「伊勢湾台風以来」という触れ込みで、まだ遠い南の海にいる頃から最大級の警戒をもって報じられてきた台風10号。
週末から今日にかけて、直撃が予想された九州地方だけでなく全国各地に緊張が走った最初の一撃は去った。
もちろん、誰もが全く無傷で済んだわけではない。
今回も亡くなられた方はいらっしゃるし、家屋の倒壊被害も報告されている。
避難を迫られた世帯や、停電に見舞われた世帯。鉄道の終日運休で予定の大きな変更を余儀なくされた人々も決して少なくなかったことだろう。
だが、描かれていた最悪シナリオと比較すれば、”辛うじて難を逃れた”という表現の方がしっくりくるのは確かである。
ここ数年、毎年のように襲ってくるこの気候の悪戯に翻弄されてきた日本列島だったが、万全の守りを固めた時は、僅かな運まで味方に付けて何とか乗り切るのがこの不思議の国日本、だったりするわけで、春先からそうでなくても疲弊している各地域にもたらされた打撃が最小限に留められた、ということに、今回は遠いところで見守っていた自分もホッと胸をなでおろしているところである。
とはいえ、遅れてきた夏がまだまだ猛威を振るっている今の状況を考えると、この先1か月、2か月、再びの台風襲来と無縁ではいられない、というのも分かり切ったこと。
そして、最初の一撃を乗り切った後の2発目、3発目にこそリスクがある、ということは、未だ鎮圧し切れていない感染症の流行経緯を見ても十分理解できることである。
昨年秋の惨事を振り返れば分かる通り、こと台風に関しては、乗り切るための経験値を備えた沖縄、九州エリアの人々と、”稀に来る一発”に泣かされるそれ以外の、特に、自分も含めた東日本エリアの人々とでは全く”免疫”の付き方が異なる*1、というのが実態なわけで、何度か「危機」を乗り切った後に突如ルートを外れて東日本を直撃する一発に泣かされる、というパターンも十分想定しておかないと、再び二の轍、三の轍を踏むことにもなりかねない。
幸か不幸か、少なくとも関東エリアではこの半年の間に社会が大きな進化を遂げていて、特にリモート勤務の対応インフラが多くの会社で整った、という状況もあるから、万が一、今年台風が首都圏を直撃するようなことになったとしても、昨年までのように、通勤手段の確保に右往左往させられる人々の数はかなり減るはず。
風が吹けば鉄柱が倒れ、屋根や看板が飛ばされることに変わりはないし、大雨が降れば、至るところで川が氾濫を起こして深刻な水害につながりかねないことにも変わりはない。
そういった事実に変わりはないとしても、”不幸の産物”だと思われていた新型コロナ禍下でのBCP体制を自然災害への対応においても生かすことができるなら、それは不幸中の幸いともいえるわけで、(決して台風の直撃を望むわけではないが)こうやって社会はリスクに対して強靭になっていくのだぞ、ということを、ちょっとでも見せられる秋であってほしいな、と思わずにはいられないのである。