再びの「競馬に絶対はない」

前夜に激しく降った雨が上がり、空だけ見ればカラッとした夏空の下で行われた今年の安田記念

だが、水を含んで湿った馬場が、競走馬たちの脚元を微妙に狂わせたのか、今日の東京コースの予想の難易度は、前の開催に輪をかけて高まっていた。

新馬戦では藤田菜七子騎手が騎乗した人気薄の逃げ馬が、2戦続けて2着に粘り込んで波乱を演出。人気などあてにならないデビュー戦に、とはいえ、メイショウボーラー産駒の小柄な11番人気の牝馬馬連万馬券を演出した「2度目」になると、今日はちょっと荒れる日だなぁ・・・と腹を括らざるをえなかった*1

もちろん、そうはいっても、今日の主役は前走で次元の違う走りを見せたアーモンドアイ*2

今回は当然ながら、同じコース、同じ距離でも、牡馬のGⅠタイトルホルダーがずらっと揃って大幅に相手が骨っぽくなった一戦。それでも、ファンの支持は単勝1.3倍と圧倒的なレベルに達していたし*3、ドバイ帰りで3着に沈んだ昨年と比べると、国内で余裕を持って一叩き(といっても立派なGⅠレースではあったのだが・・・)した分、勝算は遥かに高まっていたように思われた。

それが・・・である。

ダノンスマッシュ、ミスターメロディといったスプリンター組が、比較的速いペースでレースを引っ張ったのは予想通りの展開。今年こそ、のダノンプレミアムがその後ろに付け、ダノンキングリー、インディチャンプといった面々も前方で戦況を伺う。

これに対し、アーモンドアイは前走に比べるとかなり後ろの位置取りになったものの、ペースの速さや行きたがる馬の多さを考えるとそれも順当なところで、コーナーを回るところでもそんなに動きが鈍いようには見えなかったから、自然体で前に行き、最後はきっちり交わしてくるだろう、というのが大方の視聴者の見方だったはずだ。

ところが最後の直線、追い出して予定調和的に先行馬たちを捌いていったアーモンドアイの前に、それ以上に鋭い脚で弾けていた馬が1頭。

追っても追っても差は詰まるどころかますます開いていき、結局、最後は2.5馬身差で本命馬を圧倒したその馬は、一世代下の桜花賞馬、一時期「世代最強」説も流れ、前走でも距離を短縮した高松宮記念、直線の差しだけで2着に食い込むポテンシャルを見せたばかりの4歳牝馬・グランアレグリアだった。

自分とて、アーモンドアイが「差し切れずに負ける」展開を全く予想していなかったわけではなかったから、この日も彼女に関しては、単勝も単式も買わずに構えていたのだが、相手として想定していたのは昨年の雪辱を狙ったダノンプレミアムとか、同コース距離でGⅠ実績のある香港マイル馬・アドマイヤマーズといった牡馬たちで、まさか同じ牝馬に足元をすくわれることになるとは想像だにしていなかったのが本当のところである*4

よく見るとグランアレグリアも3番人気ではあるから、馬連、3連複等はさほどでもなかったものの、単勝は1,200円、3連単もアーモンドアイが絡んでいるのに万馬券・・・。

後から振り返ると、主戦・池添騎手が2戦目、のタイミングでもあったから「そろそろ大きい仕事をする」ということを想定していないといけなかったのかもしれないが、いずれにしても負けは負け、それも惜しい負けではなく「完璧な負け方」で、史上最多のGⅠ・8勝目がお預けになる、という悲劇がここで生まれることになってしまった。

こうなると、頭の中に自然と浮かんでくるのが、標題にも掲げた「絶対はない」という定番フレーズだったりもするのだが・・・。


本ブログの過去エントリーを調べたら、一度だけ自分がこのフレーズを記事の中で使ったことがあることに気づいた。

その記事が↓である。

k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

同じ安田記念、そして同じ単勝1倍台の高い支持率を受けて走ったレースで、決して僅差とは言えない差を付けられて敗れる。

そういった共通点を踏まえると、今回も「絶対はない」という金言を再び使っても、誰にも文句は言われないだろう、と信じている。


ちなみに、前回の「絶対はない」の舞台となったのは、ちょうど今から4年前の同じレース。

奇しくも、今週から始まった2歳戦では、父・モーリスの産駒が続々とデビューを遂げていたりもして(東西で2着を確保する、という決着となった)、時の流れの速さを感じてしまうのだが、モーリスは2016年の安田記念での「痛恨の大敗」の後、距離を伸ばして天皇賞(秋)制覇、さらに香港カップ制覇という偉業までやってのけたわけで、安田記念で足を余すような形で負けたことがその後の中距離路線への”転向”につながった、と見ることもできるから、アーモンドアイにとっても今日の負けが次に向けた福音になることは十分考えられる。

「史上最多」にリーチをかけた状態で、次の照準をどこに定めるのか、それによってもこの先の楽しみは大きく変わってくるところだが、今は再び「『絶対』はやっぱりあった」と言いたくなるような痛快な勝利を「新記録」の達成とともに味わいたいものだな、と思うだけに*5、じっくり気長に待ちながら、「その時」を待ち続けることにしたい。

*1:結果的に、メインまでの10レース中、1番人気が3着以内に入ったのは僅か3レースしかなかった。

*2:改めて衝撃をもう一度、のエントリーは走った、勝った、強すぎた。 - 企業法務戦士の雑感 ~Season2~である。

*3:そのあおりを受けて、ペルシアンナイト、ケイアイノーテックといったマイルGⅠ勝ちのある馬たちが軒並み100倍超のオッズにまで落ち込んでいた。

*4:しいて言えば、ノームコアが豪脚で3着くらいに飛び込んできてくれることは想定した組み合わせにしていたのだが、もう一頭の牝馬に関しては長らく1400m以下のレースが続いていたこともあり、今回は完全に外していた。

*5:そういう時に限って、今度はまた「馬券を買ってない」の落とし穴にはまりそうな気もするのだが、それはさておき、である。

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