またしても繰り返される怪現象。

増えている時は、ちょっとやそっとの対策では手に負えないほど猛烈な勢いで感染者数が伸びる。
だが一度山を超えると、そこまで対策が徹底されていなくても、潮が引くように急激に減少していく。

これまで、この国がそんな”怪奇現象”に遭遇したのは一度や二度のことではない。そして、これは日本だけではなく、世界中で起きている出来事でもある。

おそらく、感染してから発症するまでのタイムラグ等を考えれば、それなりに合理的な説明もできるのだろう。
特に今年の夏に関しては、8月のお盆前くらいから一種の”抵抗勢力”として陽気に酒を振る舞っていた店の多くが「お盆休み」を口実に9月までの長い休暇に入ったことと、「ワクチン接種が間に合った層」が増えたことが明らかに効いていて、おかげで、久しぶりの「緊急事態宣言明け」の瞬間も間近に迫っている。

ただ、米国、欧州、イスラエル、最近ではシンガポール等々、ワクチン接種が先行して進み、開放感に浸っていた国々の最近の状況を見れば、それも「瞬間」でしかない、ということは明らかに分かりそうなものだ。

にもかかわらず、宣言解除と同時に「酒解禁」まで一気に時計の針を戻す、というのは、総裁選の高揚感と「ワクチン100万回作戦成功!」を旗印に総選挙に打って出ようとする政府与党の悪ノリか・・・と思わず勘ぐってしまいたくなる*1

そして、それに輪をかけて理解に苦しむのは、ここ数営業日の東証上場銘柄の動きで、旅客運輸や旅行、飲食系が軒並み急上昇。
今日などは、ここしばらくの過熱感を戒めるかのように、配当取り日直前にもかかわらず、ほとんどの業種で売り先行になっていたのだが*2、前記の業種に関しては逆にこれでもか、というくらいに跳ね上がっていた。

この先の(瞬間的な)需要回復がどの程度のものになるのか、あるいは、それに合わせて講じられる補助策がどれほどのものなのか、今の時点で正確に予測するのは難しいが、これらの業種に共通しているのは、「どんなに需要が回復しても売れるキャパには限度がある」ということで、さらに言えば、既に1年以上続いた”不景気”の煽りでコストをギリギリまで切り詰めたオペレーションをしているこれらの業界で、急に需要が復活しても、「コロナ前」と同レベルの売上につなげるのはほぼ不可能な状況にある(良くて2019年比の8割くらいまで取り戻すのがせいぜいだろう。)。

むしろ気になるのは足元の8月、9月のダメージの方で、4~9月期の業績未達、通期下方修正は必至、という会社が多い中で、株価だけが元に戻るのだとしたら、それは格好の売り材料でしかない。

依然として「コロナ前」を是とする人々が多数いる中で、長く続いた”自粛”に辟易する空気が漂っているのは理解するとしても、これまで同様「波」に踊らされ、ワクチンの効果を過信すれば、今年の冬にはより最悪な高波に襲われても全く不思議ではないわけで*3、こういうときこそ滑り出しは慎重に、そして、治療薬を街中の医院が容易に処方できるようになるまでは、おそるおそるしのいでいく。それがなぜできないのか。

新型コロナにまつわる様々な”怪現象”の中でも、もっとも解せない「一見、インテリチックな肩書を持っているのに『コロナはただの風邪』とか『人流増と感染者増の間には因果関係がない』みたいなことを平気で言ってしまう人々」の存在は最後まで消えることはなさそうだが*4、くれぐれもそういった輩に惑わされることのないように、次に為政者のトップの地位に就く方が備えるべきは、聞く耳を持たない勇気」だと思う。

再び大きな「波」が来れば、平和な日常さえ容赦なく押しつぶされてしまう。だからこそ、「さざ波」にも細心の注意が必要。

来年の春を3年ぶりの清々しさで迎えられるように、今年の残り100日が有意義に使われると今は信じたい。

*1:もちろん、9月の後半くらいからは、自分の目につくところだけでもかなりのお店が酒類提供を解禁していて、それでも感染者数の減少ペースは変わらなかった、という実態はあるのだが、自分が行った限りで言えば、飲める店も飲めない店も、来店客のほとんどは少人数でひっそりと・・・という感じで、いわばリスクを覚悟した自己責任の会食の場だった。これが堂々と「解禁」となれば、オフィシャルな「飲み会」の機会も当然増えてくるわけで、好むと好まざると巻き込まれる人が増えることは避けられないように思う。

*2:自分は午前上げ、午後に急下落、という225のチャートを見て、明日が配当落ち日か・・・と勘違いしたくらい変な動きになっていた。

*3:特にファイザー社のワクチンを先行接種していた高齢者への追加接種が進まなければ、この夏以上に悲惨な光景を目にすることになってしまうかもしれない。

*4:大体、そういうことを言っている人に限って、自分が感染するとコロリと無言になったりもするのだが、いかにCOVID-19が強力でも全員を感染させられるほどの威力はない。

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