時代とともに変わるもの、変わらないもの。

開会式も終わり、この週末からは正式に競技開始、ということで一気に様々な情報が流れるようになってきた。

いつもの五輪だと、見たい競技、見たい試合があってもどこも中継していなくて、ネットの速報を見ながらイライラしたり、ということも稀ではなかったのだが*1、今回の五輪は「無観客」という事情があってのことなのかどうか、ライブストリーミングが非常に充実しているのはありがたい限り。

週末に試行錯誤して生み出した楽しみ方をまとめておくと、以下のような感じだろうか。

1)まず、IOCの公式サイトで一日の全競技のスケジュールを確認する。
olympics.com
2)お目当ての種目、選手の登場スケジュールを確認したら、NHKのサイトに飛んでストリーミング動画の有無を確認し、あればそれを視聴。
sports.nhk.or.jp
3)LIVEでの動画表示がない時は”大人の事情”なので、民放の五輪サイトに飛ぶ*2
www.gorin.jp

記憶を辿れば、IOCの公式サイトは2000年のシドニー五輪の頃から使っているが、当日は競技ごとにスタートリストと競技結果の表示(それも微妙に不正確だったりタイムラグがあったりする)が載っているくらいで、お世辞にも使いやすい代物ではなかった。

だが、今大会では日単位でその日実施される競技種目を確認できるうえに、スタートリストはもちろん競技結果も採点内容等を含めてリアルタイムで更新されていくので、前の試合が延びて試合開始が遅れている、といった情報もすぐに把握できる*3

加えて、出場選手に関する情報も豊富。年齢や出身地、過去の五輪の成績に加え、国際大会の実績等も網羅的に掲載されているので、普通のテレビ中継では端折られてしまうような対戦相手の実績等も確認した上で視聴できる、というのも有難い。

また、NHKサイトから見られる映像は「生」の配信映像で、基本的には「実況なし」か「英語実況」しか選択できないのだが、個人的にはそれが実に素晴らしい、と思うわけで、「やれ選手の両親がどうしたこうした」とか、「故郷の○○町ではどうしたこうした」とか、「今朝はゲン担ぎでかつ丼食った」とか、そんな競技観戦には良くて余計な、下手をするとおかしなバイアスにしかならない情報抜きに映像を見ることができる、というのは、何と素晴らしいことか

ルールが分かりにくい競技とか、今の演技が凄かったのかどうか分からん、という時は英語実況で字幕を付ければ大体のことは分かるし、サッカーとかソフトボールのように「見ればわかる」競技に関しては、実況を消して放送機材が拾った音だけを聞くだけで良い。

無観客*4の上に、マイクの集音性能も良くなっているから、競技によっては選手間やコーチから出される指示の声から選手自身の息遣い、発する一言一言まで実にリアルに聞こえてくる。さらに、打球音とか器具がすれる音とか、セーリングやサーフィンのような競技になれば波の音まで・・・。

会場にいるのと同じような臨場感は十分味わえる上に、会場にいたら見られない細かい画像も見ることができ、さらに実際に会場にいたら見ることは不可能な、同時刻の他会場の競技種目もタブで画面を切り替えながら眺めることができる・・・。

血眼になって探しても競技の写真一枚を見つけてくることすら難しかった時代のことを考えると、これって本当に夢のような話で、PC1台でこれだけのことができてしまうのであれば、少なくとも見る側にとっては「無観客」でも十分お釣りがくるではないか、というのが率直な感想である*5

自分で散々映像を消費しておきながら自分が疑問に思うのは、これだけの素晴らしいコンテンツストリーミングをなぜ無料で開放しているのか?ということだったりもするわけで、大会組織委が配信プラットフォームを作って、視聴登録者に1000円でも2000円でも課金するようにしたら、減った入場料収入分も多少は取り返せるんじゃないか、と思ったりもしてしまうのだが、これも、「何もなければ普通に街中に出てしまうアクティブな人々をPCの前に釘付けにして、ちょっとでも外を出歩く人流を減らす」という戦略の一環なのだとしたら、ありがたくその戦略に乗らせていただくほかない。


現実には、そうはいっても、「メディアが作った物語に乗っかって、メディアが見せたい映像をテレビを楽しむ」という人々がほとんどなのだろうし、だから、スポットライトが当たっている選手が登場する時になると、これでもか、というくらいに、メディア媒体が”サイドストーリー”であふれることになる。

今大会に関しては、開催が1年延びたこともあって、体操の内村選手、ウェイトリフティングの三宅宏実選手といった”オールドレジェンド”な選手たちや、「復活ストーリー」で描かれようとしていた瀬戸大也選手といった選手たちが、メディア的には軒並み”当て外れ”な状況となったが、代わって新たにメダリストとなった選手たちのサイドストーリーが次々と掘り返される、という状況になっている。

それはそれで全否定するつもりはないのだけれど(自分も時々目を止めてみていたりはするので)、これだけ「伝える」ための環境が進化しているのに、相も変わらず・・・ということで良いのかな?ということは、率直な今の思いとして書き残しておくことにしたい。

*1:特に日本人じゃなくて、外国の一流選手のパフォーマンスを見たい、という時には大抵どこのチャンネルでもリアルタイムでは映像を流してくれない。

*2:もっとも、民放の放映時間帯が終わればNHKのサイトでも「見逃し」視聴が可能になるので、アクセスするたびに入る広告とかうっとうしい実況が気になるときは、終わった後にそちらで見返しても良い。

*3:更新があまりにタイムリー過ぎるので、配信に時間差のあるストリーミングとの関係では、時に”ネタバレ”となってしまうことすらある。

*4:といっても、関係者や応援の選手団だけでそれなりの人数になっていて、歓声や拍手で雰囲気もそれなりに出ている競技は結構あるように思うのだが・・・。

*5:全部ネットで見るんだったら、「地元」五輪の意味がないじゃないか、という突っ込みもあるかもしれないが、おそらく海外からだとこれらのコンテンツは視聴できないのではないかと思われるし(前回の五輪の時も、ちょうど期間中海外にいて、NHKのサイト上のダイジェスト映像を見ようとしたら見事にブロックされた記憶がある。)、時差なく見られるということだけでも意味はある(もっとも、毎日それをやっていると確実に五輪廃人になるし、Wi-Fiもパンクしてしまうのが悩ましいところなのだが・・・。)。

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