今日のCOVID-19あれこれ~2020年3月28日版

今週は平日の終盤でちょっと更新をさぼってしまったこの連載企画だが、そうこうしているうちに、日本国内の感染判明者数は100名超、200名超、と倍々ゲームで増えていき、東京都内の感染判明者数も60名超にまで達した。

小池都知事の強めの「外出自粛」パンチや、目に見える数字として出てくるようになったエビデンスが効いたのか、SNSやウェブメディア上では、ついこの前まで「経済を回せ」とか、「やり過ぎだ」と言っていたような人たちが一転して「出歩くな」派に鞍替えしている様子を見てとることができるし、今頃になって「ミラノでは・・・」とか「ニューヨークでは・・・」という話がいろいろと飛び交うようになり、一種浮足立ってきた雰囲気すらある*1

だが、「感染判明者」の詳細経緯等から推察すると、今「陽性」と明らかになった人たちが感染したのは、ほとんどが先週以前のことだろうと思われる。

その意味で「市中感染」のリスクが今さら出てきたわけではなく、むしろ、やれ「経済を回せ」*2とか、やれ「もう飽きたから花見でも」みたいなノリで危険な「密集」が作り出されてしまっていた先の三連休やその前の週末の方が、よほどリスクとしては高かった。

この一カ月くらい、極力人混みを避けて暮らしてきた*3自分のような人間にとっては、こわもての知事の一発が効いて、いつもより大幅に人が減った今日の街中のような状況が来週の平日になってもずっと続くようならありがたいことこの上ないし、その状況が続く限り、多数人でつるんで出歩くようなことでもしない限り、適度に外に出た方がよほど安全、という皮肉な状況になっているとさえいえる*4

同じことを皆が考えて秩序なく街に繰り出すようなことになれば、行政側の呼びかけが何の意味もなくなってしまうので、必然的に人が集まってしまう首都圏の中の大都市エリア(休日であれば、新宿、渋谷、池袋、秋葉原等々、平日であれば大手町、丸の内、新宿界隈と、そこにつながる人口密度の高い公共交通機関)は、「居住者以外立ち入り禁止」にするくらいでちょうど良いと思うのだが、それ以外の、さほど密度の高くない居住エリアの周辺で1人、2人で適度に買い物をして、食事をして、ということまで一律に止めるのは全く不合理だし、その辺は、個々人がきちんと自己責任でリスク判断した上で、他人に迷惑をかけない行動を取ればそれで足るはずである。

とはいえ・・・。


前の週末までは散見されていた様々なリスク誘発行動、ついこの前まで夜の駅の構内に出没していた酔っぱらい会社員クラスタ、そして、この週末に至っても無防備にたむろっている「見るからに若者」のクラスタ・・・。

これは、常にどこかしらか大事な「Facts」をオブラートに包んでしまいがちな政府筋の広報のまずさにも起因するのかもしれないが、世の中にそれなりの情報が出回るようになってきているはずなのに、リスク回避が十分に徹底されないまま、ズルズルとここまで来てしまった、という状況を考えると、(全く自分の好むスタイルではないが)ある程度の「劇薬」もやむを得ないのかな、というのが、最近思い始めたことでもある。

できれば当たってほしくない予想だが、週が変われば、東京都内でコンスタントに100人を超える感染判明者報告が上がり、首都圏だけで判明者数が連日200人、300人規模に膨れ上がり、罹患者の受け入れ先にも四苦八苦、という状況になっても全く不思議ではないわけで、それでもなお、のらりくらりと状況をやり過ごそうとすれば、その先に待っている未来などロクなものではない。

だとしたら、洋風に「ロックダウン」というか、日本的に「緊急事態宣言に基づく外出・施設営業自粛要請(という名の事実上の強制)&建物立入り禁止命令」というかはともかく、一定の明確な法的根拠の下での措置を取ることはやはり必要なのではないかと思う。

そして、その際大事なのは、「猶予を与えないこと」*5と、「終期をきっちり決めること」の2点だろう。

特に後者に関しては、最初に「自粛要請」が出た時の期間(2週間)があまりに短すぎたゆえに、状況は何ら改善されていなかったのに、その期間が終わったタイミングで一種の”反動”を招くことになってしまった、というのが今の状況なのだから、やるのであれば最低でも「1か月」、できればGWが完全に終わる5月10日までは、必要最低限のものを残して人の行き来を止める(その代わりに、その間、感染者のクラスタを徹底的に追尾し、隔離して、これ以上の拡大を食い止める)くらいのことはしなければならないはずだ。

もちろん、そこまでやってしまえば、当然、様々なところにあたりが出ることは避けられないわけで、収入の糧を失う事業者、勤労者は多数出てくるし、このタイミングで「会社に誰も行けない」ということになれば、新規の取引が滞るのみならず、やれ月末月初の支払処理ができない、期末の決算を締められない、だとか、採用活動どころか直近で入ってくる新入社員の面倒すら誰も見られない、等々、様々な問題が噴き出すことは火を見るより明らかだから、当然、「個別補償」という選択肢はセットになってくるし*6、後者に関しては、決算発表、株主総会有価証券報告書の提出期限、といった様々なルールをフレキシブルに動かす、といった策を講じていただく必要があるのも間違いない。

ただ、それでも、今のように、いつ始まっていつ終わるか分からないダラダラとした宙ぶらりん状態で多くの事業者や勤労者を疲弊させるよりは、びしっと期限を決めてことを進めるほうが「経済」的な観点からも望ましいように思えてならない*7

「いや、そうではない。緩やかな感染拡大を覚悟しつつも、緩やかな”自粛”でしのぎ続けるのが、全てのステークホルダーを幸福にする最善の道なのだ」という考え方もあるだろうし、「リミットを区切ったところで、その間に全ての問題を解決できる保証がない以上、緩やかな対応を続けていくしかないのではないか」という発想も傾聴には値する。

だがその一方で、「緩やか」に事態をしのぐことができる、という想定自体が今や揺らぎかけていることを考えると、”一か八か”の劇薬に賭けてみる、というのも一つの選択肢だし、それによって救われる命も、救われる事業者もいるのではないかな・・・と。

全ては杞憂であってほしいけれど、いざ何かが起きれば驚くことなく腹を括る。そんな気持ちで今はいる。

*1:ことの最初に「武漢」で何が起きたか、ということを一応追いかけてきた者にとっては、おとといの話もいいところなのだが、今そんなことを言っても仕方ない。

*2:繰り返しになってくどいようだけど、2月から3月にかけて世の中に求められていたのは、「3・11」後の時のような単なる心情的な”自粛”ではなく、現にひしひしと迫っていた「感染症」という脅威から身を守るための対応だったのだから、わざわざリスクのある賑やかしに乗っかるような消費行動と、その免罪符としての「経済を回せ」的な言説は、有害無益でしかなかったと自分は思っている(そして、今頃になってふと我に返ったところで、後の祭り感は半端ない)。

*3:三連休の間は、わざわざガラガラの電車に乗り、あえて桜も咲いてない、よほどのことがないと人が行かないような場所に逃げる、ということまで試みた。

*4:今となっては、家庭内での濃厚接触による感染伝播のリスクも十分高まっているのだから、狭い家の中に閉じこもっていれば安全、というわけではない。

*5:下手に猶予期間を設けると、人々が対象区域外に一斉に移動することで、リスクをかえって全国規模に拡大することになりかねない。

*6:この点に関しては、政府、自治体がどういう意向であろうが、事実上の強制力をもって措置がなされた結果生じた損害と言えるなら、補償の対象となり得る、という考え方は十分とり得るはずだし、補償額の算定にあたっては、これまで「ポスト3・11」の責任を一手に負わされた一民間事業者が10年近く費やして編み出してきた「基準」が十分に活用できるように思うところである。

*7:自分自身、今は商売を回す立場にいるからなおさら日々痛感させられるのだが、収入が見込めない期間との見合いで一時的にでも商売を「閉める」というのも、経営の立派な選択肢なわけで、そのジャッジをしやすくするという観点からも「リミットを切ってその間にカタを付ける」という発想は必要だと思う。今のままだと”マイナス”状態を引きずったまま、より傷口を深くしてしまうリスクさえあるような気がするので。

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