今日のCOVID-19あれこれ~2020年3月3日版

”非日常”な態勢に突入して2日目。

今日も「コロナ」をめぐる様々なニュースが飛び交ったが、とうとう世界的に恐れていた方向に行ってしまったなぁ、と思えるニュースもチラホラで、特に、

「インド保健・家族福祉省は3日、日本、韓国、イラン、イタリアの4カ国を対象に現地大使館などが発給済みの通常ビザを保有していても、未入国の場合は渡航を一時停止すると発表した。入国時に空港で発給する「到着ビザ」などは2月末から制限していたが、対象を広げる。2月1日以降に4カ国を訪れた外国人の入国も制限する。」
日本経済新聞Web 2020年3月3日 20:11、強調筆者、以下同じ)

というニュースは衝撃的ですらあった。

一部の過激な人たちが、中国人の入国を制限しろとか、韓国人の入国を制限しろと息巻くことができたのも、もう今や昔の話。

”発生源”という不名誉な役回りを担うことになってしまったものの、徹底した封鎖策、隔離策で全土への波及を防いだ中国と、未だに全国各地で散発的に感染者報告が出続けている日本とでは、少なくとも海外での評価は完全に逆転しつつある

いかに「国内感染者数は韓国と比べて桁一つ少ないじゃないか!」と憤ったところで、検査実施対象の母集団が少なく、しかもその中から1割以上の発症報告が出ている状況では、いくら「安全だ」と胸を張ったところで信用を勝ち取ることは難しい*1

その結果が、外務省のWebサイトで、日を追うごとに増えていく「入国制限国」の数にもつながってくるわけで、それまで何年もかけて準備してきたプロジェクトに関わってきた人々ですら、(何の発症の兆候を有していなくても)一律に入国を拒まれる、というのは何とも切ない。

こういった現実が、やみくもに「鎖国」を唱えていた人たちに効く薬になればよいのだが、大体そういう人々は日本の外にかかわりを持たない(持てない)人々で、世界を知り、不合理な理由で入国・移動の自由を止められることの怖さを知る人々のほうがこういう時に割を食ってしまう、というのは極めて残念なことではあるのだが、感染の拡大防止と平行して、今の日本が”疫病”を把握し、コントロールできている、ということを、一刻も早く海外に発信できる日が来ることを願ってやまない。

カーブスの悲劇

さて、企業活動に目を移すと、今日一番ショッキングだったのは、やはり鳴り物入りでスピンオフ上場したばかりだったカーブルHDを襲った悲劇、だろう。

親会社と資本関係を無くして独立する「スピンオフ」制度が2017年に整って以降、国内適用第1号となったカーブスホールディングスが2日、東京証券取引所の第1部に上場した。初値は670円と公開価格を80円(11%)下回った。新規公開株の初値割れは12銘柄ぶり。海外で一般的なスピンオフが日本で根付くか、カーブスHDの今後の市場の評価が一つの試金石になりそうだ。」(日本経済新聞2020年3月3日付朝刊・第17面)

記事にもある通り、昨日は軟調な展開。そして、厚労省会見で槍玉に挙げられたフィットネスクラブの業態の会社である以上、一連の動きの中で不利益を被ることは十分想定されたのであるが、やはり本日の昼に開示された国内全店舗一斉休業(8日~15日)というのは、かなりのインパクトだったのは間違いない。
https://pdf.irpocket.com/C7085/vTQq/q03S/mqwc.pdf

この”素直さ”が幸いしたのか、今日は一気に値を取り戻し、100円高の780円で公開価格を上回る展開になったが、前記措置が業績にどの程度影響を与えるのか、まだ見えないタイミングだけに投資先を選別する側としてはどうしても慎重になってしまうし、上場した翌日にこういうニュースを出さないといけない”持ってなさ”は、やはりちょっと気になるところである。

2月の月次状況

で、その流れで、というべきか、月初めということで、今日あたりはBtoCビジネスを手掛ける会社を中心に月次速報の開示もかなり多くなっていたのだが、「コロナ」の影響が出始めた月にしては結構健闘している会社が多いのかな、というのが個人的な印象である。

昨日対前年比132.9%と相変わらずの絶好調ぶりを発揮したワークマンは別格としても、ユナイテッドアローズジーンズメイトといった衣類系から、王将フードサービス、アークランド(かつや)といった飲食、さらにキュービーネット(QBハウス)や洗車のkeeper技研に至るまで、ポジティブな数字を出している会社もそれなりにあった。

もちろん、今年の2月は29日間、と一日多く、しかも祝日も一日増えているから売上高の数字だけ見れば普通なら増えるのが順当なはず。

それにもかかわらず、衣類でも飲食でも「え?」と思うような低調な数字を出しているケースも結構ある。

低調な会社の中には、この一件がなくても今年度業績が悪くて苦しんでいたところも多いし、それでも「理由」に「コロナ」を挙げているのを見ると、これらの会社に限らず、この先、下方修正その他景気の悪い話を開示するたびに、決まり文句のように「コロナ」が使われるのだろうな、というのも想像がつくところ。

ただ、これまでの”谷”と比較すると、今回は、一撃でのダメージが大きかったゆえに”復興”需要も見込めた過去の大震災や、失った分をある程度取り返すことができた原発営業被害・風評被害とは異なり、今回は、いつ敵を御し、本格的に再起動できるかの見通しが全く立たない状況だけに*2、いつまでもそれを逃げ口上で使う会社と、苦境の中でも足元の仕組みを固めて反撃に転じることができる会社とで、大きな差が付くことは間違いない。

そして、安易な弁解に頼って、打つべき手を打たずに漫然と今を過ごしてしまうと、次の月次発表を迎えるくらいのタイミングで、早くも窮する会社が出てきても不思議ではないな、と思っている。


朝、昼はともかく、夕方を過ぎるとめっきり人波が減るようになってしまった今の東京。

それでもまだどこか、”こんなの他人事”というような雰囲気を醸し出している「賑わいクラスター」にはしばしば遭遇する。

これをポジティブに捉えるか、それともネガティブに捉えるかは、人それぞれの価値観によるだろうから、あえて議論を提起することはしない。

ただ、首都圏での「推定拡大期」である2月中旬~下旬の頃合いからそろそろ2週間くらい経つ時期に差し掛かり、思わぬ身近なところから、異変を訴える声が聞こえてきたときに、消えてしまう賑わいがちょっとでも少なければよいな、というのが、今の自分の偽らざる思いである。

*1:そもそも感染報告者数の数字も、厚生労働省の発表分と、NHK等のメディアの報道分、そして有志が立ち上げた集計サイトで全て数字が異なっているのが現状で、検査を受けて判明した人の数に限っても、一体どれを信じたらよいのか分からない、という状況にある。

*2:様々な変調が重なってダメージが長期化した、という点では「リーマン・ショック」に近いものもあるのだが、人工的に作られたシステムの破綻は、(多少の血を流せば)人工的に再構築することは可能だし、実際そうなった。だが、今回はそういう類のものでもないだけに、輪をかけて厄介なことになりそうな気はしている。

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