何度繰り返されても、最後に判断するのは自分、という話。

今年の初めに出た2回目の緊急事態宣言が、何となく”自然消滅”のような空気の中で終わってしまった時に微かに感じた”嫌な予感”。

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そして、自分には全く縁のなかった「花見」の季節を超え、事態は想定を超えて悪化した。

緊急事態宣言、3度目。

出る出る、というムードになってからも、非常に緩かった「2度目」の宣言の感覚が染みついていたのか、自分の周辺では「まぁ、出たところで大して変わらんでしょう・・・」という楽観ムードが漂っていたのだが、蓋を開けてみたら、

・大規模商業施設は一部売り場を除いて閉鎖
酒類を提供する店は休業

等々、発表された中身は巷の想定を大きく超えるものだった。

確かに、職場の飲み会やら学生の新歓行事やらで大人数で店に押しかける集団が前回の緊急事態宣言の終わりくらいから街中に目立つようになって、リスクを考えれば店に足を踏み入れることすら憚られる、という店もあったのは事実*1で、最低限のリスク評価もできないような輩が世の中に一定数いる(しかも、社会でそれなりの地位にいる人々までおかしな”経済救済思想”に取りつかれてしまっていたりもするから余計にたちが悪い)以上、「劇薬」を投じたくなる為政者の気持ちも分からなくはない。

ただ、1年前からずっと言い続けていることではあるのだが、

感染症の流行を抑えるために必要なのは、多数人が接触して飛沫を飛ばしあう機会を減らすことであって、「酒を飲ませない」ことでも、「買い物をさせない」ことでもないのでは・・・?」

という素朴な疑問は、「3度目」をもってしても、未だに消えるどころかますます強まっている印象もある*2

自由主義国家を標榜する国としては、「個々人の行動」をストレートに制約する(そして違反したものに何らかの制裁を課す)ことに抵抗感が強く、制度設計も難しい、という事情があるのは分かるし*3、そもそもこれだけ長期間コロナ禍が続いているのにもかかわらず、未だに飲食店も小売店も「団体様仕様」から脱却できていなかったことが、「劇薬」の直撃を受ける結果につながっていることも看過されるべきではない*4

ただ、行動の「本質」的なところに十分フォーカスされないまま、「場の封鎖」というドラスティックなやり方だけ先行させても、結局、この先、同じことの繰り返しになることは避けられないわけで、加えて「既に50万人以上の感染者のデータの蓄積がありながら、リスク回避のための知見が分析可能なデータとして公表されていない」*5ことが、目下のコロナ禍との戦いを終わりなきものにしているような気がする。

なお、官邸サイドは「短期決戦」を強調していたようだが、そうでなくてもその手の作戦が苦手な国民性*6に加え、今回のような地域的に中途半端な「宣言」発出をしてしまうと、

「GWが平年以上に豪快な日本列島民族大移動の季節になる!!」

という悪夢のような事態も十分想定しうる*7

一国の宰相が何を呟こうが、どこかの知事が泣こうがわめこうが、リスクを見極めて行動するのは一人ひとりの人間だから、ここからの20日間弱、またしても「試される」時間になるわけだが、できることなら1年前に感じたささやかな希望をもう一度感じられるゴールデンウィークになることを、今は心から願っている。

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*1:そして自分の週末のささやかな楽しみは度々害された。

*2:ましてや、本質的に静寂が求められる映画鑑賞や美術鑑賞の場まで休業させる、というのだから、開いた口が塞がらない・・・。

*3:「行動変容」という言葉にすら拒否感を示す人々がいる中で(自分もこの言葉自体は好きではないが)、行動自体を規制する、なんてことがこの国でできるはずもないだろう、と思ってしまう。一人ひとりがリスクを認識して振る舞えば必然的にそうなるはずの状態に世の中がシンプルに移行できない、ということには、社会としての未成熟さを感じざるを得ないのだが、今それを言ったところで急に何かを変えられるわけでもない。

*4:昨年末風雲急を告げていた時期にもかかわらず「年末の会社の忘年会需要がなくなると・・・」みたいなことを言っていた飲食店関係者のコメントにはため息しかなかった。前にも書いたが、最初の緊急事態宣言の間に店舗内レイアウトをガラッと変えて、個人、少人数向け専門のようにしてしまった店もあるし、この一年で撤退した居酒屋の後に入ってきた飲食店なども、その辺はかなり工夫してやっている。一部の”昔ながら”の店が、環境に対応する努力をしてきた店の売上げまで吹っ飛ばそうとしていることに対しては、もう少し厳しい目が向けられるべきだと思う。

*5:医療機関の受入れ態勢が増強されていないことを非難することも多いのだが、個人的には、これまでの感染者の感染経路、感染したと疑われる状況等に関する情報が断片的にしか提供されておらず、未だに抽象的な「三密」広報の域を脱していない、ということに最大の問題があるような気がする。聞き取った55万人分の感染者の発症前の行動履歴を統計化して公表するだけでも、できることはだいぶ違ってくるのは間違いないのに。

*6:歴史を振り返っても、「神風」に助けられたような場合を除き、諸々の場面でダメージを引きずることはあっても、計画どおり短期で終結させるということができなかったエピソードが目立つ国ではある。

*7:家族単位で旅行に行くくらいなら、まぁ問題はないと思うのだが、宣言対象外地域の実家に戻って親戚集まって、ということになると、その後どうなるかは容易に想像が付くところだったりする。

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