今日のCOVID-19あれこれ~2020年3月5日版

というわけで、すっかり定番になったこの連載(?)企画。

「危機」ムードが最初に出てきた頃(2月の終わりに差し掛かる頃)は、「そうは言ったって、周りには誰も罹患しているヤツなんていないじゃないか!」と、”世界の中心にいる自分”的な憤り方をしている人も多かったのだが、ここに来ていろんな人と話をする中で、「実は隣の隣の部署の方の御主人(奥様)がここ数日熱出してるみたいで・・・」みたいな話を、まぁまぁあちこちで耳にするようになった。

実際のところはただの季節性の風邪かもしれないし、ただのインフルエンザ*1なのかもしれない。

ただ、日本政府のどこから湧いてくるのかよく分からない見せかけの「自信」とは裏腹に*2コロナウイルスという厄介な代物が、それだけ普通の人々の日常生活にも身近な存在になっているのは確かなわけで、いつ、なんどき自分が発症しても良いように、仕事は極力納期より前倒しで、しかもあまりダラダラと引っ張らずにシンプルに結論を出す、というやり方で、万が一の場合でも被害を最小限に収めようと心に決めている*3

そんな中、今日のトピックは、まず朝刊で見かけたこのニュースから。

「日本高野連は4日、大阪市内で第92回選抜高校野球大会の運営委員会と臨時理事会を開き、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、19日に甲子園球場で開幕予定の同大会は無観客を前提とした上で開催可否の決定は11日の臨時運営委員会に持ち越すことを決めた。」(日本経済新聞2020年3月5日付朝刊・第33面、強調筆者、以下同じ。)

かつては「米騒動」で中止になった歴史もあるし、第二次世界大戦中はしばらく開催できない状況が続いていたとはいえ、阪神、東日本の二度の大震災の直後ですら開催したこの大会が「中止」に追い込まれるとすれば、実に74年ぶりの悪夢、ということになる。

世の中では、演劇とかライブとかの大きなイベントが軒並み中止に追い込まれている中で、なんで高校野球だけ別格なんだ!みたいな声も上がっているようだが、自分の意見は、「人に見せる」ことを目的としたイベントと、(一義的には)「『見せる』以前に競う」ことを目的としたイベントとでは、自ずから扱いは異にすべきというものだし、その意味で、特にマチュアスポーツの大会が「無観客」で実施される限りにおいては、中止にする理由は何一つないと思っている*4

なので、野球に限らず、こういう競技会、特に「出られる時」が限られている学生スポーツの大会は極力実施してほしいし、関係者には変な雑音に惑わされることなく、きちんと筋を通して進めてほしいな、と思わずにはいられない。

たとえ「無観客」でも今年夏季五輪をやるべきではない、と思う理由。

で、スポーツイベントの話となってくると、ここ数日より盛り上がっているのは、間違いなく以下の話題だろう。

国際オリンピック委員会IOC)のバッハ会長は4日の記者会見で、2020年東京五輪について「大会の成功に全力を尽くす」と述べ、予定通り実施する考えを改めて強調した。感染拡大が続く新型コロナウイルスへの懸念が強まっているが、世界保健機関(WHO)や専門家と連携して、7月の開幕に向け準備を進めるとした。」(日本経済新聞2020年3月5日付夕刊・第10面)

日本国内でも、まだどちらかと言えば「やるべき」という意見の方が数は多いはずだから、「これだけは・・・」のはずが揺らぎ始めてきていた時期にこの会長コメントに接し、ホッと息をついた人も多かったはずだ。

今行われている他の大きなスポーツイベントと同様、「無観客」でもいいからやってくれ、という人々は多いはずだ。

だが、自分は、今年予定されていた夏季五輪については、早めに潔く「延期」して、来年夏に備えるのがベストだと思っている。

理由としては、今、全世界的に”コロナショック”が広がり、一部の競技では各大陸予選の日程等も狂い始めている中で、本大会の日程を動かさずに辻褄を合わせるのがかなり苦しい状況になっているように思える、というのが一つ。

こういうと、必ず「アスリートファースト」とかなんとか言い出す人が出てくるのだが、今まさに出場権をかけて戦っている選手たちはもちろんのこと、既に出場権を得ている選手にしても、この先、本番に向けた大事な調整の時期に、様々な障害が生じることは避けられないし、海外遠征もままならないようなドタバタの状況でシーズンに突入し、本番でベストパフォーマンスを発揮できずに終わる、というようなことになってしまったら、それこそ気の毒に他ならない。

もちろん、世代交代の激しい競技、特に新年早々下剋上が起きた卓球や、競泳、柔道のように国内の選手層が厚い競技の場合、大会が一年ズレて仕切り直しになれば、代表に選ばれる選手の顔ぶれもガラッと変わってしまう可能性はあるのだが、そこは今選ばれているアスリートよりも、選ばれていない(が、一年延びれば選ばれる可能性がある)アスリートの方が圧倒的に数としては多いわけだから、競技者の総体で見れば、これまた延期しない理由はない、ということになってくる。

そして、自分はそれ以上に、2月下旬以降、国内の様々な業界の事業者が苦境に立たされている中で、さらに輪をかけた「五輪対応」のコストに耐えられるとは到底思えない事業者が存在する、ということも看過すべきではないと思っている。

こういう時には決まって「五輪の経済効果」なるものを持ち出す人もいるのだが、あの「効果」というのはくせ者で、海外で活躍している選手たちをテレビで応援するだけなら、ポジティブな要素だけが経済効果に上乗せされるだけだからよいとしても、「開催地」となるとそれと同じくらいのコストも載ってくる、ということが概して忘れられている。

また、国内・海外問わず、”人の流動”という点でいうと、少なくとも「五輪期間中」はかえって鈍くなる可能性があるわけで*5、期待するとしたら、「五輪」を通じてテレビ越しに”良さ”を痛感した人々が期間後に訪れてくれることくらいだが、「開催するかどうか」が話題になってしまうような状況だと、宣伝効果になるどころかむしろ逆効果になりかねない。

ましてや、コロナウイルスの影響が残っていることを理由に参加を見送るような国が続出するようなことになれば、「東京」のブランドは一気に失墜してしまうだろう。

多くの事業者の懐が傷つく羽目になってしまった今、今年の夏は無理をせずに企業体力の回復に努め*6、新薬や既存薬改良等による「コロナウイルス制圧」を経て、延期後の大会に満を持して臨んだ方が、社会的にも経済的にもプラスになることがはるかに多いのではないかと思っている。

IOC会長のコメントや、それに関する報道等を見ると、現時点では、日本の関係者以上にIOCの方が、「予定どおり開催すること」に執念を燃やしているように思えるのだけれど、思い立ったら「東京五輪」を「一部札幌五輪」に変えるような大胆なこともするのがこの団体なわけで、特に、欧州における罹患者数がこれからも大きく増えるようだと、いつどう動いてくるか分からない怖さはある。

だから、今「期限」とされている5月下旬まで引っ張ったあげく、にっちもさっちもいかなくなって「中止」に追い込まれるくらいなら、今のうちにさっさと根回しして「延期」にしてしまえ、というのが自分の乱暴な意見なのだが・・・。


もし、あと数週間くらいで、今の騒ぎが世の中からスッキリと消えて、4月になったら、みんな「コロナ」のことなど忘れてる、ということになるのであれば、こんな心配も不要だとは思うのだが、今はとてもそんな気配がないだけに、外野から息を潜めて、今後の展開を見守りたいと思っている。

*1:と言えるほど軽い病ではないはずなのだが、今この時点においては、治療法が確立されている分、相対的に安心感がある病になってしまっているのは間違いない。

*2:インフルエンザ特措法の改正にしても、中韓旅行客の入国制限にしても、「このタイミングでやるのか!?」というのがまず驚きで、これまで声高に主張している「まだ流行期に入っていない」という見解を取り繕うためにわざわざ持ち出してきた話のように思えなくもない。特措法が拡大適用されれば、守られるものもある一方で、一部の分野の民間事業者が過大な責務を負わされることにもなる。また、後者に関しては、逆にこれから日本が中国の支援を仰がないといけなくなる、という状況が見えかけてきている中で、お互いさまとはいえ、今さら人の行き来の可能性を狭めてどうするのか、という思いは消えない。こと日本においては、新型肺炎は既に「中国発」の問題ではなく、純粋な国内問題になっているのだから・・・。

*3:おかげで、通常期以上に仕事の効率は良くなり、余計に仕事が増えるという嬉しい悪循環(?)に陥っていたりもするのだが・・・。

*4:他の高校生のスポーツ競技会も中止になっている状況なのだとしたら、なぜ野球だけ?という批判はあるだろうが、それを言うくらいなら、「なぜ他の競技会をやめたのか?」ということの方に問題意識を向けるべきだろう。

*5:宿泊するホテルの客室数が減り、価格も航空券も高騰した上に、どの会場に行っても混雑の人波になるために、そこにわざわざ飛びこんでくる人はどうしても限られてしまう。

*6:五輪が延期になれば、「2020年夏」を目指して行われる各種突貫工事や施策のスケジュールにも少し余裕が出てくるから、そこをうまくやりくりすることで事業の立て直しに資金を振り向ける対応もしやすくなる。

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