ギリギリの限界線で。

ここのところ流れてくる政府や主要自治体の動きを見ていると、「焦ってるな」という印象を強く受ける。

昨日の「スーパーマーケットでの『密』防止策」や、「休業要請に応じない事業者名の公表」といった話に始まって、今日にいたっては「12連休の呼びかけ」まで・・・。

確かにスーパーやドラッグストアが、時間帯によってはまぁまぁ混んでいる状況になっているのは確かなのだが、少なくとも山手線の内側であれば、自分が気を付けていれば「かわせる」レベルではあるし、下手に入場規制や来店日制限をかけようものなら、かえって人の滞留や不要な買い占めを招くだけの結果につながってしまうような気もする*1

「事業者名の公表」についても、既にネット上などでは散々晒されている中で、お上が正式に「公表」することにどれだけの意味があるのか疑わしい上に、多くの方々が指摘されているとおり、今の、世の中の一定割合の輩が”コロナをなめている”状況では、かえって「集客効果」を生じさせてしまうリスクも避けられないだろう*2

最後の「12連休」に至っては、これに易々と応じるような会社ならとっくに在宅勤務なり自宅待機に切り替えているだろう、という突っ込みもあるし、現に在宅勤務に切り替えている会社が多く、通勤電車もオフィス街も感染リスクが著しく下がっている状況*3で、その部分の削減にさらに力を注ぐのは決して効率的なこととはいえない。

特に公園やら小売店やらでの「密集」が問題になっている時に、昼間人口をすべて居住エリアの方に集中させてしまうことのリスクは、今一度考えた方が良いのではないかと思うところである*4

ただ、こんなあれやこれやの”窮余の一策”を矢継ぎ早に打たないといけないのも、足許の感染者の拡大状況があまりに芳しくないからで、そこは関係者に同情すべきところは多い。

東京都はここ数日100人台前半の数字で落ち着いているように見えるものの、公表されている検査数との比較でいうと、相当高い割合で感染者、しかも経路不明の感染者が出ている状況だから、実際の日々の感染者数は公表値の3倍~5倍くらいには膨れ上がっていると見た方が良いだろう。また、その他の大都市圏や周辺自治体、北海道といったエリアの数字も一向に下げ止まる気配が見えないし、何よりも、ここに来て死亡者の数が目に見えて増えてきている。

ここまでの日本の医療従事者の方々の献身的な貢献の素晴らしさは、あえて自分が申しあげるまでもないし、それがこの一カ月、感染者数は増えても死亡者数はそんなに増えない、というギリギリのバランスを保ってきた。だが、いかに日本の医療が充実しているといっても、そこでできるのは「重症化した患者を死に至らせない」というところまでで、一見軽症に見えた感染者を突如として重篤な肺炎に陥らせるウイルスの気まぐれさには元々何ら打つ手はない。しかも、「死に至らせない」という日本が誇る最後の砦も、今や崩壊の瀬戸際にあるのは日々伝えられる情報からも十分窺い知ることができる。

これまでもそうだったように、一連の対策の背景には、メディアに対してストレートに出せないようなより脅威を感じさせる「裏」の情報があると思われること、そして、対策そのものの当否はともかく、一連の対策から「本当にここが瀬戸際なんだ」というメッセージがにじみ出ている以上、一人ひとりが自分の判断で、自分と家族を守るためのリスク回避行動をとるしかないし、休日の「家の周りの人の増え方」如何によっては、それこそ「一歩たりとも外に出ない」覚悟だって必要だろう、と思っている*5

そしてこれも散々書いてきたことではあるが、いくら『経済!』と叫んだところで、それを享受できる人々が生き残らなければ、一片の価値も意味もない

GW後半から5月の半ばにかけてのニュースを「訃報」で埋め尽くすことにならないように、できることを徹底してやる。今はそれに尽きると思うのである。

そして、ついに出た「完全延期」

さて、連日出ている決算発表延期は今日も20社超。

そしてとうとう、「定時株主総会基準日」だけでなく、「剰余金配当基準日」まで先にずらした会社が登場した。

www.nansin.co.jp

この会社の2019年3月末の株主数は681名。大株主の上位はオーナー一族と思われる名前が並び、流動株式比率も決して高くないと思われる会社だからこそできるドラスチックな一手、というべきなのかもしれない。

ただ、一方で、計算書類が確定していない段階で、安心して剰余金配当決議などできるはずもない、というのは、あの山口利昭弁護士もブログで書いておられるとおりで*6、それゆえに、「1回目の総会で剰余金配当を決議し、2回目の総会で計算書類報告をする」という「二段階方式(継続会方式)」式が広く普及するとも思えない*7だけに、ここからの数週間、特にインドやマレーシア等のロックダウンが解除されるかどうかによって、各社の運命も、3月末時点で株主”だった”人々の運命も大きく変わる可能性は出てくるような気がする*8

ゴールデンウィーク中に『緊急事態宣言』の延長要否を判断する」という総理の発言からも明らかなように、残念ながら、この国の行政機関には、本当の意味で企業実務を理解していないのではないか?と思えるところも多々あるのだが*9、そんな中でも「実務」は進められなければならない、というのが残念ながら現実。

だからこそ、ここでも試されるのは、(くどいようだけど)現場の、末端の実務者の一人ひとりの叡智だ、ということを、改めて繰り返しておきたいと思うのである。

*1:この点に関しては、前にも書いた通り「出かけるときは大人一人(やむを得ない場合は+子供一人)」の原則を徹底させることで相当緩和されると思うのだが、諸外国では普通にやっているこの呼びかけが、なぜか日本ではあまり広まってくれないのは残念なことだと思う。

*2:個人的には、パチンコ屋のような事業者に関しては、(元々極めてグレーなところで商売をやっている人々なのだから)憲法訴訟も覚悟で営業への行政介入をして閉鎖を強行してしまえばよいではないか、と思うのだが、さすがにそれを期待するのは無理がある。

*3:唯一リスクがあるのは、外からは見えない各オフィスの中だが、そこはもうそれぞれの会社の自己責任でやってくれというほかないし、そんな状況で仕事をしていた人たちが家庭や住宅街に滞在する時間が増えることでかえって増えるリスクもある、ということに目を向ける必要もあるような気がする。

*4:そうでなくても、これから迎えようとしている「GW」は、多くの人がどこかに出かけてしまったせいで、清々しいくらい都内の人口が減っていたこれまでのGWや年末年始とは、全く違う景色になってしまう可能性も高いわけだから、むしろ休日を年の後半にスライドさせてでも、人口を分散させる施策を打った方が良いのではないか、と思うくらいだ。

*5:本当は、今からでも遅くないから、これまでの「ご高齢の方は~」「基礎疾患のある方は~」みたいな留保を取っ払って、コロナウイルスに感染すると、誰でも死ぬ可能性があります」ということをもっと声高に、ストレートに、発信力のある人たちが語り続けるべきだと思うのだが、誰かがそれに応えてくれないものか。志村けんさんを失い、岡江久美子さんまで失ったこの国が、さらに若い世代の犠牲者の訃報を一つ二つ流すまでCOVID-19をなめている人々の感覚を変えられないのだとしたら本気で危ないと思うし、そういった人々を、自分たちのコミュニティの中の誰かが死ぬ、あるいはもっと近い家族が死ぬ(そうなれば、どんなにいきがってる連中も改心する。人間はそういうものだから)といったことになるまで放置するのは、いくら自己責任が原則、といったところで、もどかしいにもほどがある。

*6:6月総会延期問題-「継続会方式」「バーチャル株主総会」はリスクが高い: ビジネス法務の部屋参照。

*7:そもそも、いくら入場制限しても良い、といったところで、あの緊張感のある会合を年に「2度」も開く、ということ自体、会社にとってはあまりに負担が重すぎるのであり、その意味で「二段階方式」は、”机上の空論”に近いところがあるような気がしてならない。

*8:国内も含めてあまりに状況が悪化すれば、配当を「無配」とすることにより堂々と延期できる、という可能性も出てくることにはなるが果たしてそこまで思い切れる会社があるのかどうか。

*9:ゴールデンウィーク、しかも行政が率先して「休め」と言っておきながら、5月以降の各社のスケジュールに大きな影響を与える 「宣言延長」の是非をその最中に決められたのでは、会社としても全くお手上げである。まぁ、今の足元の状況を見たら、「5月6日に解除されることはない」という前提でいろんなスケジュールを組む方が確実性は高いと思うのだが、中にはまだそういうスタンスで動いていない会社もあるようなので、5月の2週目早々から緊急出社を強いられる会社が増えなければよいな、と願うばかりである。

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