日本では春のGⅠレースの谷間の週。
クラシック第2弾に向けたトライアルレースは行われているものの、そこまで大きなインパクトがあったわけでもなく、話題になったのは「一体何やらかしたんだ!」って突っ込みたくなるような岩田康誠騎手の「一発騎乗停止」くらい。
乗り替わった古川吉洋騎手が、2年ぶりに復活したケイデンスコールで2年ぶりに重賞制覇、というめでたい話もあったが、どちらかと言えば、淡々と進んだ開催だったし、今、この国が置かれている状況に鑑みれば、
「緊急事態宣言が出ようが出まいが、観客がいようがいまいが、決して乱されることなく自分たちのコンテンツを提供し続ける」
という最強のDXイベント、日本の中央競馬の素晴らしさこそが際立った週末、というべきだったのかもしれない。
で、そんな中、ちょっと海を越えたところで行われていたのが「2021香港チャンピオンズデー」である。
ドバイ以来の海外遠征をめぐる混乱の中、日本馬不在で行われたのが昨年のこのイベントだったのだが、今年は同じコロナ禍の中でもきっちり結果を出しているのが日本勢。
そして、この香港の春のビッグイベントでも、日本勢がもっとも得意とする芝中距離の舞台で遠征馬たちは圧倒的な力の差を見せつけた。
クイーンエリザベスⅡ世カップ。
4年前の香港カップ馬、8歳のタイムワープが引っ張る展開の中、ラヴズオンリーユーとデアリングタクトが難なく先行。そして直線に向くなり、外から襲い掛かるラヴズオンリーユーと、内側からジワジワ進出するデアリングタクトが一歩抜け出す。
ラヴズオンリーユーの勢いの前に、デアリングタクトがいつものじり脚で厳しいかな・・・となったところで、グローリーヴェイズが大外から一気に脚を伸ばして差してくる・・・。
ということで、結果は、日本勢の1,2,3。
加えて最後まであまり存在感はなかったものの、4着にもキセキが入って、1~4着独占。後続には3馬身・・・。
かくして、「ザ・ジャパンデー」は見事に完結したのである。
日本馬上位独占といっても、松山弘平騎手が騎乗したデアリングタクトを除けば、鞍上にいたのは現地の騎手たち。
どんなに近い国でも、「人」が動けば隔離を余儀なくされる、という状況で、上位に入った3頭が、いずれも「馬主」に気を遣わなくてよい小口系クラブ所属馬だった*1というのも、ただの偶然とは思えない。
ただそれでも、混乱の極みにあるこの国が、まだ世界に誇れるものを持っている、ということを改めて知ることができた、という点で、この完勝劇は嬉しいニュースだったし、「レースが7頭立て」であることも忘れて糠喜びした恥ずかしいエピソード*2も、そんな偉業の前ではどうでもよくなる。
苦しい時こそ、健気に走る馬が日本を救う。
自分は、2011年のドバイの奇跡が、2021年、100回目を迎えるロンシャンのビッグレースで再現されると信じてやまないし、今日のこの三つ巴の激闘を見て、これがその序章だと確信した次第である。
あとは、”実りの秋”が来る前に、失うものが少しでも少なくて済むように・・・。
今はそれだけを願っている。