馬は再びニッポンを救えるか?

一連の「コロナ対応」の流れを受けて、競馬の世界も、中央・地方ともに新たなフェーズに突入した。

ズバリ、「無観客競馬」である。

中央競馬に関していえば、20世紀初頭から脈々と続く歴史の中で、実に76年ぶりの話になるとのことで、「1944年以来」*1と聞くと、今がそれだけの一大危機なのだ、ということを改めて思い知らされるのだが、自分の場合、ここ数年は競馬場へもWINSへもは滅多なことでは足を運ばず、もっぱらAlexaから流れてくる短波放送(もとい、今はラジオNIKKEIである)の音声に耳をそばだてながら、JRA-VANのメモ欄に打ち込んだ情報と直感を元にWeb経由で投資する、というのがならわしになっていたから、変わったところは何一つない。

強いて残念だな、と思ったことがあるとすれば、この週末が、「卒業」と「デビュー」を兼ねた週だったこと。

特に、通算1,586勝で調教師に転身する四位騎手が土曜日に見せた最後の勝利*2&引退式や、日曜日の山内、作田両調教師の最終出走レースでの勝利を目撃できた観衆がいなかったというのは、彼らのこれまでの功績を考えると申し訳ないような気分にもなったりもした。

ただ、同じスポーツでも、Jリーグのように試合自体が中止になってしまったり、プロ野球のオープン戦のように、見たくても球場に行かないと観られる機会がほとんどなかったり、というイベントに比べれば、”異常時”を感じさせないオペレーションがされていることのありがたさは何物にも代えようがないわけで、グリーンチャンネルが無料開放されて午前中からテレビ映像も観ようと思えばみられることと合わせ、さすがは日本中央競馬会、と頭を下げざるを得なかった*3

中身に関しては、「3連覇」で歴史に名を刻んでほしかったウインブライトが、ダノンキングリーに完璧な敗戦を喫してむしろ時代の終わりを感じさせるような結果になってしまったり、阪急杯に必勝を期して臨んだはずのダイアトニックがまさかの降着で賞金加算できなかったり、と、いろいろ当てが外れたところも多かったのだが、「走っているだけでありがたい」という状況はしばらく続くのだろうな、と思っている。

そして、こんな状況でもしっかりと5勝を上乗せしてリーディングトップを快走する川田騎手と、小倉で土日7勝、とさらにそれを上回った岩田(望)騎手(ジュニア)にも脱帽するほかなかった。


ところで、今週末のもう一つ大きなニュースとして、日曜日の未明にサウジアラビアで行われた国際競走で、武豊騎手騎乗のフルフラット(牡3)が、サンバサウジダービーで優勝し、サウジでの日本馬初勝利を飾った、というのもあった。

思えば、9年前、日本が苦境に立たされた時に、ささくれた日本人の心に希望を与えてくれたものの一つが、ドバイワールドカップデーでの日本馬勝利、というニュースだったりもしたわけで*4、偶然のめぐり合わせとはいえ、サウジ遠征後そのままUAEに向かう馬も多い今年、1か月後に再びの奇跡を期待するのは欲張り過ぎだろうか。

※当時のエントリー
k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

これ以上状況が悪化すると、これまで当たり前のようにできていた「有力馬・騎手・厩舎スタッフの海外遠征」も、検疫の壁に阻まれて叶わなくなる可能性もあるし*5、だからこそせめて馬とそれに関わるスタッフだけでも早めに現地に入っていてほしい、と思ったりもするのだが、無事出走できた時は、再び明るいメッセージを誰かが届けてくれるように、と願うのみなのである。

*1:おそらく第二次大戦中に競走馬の”能力検定”という名目で細々と実施されていた時以来、ということなのではないかと思われる。

*2:午前中の3歳未勝利戦とはいえ、最終週を勝利で飾れる騎手というのは、やはり一流だな、と思う。しかもその次のレースで斜行して騎乗停止処分を受けた、というのも、最後まで勝ちに行く姿勢を見せていたからこそ、というところはあったように思う(四位騎手自身はフェアプレーで鳴らした騎手なので、らしからぬ結果ではあるのだが)。

*3:この例に限らず「その場にいない」人まで取り込める前提で様々な仕組みが作られているかどうか、ということが、これからの2週間で試され、ギャップが浮き彫りになってくるのではないかと思う。

*4:そしてあの時の美しいコメントがあるから、今どんなに成績が振るわず、心ないバッシングを受けていても、自分はM・デムーロという騎手を嫌いになることはできない。

*5:今回のサウジのレースも、日本から騎手たちが現地に飛ぶタイミングはギリギリのところだったようである。

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