悲しき訃報と蘇る美しい思い出。

結局、朝から晩まで仕事に追われていた感のあるこの週末。

貴重な楽しみになるはずだった36レース×2も、いつもながら開催替わりの1週目は鬼門。

中山でも中京でも展開を読み切れず、午前中は狙った複勝・ワイドがことごとくスレスレの”4着祭り”、午後になって本命サイドに切り替えるとそれがまた見事に期待を裏切る。

そして、日曜日のメインでは、「今週も」という期待の下で登場した昨年の覇者、今年も既に交流GⅠでビッグタイトルを2つ獲り、国内では依然無敗を続けていたクリソベリルが、まさかの大コケ・・・ということで、散々なことになってしまった。

いくら名手・戸崎騎手が鞍上にいたとはいえ、大井や川崎ならともかく、中央では1年半以上勝ち星から遠ざかっていたチュウワウィザードがここで勝つ、なんてことを予想できるほど自分は交流重賞組シンパではないし*1、ましてやいくらコースとの相性が良いからといって、もう7歳のゴールドドリームや、今年ボロボロだったインティを追いかけられるほど、ダートの世界に思い入れがあるわけでもない。

気が付けば、2着、3着は昨年のまま、優勝馬のところだけをクリソベリルからチュウワウィザードに置き換えれば良かっただけじゃん、と言われてもね・・・*2という感じである。

唯一朗報があるとしたら、これまで牝馬にコテンパンにやられていた古馬戦線で、久しぶりに牡馬が勝った!ということくらいだったのだが、よく見たら今日のレースには牝馬が1頭も出ていないではないか!ということで、既に残る一戦・有馬記念でも牝馬同士の争いになる可能性が高い状況では、一矢報いてもたったの3頭、という現実に、改めて目を覆いたくなるばかり*3

(太字は牝馬
フェブラリーステークス モズアスコット 牡6
高松宮記念 モズスーパーフレア 牝5
大阪杯 ラッキーライラック 牝5
天皇賞(春) フィエールマン 牡5
ヴィクトリアマイル アーモンドアイ 牝5
安田記念 グランアレグリア 牝4
宝塚記念  クロノジェネシス 牝4
スプリンターズステークス グランアレグリア 牝4
天皇賞(秋)  アーモンドアイ 牝5
エリザベス女王杯 ラッキーライラック 牝5
マイルCS グランアレグリア 牝4
ジャパンC アーモンドアイ 牝5
チャンピオンズC チュウワウィザード 牡5

・・・で、そんな悲しみを輪をかけて、ということになってしまったのが、今日の夕方に飛び込んできたニュースだった。

www.jra.go.jp

24戦8勝、GⅠ3勝を誇る名牝、スイープトウショウ逝去の報。


このブログを開設当時からご覧いただいている読者の方であれば、自分がどれだけ彼女のあのじれったい走りを愛していたか、きっと覚えていただいているはずだ。

阪神JF桜花賞と期待を裏切った後に、距離不安を跳ねのけて意地で食い込んだオークスの2着、それをばねに掴んだ最後の一冠。

翌年、10番人気で安田記念2着に飛び込んでアッと言わせた後、宝塚記念に向かった時は、イクノディクタスの再来か!と胸躍ったものだが*4、彼女の凄かったところは、そこでハーツクライゼンノロブロイ、といった後の種牡馬たちを相手に勝ちきってしまったこと。

元々自分は逃げ馬でも追い込み馬でも、”素直に走れないけど、時にとんでもない結果を残す”タイプの馬を愛してやまないわけで、かくして自分は、そこから2年以上、それまで以上の熱量で、彼女が再び「奇跡の脚」を発揮することを信じて、ひたすら追いかけ続けることとなったのである。

おそらく、同じようなファンは多かったのだろう。続く毎日王冠以降、彼女は出走したレースで、脚質的に明らかに合わない有馬記念も含め、全て5番人気以内に入っている*5

だが、そんな人気先行の馬券は、かなりの確率で期待を裏切った*6

上がり3ハロンの脚はコンスタントに33秒台、時に32秒台。最後の直線では周りの馬が止まって見えるくらいの切れ味は常に見せていた・・・が、そこに行くまでが問題。

スタートが悪くて道中常にしんがりにいる、というタイプの馬ではなく、むしろ好スタートから池添騎手がうまく立ち回って比較的好位に付けていたレースも結構あったりしたのに、4コーナーを回って「さぁ行くぞ!」というタイミングでエンジンがかからず立ち遅れる。

前年覇者の冠を引っ提げて臨みながら、3歳馬2頭に屈したエリザベス女王杯*7などは自分も京都のスタンドで眺めていたのだが、本当にじれったさ全開で、道中は同じようなポジションを走っていたカワカミプリンセスの器用な進出っぷりが鮮やかだっただけになおさらスイープの不器用さが際立ってしまったようなところもあった。

現役を6歳まで引っ張り、臨んだ最後のエリザベス女王杯も、ダイワスカーレットフサイチパンドラに一歩置いていかれる形での3着。

まだ牝馬より牡馬の方が強い、と当たり前のように思われていた時代に、牡馬混合戦を含むGⅠ3勝の結果を残したのだから、間違いなく名牝ではあるのだけど、残した数字以上に「惜しい強さ」を感じさせる馬だった。だから、その後登場した、より強烈な実績を残す牝馬たちの前で、彼女の名前が霞んでしまうのは、ちょっと残念な気もする。

繁殖馬として残したJRA登録馬は7頭。うち3頭は現役で活躍していて、スイーズドリームス(父・ディープインパクト)などは6歳になった今年2勝を挙げて条件戦の壁を突破したし、4歳牝馬のスイープセレリタス(父・ハーツクライ)もオープン入りを果たした。そして、いずれも嬉しいことに、母譲りの強烈な差し脚をもっている*8

同時期にしのぎを削ったフサイチパンドラが、無敵の9冠馬を生み出したことを考えると、ここでも”あと一歩”感は否めないのだが、それでもトウショウ一族の華麗な歴史に”ミスプロ系”という外来の血を載せた貴重な配合の馬として、存在感を発揮していたことは間違いないから、現役の時と同様に、あと1年でも2年でも、現役繁殖馬として活躍してくれていたら・・・と思ってしまったのは自分だけだろうか。

人と比べればあまりに短すぎた命。とはいえ、彼女が走る目の前で、単勝馬券を握りしめながら見守っていた時から、既に10年以上の歳月が流れている、という現実の前に、いろいろと考えさせられることも多かったわけだが、今はせめて彼女が遺した子供たちが少しでも大きな舞台で活躍してくれることを願うのみ。そして世代がさらに重なり、いろんなことを忘れかけた頃、大レースを制した馬の血統表の隅の方に偶然彼女の名前を見つけて、「ああ・・・」と思う日が来るんだろうな、ということも想像しながら、今は往時の記憶とともに、冥福を祈るのみである。

※以下、かつてのエントリーの一部をご笑覧ください・・・。

k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

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*1:どうもダートの世界は、中央で勝ち星を重ねる馬のファン層と、地方で勝ち星を重ねる馬のファン層が大きく分かれていて、お互いがネット掲示板で相手を蹴飛ばして…なんてこともあったりするので、予想も立てにくいことこの上なし、である。

*2:これもダートのレースでは良くある話なので、要警戒ではあるのだが、直近のレースデータ重視、という鉄則を守っている限り、この手の幸運は味わえそうもない。

*3:一応、フィエールマンには最後に一発、の期待もかかるところだが、彼が勝ったところでようやく4勝。牝馬10勝、牝馬限定戦を除いても8勝、というダブルスコアの数字の前ではなすすべのない一年だった、ということになりそうである。

*4:イクノディクタスは旧7歳時に14番人気で安田記念2着であっと言わせ、続く宝塚記念でも8番人気ながらメジロマックイーンの2着に飛び込んで名を馳せた。

*5:5歳秋の天皇賞で1番人気になった時は、さすがに人気になり過ぎだろう、と思ったものだが、それでも買わざるをえなかった。元々デビューから4歳の春までもずっと高い人気を誇っていた馬で、楽勝だろうと思われたオープンの都大路Sで脚を余して5着に敗れる失態を演じていなければ、安田記念でももっと人気になっていてよかった馬なのだ・・・。

*6:しかも確か当時はまだネット投票の会員になるかならないかくらいの時期だったから、馬券に絡んだ時に限って買っていない、ということも良くあった。

*7:実際の着順は、カワカミプリンセス降着により2着に繰り上がってはいるが、レースでは完敗だった。

*8:他に、今2歳のドゥラメンテ産駒のクリーンスイープという牝馬もいて、彼女こそがクラシックも狙える最終兵器だ!、というのが自分の見立てだったりもする。

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