の騎乗は「まだまだ巧いな」と思わせるに十分なものだっただけに、来週からの新たなスタートで彼が一転してダッシュを決めてくれることを自分は期待してやまないのである。
*1:Stay hungry... - 企業法務戦士の雑感 ~Season2~参照。このレースがGⅠに昇格して初めての年であった。
*2:JRAは1年目に続き、今年もCMのネタにしてきたが、それだけまだ違和感を抱く人が多い、ということの現れではないかと自分は勝手に思っている。そして、この3年の長きにわたって続いた決して好きではない今のCMシリーズが来年も続く、ということに自分は心底がっかりしている。民の声は【悲報】JRAのCM、2020年も「HOT HOLIDAYS!」 | 競馬まとめざんまい参照。
*3:過去2年は、平日(いわゆる仕事納めの日)の開催だったから、金杯と同様に、イレギュラーでも何となく(出勤途上にWINSに寄る等の非日常を味わえる等)得した気分になったものだが、今年はそんな得した感もなく、違和感だけが残った。
*4:別にそんな思いが通じたというわけではないのだろうが、2020年は最終週の土曜日にホープフルS、日曜日に有馬記念という極めて順当な日程になりそうである。