純白の女王に託したい希望。

2021年もいよいよクラシックシーズン到来。

そして、その第1弾、第81回桜花賞は、「これでもか!」というくらいのドラマ仕立ての決着となった。

レース前の予想通り、人気を分けたのは昨年の阪神ジュヴェナイルフィリーズの1,2着馬。

話題性では常に先行していたのは、白毛馬・ソダシだったが、蓋を開けてみれば阪神JFでは2着だったサトノレイナス単勝人気では上回る。

サトノフラッグの全妹、という良血、鞍上はルメール騎手、しかも差し脚質に「大外」の馬番がきれいにハマっていたから、抜け目のないファンであれば、「ぬいぐるみはソダシを買うけど、馬券はレイナスというのが常識的な選択だったのかもしれない。

かくいう自分も、昨年の時点では散々ソダシを持ち上げておきながら、「2頭出しなら人気薄」の鉄則に忠実に従って、金子真人HDの2番手であり、かつ国枝栄厩舎の2番手でもあるアカイトリノムスメに完全に目を奪われていた*1

だが、ソダシは、

多くのファンが想像していたよりも遥かに強い馬

だった。

ゲートを出て勢いよく先頭に立とうか、という勢いで飛び出していったときは、「テレビ馬」*2になってしまいそうな気配もあって、ちょっと心配になったのだが、最初はモーリス産駒のストゥーティが、さらに名手・横山典弘騎手をもってしても”抑える競馬”で我慢させることができなかった同血統のメイケイエールが途中から勢いよく先導する展開になって、俄然落ち着きが良くなる。

そして、最後の直線、きれいに前が開けて力強く抜け出した瞬間、彼女の勝利はほぼ確実なものとなる。

昨年の夏からずっと見てきたが、この馬は、派手に切れる脚こそないものの、勝負根性はピカ一で、並ばれても競り負けないし、追い込んでくる馬が捕まえようとしても、「あとちょっとの差」が永遠に縮まらない。

今回も発揮されたのは、まさにその真骨頂で、結局、直線で早々に掴んだリードを最後まで失わないまま、彼女はゴールを駆け抜けた。

しかも、高速決着では分が悪い、という見立てだったにもかかわらず、「1分31秒1」という驚異的なコースレコードとともに、である*3

結果だけ見れば、予定調和的に追い込んできたサトノレイナス(上がりの脚はなんと32秒9)が「クビ差」まで迫ってきていたのだが、感覚としては、それ以上の、決して埋められない差があったように自分には見えた。

ここまで馬場がパンパンになっていなければ、後続馬の差しも、もう少し気持ちよく決まった可能性はある。

でも、先週まで何週か続けて週末に降った雨を今週に限っては呼び込まなかった、というのもソダシが持っていた力の一つのような気がして、何より、ラジオNIKKEIの実況アナウンサーが「けがれなき純白!」と叫んだ美しい馬体を泥で汚さずに済んだ、ということだけ見ても、

呼び込む力が違う馬

だったのだなぁ、と思わずにはいられなかったし、この日の走りを見る限り、「オークスに行っても十分通用する」(よって、2年連続無敗の3冠制覇までやってくれる可能性も十分にある)というのが自分の結論である。

シラユキヒメから繋がる「白毛」の牝馬たちはもちろんのこと、それに掛け合わせたサイアー(クロフネ)、ブルードメアサイアーキングカメハメハ)まで自分の所有馬で固める、という”リアル・ウイニングポストを成し遂げた金子オーナーに対しては心の底から「羨ましい」という言葉しか出てこない。

また、堅実に勝ち星を積み上げていながらクラシックには無縁、今週だってソダシが出ていなければおそらく新潟で騎乗していただろう、という吉田隼人騎手を乗せ続け、18年目にして待望のクラシック初制覇、という偉業を成し遂げさせた厩舎(須貝尚介厩舎)にも、称賛を送るほかない*4

いずれにしても、まだまだこの先、楽しめる要素は多そうだな、ということだけは、これまでの経験に照らしても強調しておきたい。


なお、昨年の暮れに阪神JFをソダシが制した時、自分はこれが、これまでにない「吉兆」につながるはず、と勝手に思っていた。

k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

だが、そんな「吉兆」に触れた昨年末のエントリーをアップロードした時期は、まさに刻一刻と、新型コロナ感染判明者数の数字が増え続けていた時期と重なり、彼女の勝利の数週間後にもたらされたのは、「2度目の緊急事態宣言」という悪夢だった。

今の状況も何となく当時と似ているだけに、この勝利が次に運んで来るものは何なのか、戦々恐々としているところではあるのだが、

彼女がこのまま勝ち続けて、秋に最後の一冠をつかみ取った時には、あらゆる災厄が去り、地上に平和が戻るはず・・・。

そう信じて時を待ちたい。

*1:この馬に関しては、母・アパパネが、あれだけ三冠レースでもその後の牝馬GⅠでも名勝負を演じていたにもかかわらず、今ひとつ”地味”な存在に留まってしまっていた気の毒さもあって(ささやかな三冠馬。 - 企業法務戦士の雑感 ~Season2~のエントリーも参照)、どうしても応援せずにはいられなかったのだ。

*2:大レースで先頭に立って中継では一番長い時間映り続けているものの、最後の直線に差し掛かる前に事実上レースを終えてしまう馬。昔はこういうのが良くいた。

*3:最初表示された数字を見た時、「1分33秒1」の間違いだろう、と思ってしまうくらい、これまでの3歳牝馬戦の常識ではありえないタイムだったような気がする。

*4:もちろん、それにきっちりと応え続けている騎手の側にも、同じくらいの称賛が向けられて然るべき、なのではあるが・・・。

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