「緊急事態宣言」が解除された後も、先週くらいまでは、まだどことなく停滞ムードがあった世の中だが、今週に入ってから、
「正直、息を付く暇もないくらい忙しくなった」
という人はかなり多いのではなかろうか。
かくいう筆者自身、先週の後半くらいから、ここしばらくマイペースで淡々と回していた仕事も、関係先への連絡等も、だんだん首が回らないレベルになってきて、もはや”ちぎっては投げ、ちぎっては投げ”のスタイルに逆戻り。
そして、やり取りをさせていただいている方々からも、業種を問わず、似たような嘆き節を聞くことが多い。
自分の記憶が正しければ、2月の終わりくらいまでは、あれやこれやに追い立てられて悲鳴を上げていたような状況だったし、4月に入ってからもしばらくは「非常時対応」系のミッションにお付き合いすることが多かったので、実質的にペースが落ちていたのはGWを挟んで1か月少々、といったところのはずなのだが、「慣れ」というのは実に恐ろしいもので、速いテンポの仕事の感覚を取り戻すまでに数日・・・というか、まだ戻り切っていないような気さえしている。
「コロナ」前後で、仕事のスタイル自体はそんなに変わっていない我が身ですらそうなのだから、しばらく「在宅」「リモート」環境で仕事をしていた方々は、一体全体どうなってしまうのか、という心配は当然あるわけで、そのまま在宅勤務を継続していると、家に居ながらにして追われまくるプレッシャーを浴びせられることになるし*1、逆に職場に連日足を運ぶとなると、そうでなくてもこのうんざりする暑さの中、相当心身に気を使わないとどこかでガタが来てしまいそうだ。
ここ数日は、人身事故で公共交通機関が乱れている、というニュースも連日耳にするところで、せっかくコロナを乗り切っても、日常に戻る過程の変化にやられて命を落とすようなことになってしまっては身も蓋もないので、本ブログ読者の皆様におかれても、くれぐれもご自愛いただければ、と思うところである。
で、足元はそんな状況なれど、ニュースメディアに目を移すと、相変わらず「景気の悪さ」を強調するような記事ばかりで・・・。
思えば、ちょうど「新型コロナ」がじわじわとこの国を蝕み始めた頃の状況は真逆で、日本でも海外でも、日に日に感染判明者数が増える一方なのに、のどかな企業プレスリリースのネタだったり、(当時はまだ)「数か月先」の話だった五輪その他スポーツの話題だったり、といった見出しが躍っているのを見て、全く「NEW」Sではない、と嘆いたもの。
それが今は、「withコロナ」だったり、ちょっと前の経済統計の数字を出して「停滞長期化」を論じてみたり、挙句の果てには、「永遠のマイナス成長」を前提にしているかのような野放図な財政・金融出動を賛美するような論調が躍ったり、と、これまた何だかなぁ・・・という感じになっている。
確かに、ここ数か月の「緊急事態」がもたらした変動によって、この先半年、1年経っても、それまでの好景気も雇用ひっ迫状態も、決して戻ってこないだろうな、という分野があるのは確かだが、その一方で、この機会によってポジティブなインパクトが生じ、「緊急事態」が明けた後もなおコンスタントに業績を伸ばしている分野もあるし、しばらく足踏みしていたが、ここにきてこの数か月の停滞を一気に取り戻すようなフィーバーサイクルに入った分野もある。
得てして公式の経済統計の場合、早いものでも1か月はタイムラグがあるし、遅ければ、ちょうど下り坂に向かっていた1-3月期頃の話を今頃、というケースも決して珍しくはない*2。
企業の業績開示となればもう少しタイムラグは縮まってくるが、それでも確定した決算値となると四半期に一度しか目に触れる機会はなくなるし、せいぜいコンスタントに月次を出してくれている業種業界の「先月」までの数字が最新、といった状況になる。
ここにきて脚光を浴びている㈱ナウキャストが解析・レポートしているデータなどは、BtoCの業種に限れば、リアルタイムな状況をもっとも的確に反映していると思うし、既にその一端は公表されていたりもするが(↓参照)、最新の最新レベルのデータとなると彼らの商売道具だけに、誰もが手に入る形ではそう簡単には出てこない。
だから、報道ベースで足元の「勢い」を捉えるのが難しいのは理解できなくもないのだけれど・・・
自分の素朴な見立てとしては、国内のBtoC消費は7月、8月にこれまでにないくらいの伸びを記録することになるだろうし、前年駆け込み需要の反動があり得る9月を除けば、年末まで前年比プラスで推移する可能性は高い。
ここ数か月「異常値」に苦しめられていた会社も多かったBtoB分野でも、7-9月に反動増が来る会社はかなり増えるはずで、少なくとも今「保守的な」予測を出している会社の多くは、嬉しい「上方修正」を連発することになっても不思議ではないと思っている。
あとになって振り返れば、「なんであの時、国の財布が潤沢ではないのが分かっていながら、あんな贅沢なお金の使い方をしたのか?」と言われてしまうような状況でも、ひとたび予算が付けば執行するのが役所だから、加熱した景気に油が注がれ、さらにヒートアップして燃え上がる可能性も十分にある・・・。
「第2波が来たら?」「第3波が来たら?」という問いかけも常になされてはいるが、今の様子を見ている限り、感染判明者数が50人を超えようが100人を超えようが、「お上主導」で経済の営みにブレーキをかけるようなことは当然しなさそうな雰囲気だから、むしろそれは「次の波が来る前に・・・」的な消費行動を加速する要因にはなっても、ペースダウンさせる要因にはなりえない*3。
もちろん、その陰には、一時的な経済収縮の過程で不運にも撤退を余儀なくされた飲食店関係者だったり、当分ポジティブなニュースとは無縁になりそうなインバウンド・アウトバウンド系の業界の方々だったりの苦しみがあるのは事実で、職を失った方々の生活保障も含めて、そういったところに支援の手を差し伸べることまで否定するつもりは全くない。
ただ、「正常化バイアス」に始まり、「過度の萎縮効果」「度を過ぎた悲観主義」と、人間心理の弱いところを突き続けている今回のコロナ禍が、平時ならもっと冷静に行われるはずの各種政策上の意思決定を大きく乱しているのもまた間違いないわけで*4、あと6か月ちょっと、この1年が終わった時にどういう「反省会」が繰り広げられるのか、は、ちょっとした見ものだな、と思わずにはいられないのである。
まぁ余計な心配をする前に、目の前の仕事をさっさと片付けろ、というのが、今は全てではあるのだけど・・・。
*1:いわゆるリモートワークの特徴として、自分のペースで仕事ができている間は非常に効率が良いのだが、絶え間なく依頼が飛び込み、やるやらない、先にやる・後に回す・他人に振る等々の細かい調整をせざるを得ないような状況に追い込まれてしまうと、あらゆるアクションに同程度の時間を割かないといけない分(その場にいれば、一言「やっといて」で済む話が、メールにしてもチャットにしても、それなりにしっかりした指示を出さないといけなくなるから・・・)、俄然効率が悪くなる、という問題がある。
*2:そもそも長年使われていた景気動向指標が、世の中の経済状況を的確に示しているとは言えないのではないか?という疑問はかねてから投げかけられていたところだし、消費行動のみならず、生活様式そのものが変化してしまったここ数か月に関しては、その指摘はよりインパクトをもって受け止められるべきではないかと、個人的には思っている。
*3:そして、来るぞ来るぞ、と身構えているものは大抵来ない、という世の常は、今回もぴったり当てはまるような気がしている。
*4:これは全く日本に限った話ではないので、誰が悪い、どこどこの省庁が悪い、等々責めるような話でも全くないとは思うのであるが・・・。