祭りの後。

本日、3月期決算会社の定時株主総会「集中日」を終え、春先から断続的に続いていた株主総会2021」も一つの区切りを迎えた。

1年前、新型コロナの渦中で様々なイレギュラー対応を強いられた「株主総会2020」の時は、6月末になっても、まだまだ継続会や基準日をずらした会社の定時総会が7月以降に残っていた*1、ということで、何となく”終わったようで終わってない”雰囲気も漂っていたのだが、今年は日程変更を強いられた会社も昨年に比べればはるかに少なく、名実ともに「区切り」となった感は強い。

今年のトレンドをざっくりと振り返るなら、まず3月1日施行の改正会社法にどう対応するか、という話がスタートだったような気がする。

やれD&O保険の開示だ、役員の個人別報酬の決定方法をどうするんだ、果たすことが期待される社外取締役の役割ってどう書けばいいんじゃぁ・・・といった話でひとしきり盛り上がったのはほんの入り口。

平行して、2年続けての新型コロナ禍に対処すべく、ライブ中継からハイブリッドバーチャル総会まで、これまでにない運営手法を取り入れることになった会社も多かっただろうし、そうこうしているうちに産業競争力強化法改正案が国会に提出され、それに合わせて「バーチャルオンリー総会実施を可能とする定款変更議案」を提案する会社も出てきて、ちょっとした議論にもなった。

さらに総会には直接影響しないものの、その先まで見据えると実に大きな話となる東証市場区分再編」「コーポレート・ガバナンスコードの改訂」も、招集通知ゲラの度重なるチェックと当日の段取り手配に追われる総会関係者を直撃する結果となり、役員へのレクや追加での想定問答の作成等に追われた人も多かったことだろう。

また、事件的なことで言えば、何といっても東芝の調査報告書のインパクがあまりに強烈だった*2

会社が置かれていた状況も、会社の世の中におけるポジションもあまりに特殊すぎるがゆえに、他の会社の担当者は「遠い世界の話」と割り切って目の前の仕事に専念した人がほとんどだったのかもしれないが、今年はファンドからのESG絡みの提案に振り回された会社もいくつか見られたし、資本市場でのかじ取りを一歩間違えると今回の東芝以上に苦しい状況に追い込まれる可能性もある会社は多いだろう、ということを考えれば、誰にとっても決して対岸の火事ではなかったような気がする。

昨年のエントリーで事実上「最後のトピック」となった天馬株式会社の話題が、今年も最後の集中日に話題となり、しかも内容的には昨年以上に複雑になってしまった、というのは想像を超えていたが、結果的にはすんなり落ち着くところに落ち着いた*3のがせめてもの救いと言えば救い。

k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

新たに定時株主総会を舞台とした紛争が勃発してしまった会社の場合、この1か月、2カ月、担当者は文字通り地獄のような日々を過ごしたのではないかと推察するところだが、一方で昨年までの混乱に一区切りついたかな、と思えるような報道、開示に接すると、たとえその会社が自分の仕事とは全く縁のない会社でも胸をなでおろしたくなるところがあったりして、それもある種のドラマなのかな、と思ったりもしている。


2年越しで世の中を悩ませ続けているCOVID-19 は、日本国内でのワクチン接種が急激なスピードで進んでいることもあって、そろそろ「波」の終わりが見えてきた印象で、やがて今、欧米で先行して起きているような「街に戻る」ムードが世の中に満ちてくれば、前年度いかに苦しい思いをした会社でも「今期こそは!」と腕に力を入れたくなることも理解はできる。

ただ個人的には、事業環境が厳しいと言われながらも、「どうやってしのぐか」の方法論が比較的明確で多くの会社が健闘して良い業績を残した前年度に比べて、今年度、ここからの1年の方が未知の要素が遥かに多い。

確実に起きるであろうインフレや、、原材料の仕入れコストの高騰等々、企業にとっては決して好ましくない方向への状況変化も予想されるところだけに、ここからの1年は、どの会社も必死で、足場固めや一歩抜け出すための成長エンジンの獲得に血道をあげなければ、遅かれ早かれ苦しい状況に追い込まれることになるだろう。

そう考えると、今年はこれまで以上に「総会の余韻」に浸ることなど許されない年になるような気がする。


ただ、そんな厳しい状況だからこそ、今は、少しでも多くの会社の担当者の方々が、定時総会での一区切りを経て、(この先後始末に追われることなく)より実りある仕事ができるようになることを自分は願ってやまないのである。

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