見えてきた今年のトレンド。

毎度のことではあるが、この一週間も話題は「コロナ」であふれていた。

思えば1年ほど前の”マスク”に始まって、”アプリ”から目下の話題の”ワクチン”まで、「何でそうなるの・・・!!」という突っ込みを入れたくなるような、これまで世界屈指の先進国と思われていた国の出来事とは思えないような話が続いてげんなりしているのだが、今でこそ「成功例」のように言われている米国、英国にしても、今の状態に至るまでの間に、この国とは比較にならないほどの犠牲を払って、現地のメディアからは散々叩かれていたわけで、結局、

「現時点で対策に成功している、と言えるような民主主義国家は存在しない。」

というのが自分の認識で、

「対策に成功した、と慢心した次の瞬間には再び悲劇が訪れる」

というのが、今世界中で起きているこの悪賢いウイルスとの戦いの実相だったりもするから*1ワクチンが回ってくる順番など気にせず冷静に眺めているのが吉でしょう、と思っているところである*2

・・・で、そんな中、先月末から続いていた国内各社の3月期の決算発表が今日で一段落した。

これは1年前から言い続けていたことではあるのだが、決算発表の数字を見る限り、ほとんどの会社の業績はそこまで悪くない

k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

昨年の第一四半期決算あたりからチェックしている「2桁増収&増益」企業数は、年間を通じて400社を超えるくらいの水準(全上場企業の1割強)をキープしたままだったし、特に今年の1-3月期で、前年の凹み、期ズレを取り戻した会社が多かったこともあって、3月から4月にかけて上方修正のリリースを出してくる会社も実に多かった*3

昨春からずっと株式市場が活況を呈しているのを見て「何で今株価が上がっているか分からない」とぼやいていた人も時々見かけたが、終わってみれば、期初では弱気の予測を立てていた会社の中にも、ここにきて配当額を通年ベースに戻したり、さらに配当金をアップさせてきた会社も多いから、結果的には積極的に投資した者に先見の明があった、ということなのだと思っている。

もちろん、この勢いが未来永劫続く、なんてことはあり得ない。

この一週間の急激な株価の変動は専ら外在的要因によるところが大きいので大して気にする必要はないと思うのだが、ここにきて、この一年の間ずっと続いてきたトレンド*4がどう変わるかが見えにくくなってきているのが気になっていて、特に、ずっと好調だったスーパー、ドラッグストア等の月次の数字は前年割れ、半導体サプライチェーンが乱れて上流から下流までいろいろ影響が出てきている、DX系も需要が一巡してきたところで次の一手を打てずに頭打ちになりかけている会社が多い・・・ということで、次の牽引役が見えないのが一番の不安材料か。

冷静に振り返れば、「新型コロナ」以前から緩やかな下降曲線を辿っていたのが、この国の製造業であり、今大苦戦している各業種*5だったわけだから、そう簡単に牽引役が見つかるはずもないのだが、だとすると、この先、市場のトレンドもまた変わってきてしまうのかな、と思ったりもして。

こと資産運用の観点で言えば、世界の状況がめまぐるしく変わる中で、どこにどう効率的に資産を配分するか、気にしてもし過ぎることはないのだが、目の前の仕事に関して言えば、栄枯盛衰、諸行無常。どういう立場でかかわっていても、自分一人の力で大きなトレンドを変えることなどできないのだから、刹那的と言われようが、先のことなど考えず、今できる一つ一つのことに集中して淡々と片づけるしかないよね、というのが今の結論。

そして、そういう観点からいえば、今、多くの関係者にとって大事なのは、5年後、10年後に会社がどうなっているか、なんていう高尚な話ではなく、目の前に迫る6月総会とその先にある市場区分変更を無難に乗り切る、という話だったりもするわけで、その観点から今年の「株主総会2021」をプレビューするならば、ざっと以下のような感じだろうか。

会計監査人が交代する会社が今年はいつになく多い気がする*6

社外取締役設置完全義務化の影響か、監査等委員会設置会社に移行する会社も相変わらず多い

・会場は例年通り、という会社が多いが、規模の大きい会社では「最低でもLIVE中継(not 参加型)」がデフォルトになりつつある*7

・想定される質問のうち、一番聞かれる可能性が高く、かつ答弁が難しいのは「収益認識基準適用前後の収益数値の比較」のような気がする*8

あと、昨年ほどの混乱はないものの、ここにきて5月総会の会社で直前の会場変更のリリースがいくつか出てきているのも気がかりなところで*9、(昨年から完璧にシミュレーションしてるから問題ない、という会社も多いとは思うが)昨年同様、用心するにこしたことはないのでしょうね、と。

ということで、毎年のことではあるが、今は、各社のご担当者が心身を害することなく無事、爽やかな夏を迎えられることを心から願うばかりである。

*1:昨年の夏頃の欧州から年明け頃のインドまで、ハリウッドのサスペンス映画もびっくりのどんでん返しが起き続けている。そして今、完全に抑え込んでいたはずの台湾ですら危うい状況になりかけている、というところにこの問題の難しさがある。

*2:順番が回ってくる頃には、ウイルスが変異に変異を遂げて完全に”ただの風邪”的なものに戻っていても不思議ではないし、そうなったらもはや打つ意味などないのだが、それでもなお「証明書が・・・!!」と騒ぐ人々の意識が変わらないと、面倒な状況は続くのかな、と思ったり・・・。

*3:2021年12月期決算の会社の1Qの決算数値に限って言えば、増収増益でない会社を探す方が難しい状況だったりもする。

*4:一部の一般メディアが報じているような「製造業勝ち組、非製造業負け組」という分類はあまりに雑過ぎると思っていて、「製造業」でも半導体関連以外の機械製造系の会社は軒並み苦戦していたし、「非製造業」でもスーパー、ドラッグストア、ゲーム・コミック配信、DX支援等々、空前の好景気に沸いた業界は多かったのだが、いずれにしても、勝ち組と負け組を明確に分類しやすかったのがこの一年の状況だった。

*5:飲食、百貨店、旅客輸送、観光関連等々・・・。何でもかんでも”コロナのせい”にされがちだが、新型コロナで壊滅的な打撃を受けた業界には、それなりの、それ以前からの理由もある、と自分は思っている。

*6:特に大手のうち某T法人が絡むところでの交代がやたら目立つ。

*7:さすがに「バーチャルオンリー」に向けた定款変更までは時期尚早、という意見も有力だが、それでも既に確認できただけで3社は直近の総会に提案することを表明している。

*8:KAMとかESG関係の想定問答に力をかけすぎて、会計周りを手薄にしない方が良い、ということですかね。財務担当役員を答弁者で指名できる会社なら問題ないと思うけど。

*9:今週だけで4社ほど・・・。

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