荒れた空気の中の人生交差点。

祈りはまだ通じているのか、舞台を中山から東京へ、阪神から京都へと移し、今週も中央競馬の開催は継続された。

同じ「無観客」仲間(?)、大相撲の世界でも既に感染事例が判明し、夏場所の開催が危ぶまれている状況になってしまっているのだが、競馬の世界では今の今に至るまで、まだ騎手も厩舎関係者の感染も全く報じられていないのだから*1、まぁ大したものだな、というほかない*2

ただ、開催替わりで空気が変わったゆえ、なのか、今週の土日は、「コロナ」以外の波乱が満載。

土曜日は、京都で1レース目から単勝110.4倍、これまで3走、掲示板に載ったことさえなかったヴィネット号が6馬身差の圧勝を見せたのを皮切りに、メインレース(彦根S)の15番人気・ラセット*3まで、単勝万馬券4本の大荒れ*4

さらに日曜日は、これまた京都の1レースで、岩田康誠騎手の馬が骨折転倒したのをきっかけに、5頭落馬(さらに1頭影響を受けて競走中止)という大事故が起きてしまった。

最初に落馬した岩田(康)騎手の骨折も大ニュースではあるのだが、それ以上に今季絶好調、土曜日は全レースに騎乗していた松山弘平騎手まで巻き込まれ、しかも骨盤骨折の重傷を負うことになってしまった、というのはかなりショッキングな出来事で、結果的にこの両騎手から一日に6鞍も引き継ぐことになった武豊騎手の思いもさぞ複雑だったことだろうと思われる*5

メインの重賞レースも、日曜京都のマイラーズカップこそ、インディチャンプが圧倒的支持に応えて快勝し比較的無難なところに落ち着いたものの、土曜日の福島牝馬Sは、2着・リープフライミルヒ、3着・ランドネと2桁人気の馬が食い込んで3連単64万円超、日曜東京のフローラSでも、スカイグルーヴ、レッドルレーヴ、という自分好みのエアグルーブの末裔たち*6を圏外に蹴散らしてウインマリリン&横山武史騎手が重賞初勝利*7、と実に荒れた。

来週以降、再びGⅠ連続シリーズに突入するだけに、もう少し落ち着いてほしいなぁ、というのが素朴な願いではあるのだが、これまで競馬場で、やれ馬体が!とか、直前の気配が!といったところで馬券を購入していた層がネット投票に移行して「その場の見極め」でオッズが動きにくくなったせいか(仮説)、データ党にとっては何となくやりにくくなっている雰囲気もあるだけに*8、心の底から勝っても負けても楽しめるだけよい、という心境に達するまでは、まだまだ苦労することになるのかもしれない。

で、そんな中、この土日はいろいろな「節目」の勝利の報が飛び込んできた週でもあった。

1300勝の和田竜二騎手、1000勝の秋山真一郎騎手、100勝の藤田菜七子騎手。

案の定、一般のニュースメディアで取り上げられたのは、藤田騎手の話題が圧倒的に多かったのだが、長く見てきた者としては、「テイエムオペラオー後」で苦しんだ和田騎手が現役を続けてまた一つ節目を超えた、というニュースにいろいろと感じ入るところもあったし、同期の武幸四郎騎手が早々と調教師に転向する中で、騎乗機会は限られていながらここまでたどり着いた秋山騎手にも喝采が送られてしかるべきだろう、と思っている*9

もちろん、こういう嬉しいニュースを聞くたびに「無観客じゃなかったら・・・」という思いに駆られるところはあるのだけど、考えようによっては、その日、その場にいたファンとそうでないファンの隔てなく、皆が同じ距離感でジョッキー一人ひとりのコメントを聞くことができる貴重な機会でもあるわけで、メディアから流れてくるコメントを聞きながら、決して永久に続くわけではない”今だけの非日常”をちょっとでも前向きに捉えないとな、と思ったことを最後に付言して、再び次の週末に向けた祈りを捧げることとしたい。

*1:JRA職員の感染事例は既に報じられているが、幸いにもそこから騎手等に広がっていくことはなかったようである。

*2:もちろん、騎手に対して土日の騎乗競馬場を同一にしなければならない、という規制を課したり、東西間の遠征や一部の地方交流競走を中止したり、といった、決して小さくはない犠牲を払うことで維持されている”平穏”でもあるのだが、ここまでの関係者の不断の努力には心から敬意を表さねばなるまい、と思っている。

*3:この馬自体の京都での戦績は決して悪くなかったのだが、約1年ぶりの出走で馬体20キロ増、鞍上が今季まだ3勝の加藤祥太騎手だったことが低人気につながったのだと思われる。

*4:東京での1本と合わせて一日5本の万馬券JRA史上初、のようである。

*5:リーディング争い的には、ちょうど松山騎手が武豊騎手を猛追し、抜き去ろうか、というタイミングだっただけになおさらだろう。12レースでは松山騎手から乗り替わったヨドノビクトリーで今季46勝目も挙げている。

*6:馬名と見ただけで一目瞭然、このレースでも期待していたのだが・・・。

*7:横山武史騎手は、このレースを挟んで3連勝、しかも重賞以外はいずれも2桁人気、と実に神がかった活躍であった。

*8:データとJRA-VANデータマイニングを元に穴を狙って買ったつもりでも思いのほか人気になっていて配当に恵まれなかったり、逆に、必要以上に人気薄になっていた馬が勢いに乗って勝ってしまったり、ということがちょっとずつ増えてきた気がしている。気のせいかもしれないが・・・。

*9:何といってもこの辺の世代の騎手たちは、自分が競馬への「ライト」な距離感からより深みへとはまっていく過程でデビューした騎手たちなので、自分の中での思い入れもひときわ、なのである。

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