今日のCOVID-19あれこれ~2020年3月11日版

憧れの舞台に立つことを夢見て練習に励んできた球児たちやその関係者にとっては、”もう一つの3・11”になってしまった感もある、第92回選抜高等学校野球大会中止の報。

ちょっと前のエントリーでも書いた通り、生徒たちのスポーツの本質は「見せる」ことではなく、「競い合う」ことにあるのだから、無観客でも開催すべきではなかったか*1、というのが自分の意見。

ただ、一方で、野球のような団体スポーツともなれば、一度に両軍のベンチに入る選手の数だけでも30人超。監督・コーチや審判員、記録員、さらに取材記者等まで入れれば、かなりの「大クラスタ」になってしまうわけで、選手たちが競技者であると同時に、教育を受ける者として守られるべき存在でもある、ということを考えると、苦渋の選択も理解できなくはない。

そして、これから、例年なら当たり前のように行われていた様々なイベントが近付くたびに、こういった切ない話がいくつも出てくるのだろうな、と思うと、自分自身、これまで以上に腹を据えてかからねば、と思うのである。

今必要なのは、「逆境」をチャンスに変えるしたたかさ。

とはいえ、後ろ向きな話題だけでは、どんどんドツボにはまるだけだ、ということで、個人的には、こんな時こそ明るい路線で行きたいと思っている。

まず、今日の大ヒットは、最近すっかり定番になった「株主の皆さまへ」シリーズより。

昨日もちょっと話題にした「マスク界の雄」興研㈱だが、今日、定時株主総会招集通知と一緒に適時開示に出されていた「 当社第 57 期定時株主総会ご来場にあたって~新型コロナウイルス感染防止の対応について~ 」という書面*2も実に粋だった。

1.当社の対応について
株主総会の運営に当たる事務局スタッフは、検温を含め、体調を確認したうえで参加いたします。
・当社役員、事務局スタッフは当社製品のマスク『ハイラック』を着用して対応させていただきます
・受付付近での混雑緩和のため、例年受付で手渡ししている各種書類は会場内に準備いたします。
・株主席へのご案内の際には、詰めて座っていただくことを要請いたしません。
(以上、強調筆者)

緊張感のある非常時オペレーションの告知の中でも、自社製品はしっかりアピールする、それでこそ企業だ、という見本のような事例といえるだろう。

そしてこれに続くのが「業績予想の修正に関するお知らせ」をリリースした㈱ブイキューブ。

この会社も、今や説明は不要だろう。

「人が集まる」ことがとにかく敬遠される今の状況の下、主力商材の「テレビ会議・Web会議システム」を前面に出したPRを展開し続けている会社であり、2月中旬の時点で、既に総会担当者に救いの手を差し伸べるようなリリースまで出していた*3

jp.vcube.com

おそらく、5月、6月総会では、多くの会社がなりふり構わずこのシステムを導入することになるのだろうが、今日、この会社が出した「業績予想の修正」は、意外にも公表済みの投資有価証券売却益の計上による当期純利益の上方修正だけ*4

ただ、リリースの中には、当然以下のような記載も出てくる。

「なお、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、その対応策の一つとして多くの企業で「テレワーク」や「オンラインイベント・セミナー」の採用・検討が行われている状況であり、当社の展開するサービスについても数多くのお問い合わせを頂いております。しかしながら沈静時期や各国政府の動向等、現時点では業績に影響を与える未確定要素が多いことから、状況の進展及び事業の進捗を踏まえ、適正かつ合理的な算出が可能になり次第、速やかに開示いたします。」(強調筆者)

大企業ほど、新しいことを始めるには時間がかかる、という日本社会の構造的問題と、今の状況下での各社の動きの鈍さを考慮すれば、引き合いはあっても商談成立には至らない、なので、売上高の上方修正を打つには時期尚早、ということなのだろうけど、なけなしの浄財を振り向ける個人投資家にとっては、そこが一番気になるところ。

大企業から中小企業、フリーランスに至るまで、昨今の状況の中で苦境に立たされている会社は多く*5、そんな時に”おかげさまで・・・”的なリリースをすることへの躊躇は、日本企業の中の人間であれば誰もが抱くことだと思うのだけれど、こんな時だからこそ、ちょっとでも前向きなニュースに接したいという潜在的欲求も、多くの人々の心に潜んでいたりするわけで、この先一つでも二つでも、そういったニュースを取り上げていければな、と思うところである。

*1:これは野球に限らず全ての種目に共通する話。それゆえ、一斉に大会を中止してしまった高体連の判断にも当然疑問はある。

*2:https://www.koken-ltd.co.jp/ir/stock/pdf/annai/20200305.pdf

*3:ちなみにこの会社自身は12月期決算なので、まもなく総会を迎える。そして、当然ながら「V-CUBE」による中継も予定されている。https://contents.xj-storage.jp/xcontents/05997/70d074a0/bdbd/41b1/ba76/d5caa4244250/20200310132058331s.pdf3頁参照。

*4:https://www.release.tdnet.info/inbs/140120200311477646.pdf

*5:「上期の売上高としては創業以来の過去最高となりました。」とアピールするクルーズ旅行専門の会社の決算説明資料(https://www.release.tdnet.info/inbs/140120200311477750.pdf)なども、涙なしにはとても読めない。

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html