何がフェイクで、何が真実からすら分からなくなりそうなカオス。

前日の「市場ストップ」の混乱も無事一日で収まり、当然ながら日経平均は朝から順調に上げ。

「2日の日経平均株価は前日(9月30日終値を10月1日終値と認定)と比べ109円68銭高い2万3294円80銭で始まった上げ幅は一時前日比180円高に達したが、その後はやや失速。午後1時時点では2万3264円93銭。」(日本経済新聞2020年10月2日付夕刊・第1面、強調筆者、以下同じ。)

失業率の悪化だとか、部分部分で見れば芳しくないニュースもあって、銘柄ごとの上げ下げにもそれなりのバラつきはあったのだが、昼飯を食べながらチラと自分のポートフォリオを眺めた時の感覚では、9月最終日の急落からはちょっとは巻き返して今週を終えるのだろうな・・・という少々楽観的な気分でもあった。

それが・・・である。

東京証券取引所で株式などの売買を再開した2日、日経平均株価前日(9月30日終値を10月1日終値と認定)と比べ155円22銭(0.67%)安い2万3029円90銭で終えた。8月28日以来の安値水準となった。」(日本経済新聞電子版2020年10月2日 16:04配信)

一時230円安、上げて下げて400円以上の値幅で動くジェットコースター。

昨日の時点で唯一当たるはずだった予測が外れた最大の原因が、

「トランプ米大統領が日本時間2日午後、ツイッター新型コロナウイルスに感染したと明らかにした。」(同上)

という今日最大のサプライズだったことは間違いない。

これまで海の向こうの”劇場”を眺めてきた感覚で言えば、感染症が広がり始めた頃の”コロナはただの風邪”と言わんばかりの彼らの派手なパフォーマンスを考えると、ここまで感染していなかったことの方が不思議なわけで、既にホワイトハウス内での罹患者の情報も出ていた状況では、「米国大統領が感染した」ということ自体にはそこまでの驚きはないのだが、問題はこの”図ったかのような罹患タイミング”である。

一般紙の報道等を見ると、「大統領選を目前に控えたトランプ氏に暗雲」といった論調の記事が目立つのだが、既に一部で呟きが広まっているような、

「これで快癒して戻ってきたら、トランプ圧勝確定だろ。」

という”見立て”の方が、自分にもしっくり受け入れられる。

先日のテレビ討論会で自ら場を壊しに行くようなアクションを仕掛け、それでも支持率はまだ目に見える形では戻ってきていない、という状況を考えると、今回の「感染」は”干天の慈雨”のようなもので、こういうベタベタなヒーロー活劇が好きな層に支えられているのが今の米国の政権だということを考えても、状況が有利になることはあっても、不利になることはない、というのが素直な見方だと言えるだろう*1

で、そう考えていくと、次に出てくるのは、

「本当にトランプ大統領夫妻は新型コロナにかかっているのか?」

という疑惑である。

常識的に考えれば、国民に選ばれた最高指導者の病状を「悪い方に」偽って発表する、などということは一般的な民主主義国家ではあり得ないことなのだが*2、ここまでの状況と大統領選までの日数を考慮すると、「まさにこのタイミングしかない」というのが今回の「感染公表」だったわけで、これで第2回のテレビ討論会はキャンセル、快癒して戻ってきたところで最後のテレビ討論会をやって、

” I'm Back!”

というだけで、現役大統領の優勢は確定。

そもそも、多くの国民の投票行動が固まるこの大事な時期に、政策論争でも資質論争でもなく、連日、自身の病状報道だけでニュースを埋め尽くすことができるのだから、それだけでこれまでの状況を一変させることができるわけだ*3

ということで、何が本当で何が嘘かも良く分からないカオス、1か月後、詐病疑惑を指摘するメディアに「フェイクニュースだ!」と大統領が指立てて叫ぶ姿まで妄想してしまいそうになるのが今の状況、ということになるだろうか*4


正直、ワシントンDCから10,000キロ以上離れた国の人間にとっては、現職が勝とうが民主党候補が勝とうが大した違いはないわけだが、今回のかの国の選挙が、4年前の「波乱」と相前後して世界中に蔓延し続けている「極端な刺激」を求める風潮を一歩食い止めるきっかけになってくれれば・・・というのが、今のささやかな願い。

「変化」は、明日を今日よりも良くするための手段に過ぎず、それ自体が目的ではない。

そして、そんな当たり前のことに気づく賢慮が、一人でも多くの人々に広まることを願ってやまない*5

*1:これが日本だと、「まがりなりにも政権トップにある者が新型コロナに感染するなんて・・・という非難が殺到し、なぜか治療中の「患者」が謝罪しなければならなくなる、ということも十分あり得るのだが、「コロナを恐れるな」スタンスのトランプ支持者はもちろん、中立的な層に目を移しても、「謝罪」する感覚自体がおそらく全く理解されないだろうと思う。そしてこの点においては、自分も日本以外の国々の感覚の方が数段真っ当だと思っている。

*2:一党独裁系の国だと、病気でなくても病気にされてしまう、ということはしばしばあるけれども・・・。

*3:加えて、副大統領候補同士の討論会で、ペンス副大統領がカマラ・ハリス候補を圧倒するようなことになれば、ほぼほぼ勝敗は決する。

*4:そしてどちらが勝つにしても「先が見えない」以上、理に敏い投資家が売りを仕掛けるのも当然のことだよな・・・と。

*5:そしていうまでもなく、今米国で起きていることは決して対岸の火事ではない、ということも添えておく。

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