今日のCOVID-19あれこれ~2020年3月6日版

「コロナ」モードがずっと続いた一週間。そして、状況は良くなるところか、日に日に世界中に広がりを見せている。
夜にはとうとう全世界で感染者10万人突破

日本に関していえば、今のところ、感染者の数こそ増えているものの、「死亡者を出さない」という点では、不幸中の幸いとでもいうべきか、見事なまでの医療水準の高さを発揮しているように思える。

ただ、既に30名近くの重症入院患者がいる上に、いまだに「治療よりも予防」、「かかったやつが悪い」的な風潮が根強くはびこるこの国では、これからの感染者の広がりとともに、ギリギリまで我慢して重症化させてしまうリスクは存在しているわけで、そんなことにならないように、気軽に検査を、そして堂々と治療が受けられるような環境が整えられることを願ってやまない*1

そして、全てがこの話題”一色”になりつつある時だからこそ、ちょっとでも明るい話題を探していかないと、と思うのである。

泣く者も、笑う者も。

東京証券取引所が、「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた適時開示実務上の取扱い」と題するお達しを出し*2、以下のような形で、積極的な業績への影響に関する開示を促したのは、先月の上旬(2月10日付)のことだった。

2.事業活動等への影響に関する開示
 このたびの新型コロナウイルス感染症が上場会社各社の事業活動や経営成績に及ぼす影響は、投資者の投資判断及び株式等の価格形成にも影響を与えることが見込まれます。
 当取引所におきましても、市場における売買取引の監視等を通じて取引の公正性確保に努めておりますが、不正確・不明確な情報に基づく価格形成を回避し、投資者に適切な投資判断を促す観点から、役職員や取引先その他の関係者の皆様の健康及び安全の確保を最優先いただいたうえで、可能となった時点では、速やかにかつ積極的に、影響等に係る情報開示をご検討ください。(強調筆者)

そして、ここに来て、本格的に「コロナ」絡みの適時開示が出てくるようになっている。

当然ながら、大方はあまり景気の良くない話。

例えば、中国子会社、韓国子会社で操業停止等により稼働率が下回っている*3というのは典型的なパターンだし、婚礼施設運営会社が「業績への影響」として「3月中の挙式披露宴の返金対応」を公表*4すると同時に、自己株式の取得を1週間で中止することまで発表したり*5、比較的評判の良い旅行会社が前四半期末の現預金残高の7割強*6に相当する23億円の借入枠を設定したり*7、というのは、それなりに衝撃的な話ではあった。

「コロナ」を理由に業績の下方修正を公表した会社も、報道された㈱ティーケーピー(3479)など3社ほど。

こういう話が出ると、連日メディアも飛びつくから、どうしても”負の話題”一色になりがちである。

だが、開示されている生の情報をいろいろと見ていくと、前向きな話題もないわけではない

例えば、操業を停止していた武漢の工場の操業再開許可が下りた*8というニュースや、木曜日のみらかHDを皮切りに、続々と公表されている「ウイルス検査の受託」のニュースなどは、業績に与える影響としてはそこまでポジティブではないものの、「こんな状況だからといって、全てが止まる方向にいくわけではない」ということを感じさせるには十分なニュースだったりする。

また、よりポジティブなサプライズは、ミスターマックスホールディングス(8203)の2020年2月度の売上状況*9

「当月は、2月20日から開始した決算セールが好調で、食品や洗剤、ペット用品などの日用消耗品のほか、テレビや理美容家電、電動アシスト自転車などの高額商品も売上を伸ばしました。また、新型コロナウイルスの影響で、衛生用品や紙製品などの売上が上がりました。これらの結果、既存店売上高前年同月比は113.4%、客数は112.1%となりました。」(強調筆者)

今年の2月は、うるう年で1日多かった(さらに祝日も1日増えた)という事情もあるので、小売・飲食の世界で「2月までは好調だった」という会社は決して少なくはない。

ただ「新型コロナウイルスの影響で」売り上げが伸びることもある、という事実は、今絶望感に打ちひしがれている多くの個人投資家に勇気を与えるはずだ。

そして、この日の一番星は、川本産業(3604)が出した「新型コロナウイルス感染症(COVIT-19)の業績への影響及び感染防止対策について」*10

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、マスクを中心とした感染管理対策製品のお問い合わせが増加しております。マスクにつきましては中国浙江省にある浙江川本衛生材料有限公司にて製造しており、1 月下旬より休日も含め 24 時間体制で増産中ですが有価証券報告書に記載の通り、浙江川本衛生材料有限公司の決算日は12 月 31 日となっており、増産の業績影響は、2020 年 3 月期ではなく、2021 年 3 月期の第 1 四半期に影響を与える見込みです。」(強調筆者)

この会社自体、「マスク」銘柄として、既に1月下旬くらいから激しい値動きになっているのだが、連結に反映できる決算期がいつになるにせよ、目下の状況が業績にとってはポジティブな状況になっていることが開示でも明らかになった、というのは、良いニュースというべきだと思っている*11

総会に投げられる一石二石・・・。

さて、今、業績以上の開示ラッシュになっているのが、12月期決算会社の株主総会参考書類である。

大きな会社では、早々と招集通知を出した上で、「当日会場でサーモスタットによる検温実施!」といったところまで踏み込んだ周知まで行っていたりして、眺めている側としては、「そこまでハードル上げる・・・?」と半信半疑だったりもするのだが、今は「こういう状況でも株主総会は安全に開ける」ということを世の中に向けてアピールすることがまず第一だったりもするので、これからも様々な知恵は出てくるのだろう。

そんな中、総会ムラの業界慣習に最初に一石を投じたGMOグループが、また一つ石を投じてきた。

まず、「第20期定時株主総会招集ご通知」という標題に続けて、コロナ関係の案内文を載せてきたGMOメディア㈱(株主数1,372名)*12

この体裁だけでもなかなか唸らせるのだが、やはりすごいと思ったのが、

「株主様の安全を第一に考え、例年よりも縮小した規模で開催させていただくことを決定いたしました。」

という一文に続けて、

株主総会議場にご来場の株主様におかれましては、充分なお席が確保できない可能性がございます。つきましては、可能な限り、郵送にて議決権の事前行使をお願い申し上げます。」(強調筆者)

と踏み込んだところだろう。

同じフレーズは、GMOアドパートナーズ㈱(株主数8,973名)の招集通知(体裁は「メディア」のものとは少し異なるが)にも入っている*13

一連の「感染拡大防止」の流れが、長きにわたって”建前”で論じられてきた株主総会の世界に大きな「石」を投げているのは間違いないところで、準備に追われる事務局の方々の中に、毎年これでいいんじゃないか・・・という思いが、胸をよぎっても不思議ではないところではあるのだが、そんな本音と建前が錯綜する世界の中で、年に一度のビッグイベントを迎える多くの会社がこれからの20数日をどう乗り切るのか。

非常時だからこそ腕の見せどころがある、と前向きに考えるには不確定要素があまりに多すぎる状況ではあるのだが、ちょっとでもポジティブな気持ちを持ち続けていれば、その先の道も開ける、と今は信じたい。

*1:(増え方の傾向にもよるが)今月末までの死者数が100名未満に抑えられるようであれば、国際的な比較の中では「対策」は一応の合格点といえ、来月以降の持ち直しのチャンスも出てくるのではなかろうか。たとえ感染者が5000人を超えたとしても・・・。

*2:新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた適時開示実務上の取扱い | 日本取引所グループ

*3:ハイレックスコーポレーション(7279)、https://www.release.tdnet.info/inbs/140120200306475470.pdf

*4:エスクリ(2196)、https://www.release.tdnet.info/inbs/140120200306475713.pdf

*5:https://www.release.tdnet.info/inbs/140120200306475718.pdf、リリースには書かれていないが、当然手元資金を確保するための苦渋の決断だと思われる。

*6:https://ssl4.eir-parts.net/doc/6548/tdnet/1794662/00.pdf

*7:㈱旅工房(6548)、https://www.release.tdnet.info/inbs/140120200306475815.pdf

*8:ウインテスト㈱(6721)、https://www.release.tdnet.info/inbs/140120200306475632.pdf

*9:https://www.release.tdnet.info/inbs/140120200305475269.pdf

*10:https://www.release.tdnet.info/inbs/140120200306475763.pdf

*11:なお、既に鋭い読者の方はお気づきのとおり、前掲開示リリースの標題が勢い余って「COVIT」(こびっと)になっており(これは凄く気持ちは分かる。「COVID」って言いにくいし・・・)、数時間後に訂正が出ていることにも一応触れておきたい。

*12:https://www.gmo.media/ir/upload_file/m004-m004_03/2019_syosyutsuchi.pdf

*13:https://pdf.irpocket.com/C4784/vTQq/pCEc/cuOq.pdf

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html