しばらく「無観客」を貫き通してきた中央競馬が、遂に7か月半ぶりに一般入場再開、という政策に舵を切った。
既に度々ご紹介しているとおり、「馬券の売上」という点ではコロナ前に全く見劣りしない、というかむしろ上回っている状況でもあえてこのタイミングで「入場再開」に舵を切ったのは、他のスポーツ観戦との比較や人が動き始めている「Go To」に合わせる、ということだったのだろうか。
いずれにしても、長らく一般入場者には閉ざされていた競馬場の入場ゲートは開かれ、三場合計1,651人がその中に足を踏み入れることになった。
普通に考えて、どの競馬場も平時とは”桁が2つ”食い違うくらいの入場者数でしかなく、また「入場できるのは申込者1名のみ」「スタンドでの観戦はできるが、石畳の上は立ち入れない。」等々の様々な制約がある状況ではなかなか気軽に足を運ぶわけにはいかないだろうが、ここは実にしたたかな戦略を取り続けているJRAのこと、この先徐々に人の流れが回復する中で、年末の有馬記念までにはそれまでの7~8分くらいの入りくらいにまでは入場者数を回復させ、ファンの裾野も広がったところで来年に向けてダッシュ!というムードを演出してくれるのではないか、と微かに期待しているところである。
で、節目の日となった10日からは、東京、京都に場を移し、新潟開催も加わって、久々に慌ただしい三場開催になったのだが、あいにく東京と京都では、初っ端から台風の影響で大雨が降り、馬場が”湿る”どころか、土曜日のダートなどはほとんど水たまりのようになった状態でレースが行われることに。
その影響か、土曜日東京メインの2歳出世レース、サウジアラビアロイヤルカップでは、馬場が荒れればバゴ産駒、と言わんばかりに、ステラヴェローチェが猛烈な脚で差し切って圧勝。1番人気だったモーリス産駒のインフィナイト以下は、大きな差を付けられることになったし、2歳戦ではキングカメハメハの産駒が東西合わせて3勝、と、これまでとは少し違う傾向となり、特に関東では前開催の中山に続いて傾向が読みづらい状況だっただけに、予想するにも一苦労。
これで翌日のメインレースまで同じ傾向が続いたらどうなるだろう・・・という思いも一瞬頭をよぎったのだが、さすがにそれは杞憂だった。
ここまで負けたレースは皐月賞とダービーの2つのみ。コントレイルにこそ一度も勝てていないものの他の馬には一切負けたことがない、という3歳No.2牡馬は、宿敵コントレイルがいなくなった古馬混合戦で、これまでのうっ憤を晴らすかのような爆発的勝利を飾った。
多士済々だった京都大賞典に比べると、ちょっと他のメンバーが弱すぎたのでは?という突っ込みもあるところだが′*1、それでも勝ちは勝ちだし、今日のサリオスのパフォーマンスであれば、多少相手が強化されたとしても、大抵の馬は退けることができたはずだ。
番組編成どおりなら、コントレイルが菊花賞を走った後に行われるのが、サリオスの次のレース。
おそらくは「三冠」の興奮が冷めやらぬ中行われるレースだと予測するが、もしそこで、”シルバーコレクター”だったこの馬が古馬を跳ねのけて大きなタイトルを手にするようなことになれば、ここで一気に主役の座を奪い返すことになったとしても不思議ではない。
果たしてどういう結果になるかは神のみぞ知る領域。
ただ、今、まさに競馬界の歴史に残るような出来事が起きようとしている、という事実に思いを馳せるなら、これまでは「神」でもなければグリーンチャンネルを通じて眺めるしかなかった走る彼らの姿を、一般の人々も目の前で見ることができるようになった、というのは、やはり素晴らしいことだというほかない。
そして、この先、中央競馬が不運なアクシデントに見舞われることなく残り3か月の開催を予定通り遂行し、より多くの人たちが段階的な制限緩和の波に乗り、競馬場に足を運んだ時に彼/彼女たちが今年成し遂げられようとしている様々な「偉業」に立ち会うことができるようになることを今は心から願っている。
元々この半年以上、「無観客でいいじゃん」と思って淡々と眺めていた自分ですら、思い立ってその場に足を運びたくなるようなドラマが、今まさに起きようとしているのだから・・・。