まだまだ、本領はこれから。

ここ数年異常なまでの制球難で、まともに投げられない状況が続いていた末に、今年は開幕前から、不本意な形で注目を浴びることになってしまったタイガースの背番号19、藤浪晋太郎投手。

シーズンが始まってからは、7月末にようやく一軍に合流して先発で好投。だが、毎試合好投するものの勝ち星には恵まれず4連敗、と、相変わらずハラハラさせられる状況だった。

それがようやく、今日のヤクルト戦で7回途中まで4失点と粘りの力投。そして、打線の援護に恵まれなければ自ら火を付ける、とばかりに先制のタイムリーまで放ち、前の読売との3連戦で湿りっぱなしだった打線を蘇らせる。

まさに千両役者の活躍で、2018年9月以来、実に692日ぶりの白星を手に入れることになった。

藤浪投手と言えば、大阪桐蔭高校時代の”超高校級の安定感”のインパクトが未だに残っている人は多いだろうし、自分もそう。

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だから、まさに8年越しでこの季節にニュースの見出しになる、というのはやっぱり嬉しいものである。

もちろん、既に海の向こうへ羽ばたいてしまった同期の大谷翔平選手のニュースに触れるたび、寂しい思いに駆られるのは確か。

高校時代の実績はもちろんのこと、プロ入り後も”二刀流”の話題が先行していたライバルを横目に、1年目から「江夏以来」の高卒2桁勝利を挙げたのは藤浪投手の方だったし*1、大谷選手が飛躍的な成長を遂げる中でも、3年目のシーズンまでは、投手としてはほぼ互角、という実績を残していた。

不運だったのは、翌4年目から監督が変わってしまったこと。そしてそれとともに、チームの勢いも、的確な投手起用によるサポートも失われてしまったことだろう。

14勝を挙げ、奪三振王のタイトルも獲得した3年目のシーズンには既に顕在化していた四死球連発の悪癖は年を追うごとに酷くなり、やれイップスだ、やれ技術上の問題だ、等々といった外野のやかましい声が飛び交う中、「藤浪どう直す?」だけで飲み会が成立したのは2018年の途中くらいまで。

そして、さらに監督が変わった昨年は、大きな故障があったわけでもないのに一軍登板わずか1試合、という屈辱的なシーズンになってしまった。

久々にメディアで名前を聞くようになったと思ったら「新型コロナ感染者」。自ら氏名公表を積極的に求めた姿勢は評価されたが、後から判明した経緯は、あの時期にリスクを顧みず”お食事会”という決して褒められたものではなく、それでも「無事退院できたら、今年は別人のように蘇った姿を見せてくれるかもしれない」と高まったファンの期待は、練習遅刻&二軍落ち騒動ですっかり吹き飛ぶ。

今回、堂々の勝利を挙げたとはいえ、いつもの年ならもうシーズンの終わりかけに近づいているような時期になってようやく、だから、手放しで喜ぶことも憚られる。

だが・・・


自分はそれでも、今シーズンのここまでの彼のピッチングと、粘り強くピンチを乗り越えた今日の力投には、「完全復活」の予兆があると信じて疑わない。

クライマックスシリーズのない今年のセ・リーグで今の読売巨人軍の隙のない戦いぶりを見る限り、タイガースが先のステージに進む可能性はおそらく限りなく低いだろうが、まだ折り返し地点にも達していない2020年シーズン、ケガにさえ見舞われなければ藤浪投手の登板機会もあと10試合以上は確実にあるわけで、何とか今年は5年ぶりの2桁勝利を!という願いも決して無謀なものではないと自分は思っているし、ここから先、全部勝っても不思議ではないくらいの球威と才能の片りんは既に見せてくれているだけに、そろそろ、より先のステージで活躍できるような変化を遂げても良い頃だよな、と思ったりもしている。

今日の「1勝」に関しては、この変則的なシーズンが終わった時にあれがターニングポイントだった、と振り返られるようなものなのか、それともただのあだ花になってしまうのか、今は予測しようもないところだけど、今はとにかく、「彼の力はこんなものじゃない」という直感的な見立てだけを信じて、「球場の外」から暖かい声援を送れればな、と願ってやまないのである。

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