悔しさが若者を強くする。

秋競馬が過ぎていくスピードは速く、ついこの前トライアルが始まった、と思っていたのに、今週は早くも3歳牡馬最後の一冠、菊花賞

「三冠リーチでなければ回避する」という最近の傾向は今年も変わらず、皐月賞馬・エフフォーリアとダービー馬・シャフリヤールが揃って別路線に進んだことで、GⅠ馬不在のレースとなってしまったのだが*1、これまで強力な馬たちの「壁」に阻まれていた2番手、3番手の馬たちにとってはこれがまさに絶好のチャンス。

自分は、鞍上が吉田隼人騎手、ということもあって、早い時期から「菊はステラヴェローチェ!」と思っていたところはあったし、先週、大本命ソダシで無念の敗北を喫した須貝調教師とのコンビだけに、なおさらここをリベンジマッチの場にしてほしい、という思いはあった。

馬場も味方したとはいえ、前哨戦の神戸新聞杯での強い勝ち方を見れば、ここで多くの人が支持した*2のも当然のことだろう。

だが、馬の世界にも「順番」というものがあるのか・・・。

ゲートが開いた途端、気持ちよく飛び出していったのは、皐月賞で2着だったタイトルホルダー。

皐月賞馬がここに出ていたら絶対に乗れなかったはずの横山武史騎手が、よどみない流れで引っ張って追いかけてくる馬を寄せ付けない。

ダービーで控える競馬をしたときは、距離を意識したのだろう、と勝手に思っていた(6着)。
さらに夏を越したセントライト記念でも、ハナを切らずに13着惨敗、という結果になったのを見て、「春先は頑張っていたけどここまでかなぁ・・・」と思ったのは自分だけではなかったはず。

それがまさか、「控えない」競馬に戻したことで2000m時代の勢いを取り戻すとは・・・。

結局、道中は抜群のペース配分で後続に脚を使わせ、それでいて自分の脚色は最後の直線に入っても全く衰えない。終始後方の位置取りだったステラヴェローチェが必死に追い上げても後の祭り。

後続を5馬身ちぎる完璧な優勝で、名実ともに「タイトル」を奪っていったのが、これまでGⅠタイトルとは縁がなかったタイトルホルダーだった。


面白いことに、2着に飛び込んだのは牝馬3冠でも2着を取り続けたルメール騎手が操るオーソクレース*3。そして、ゴール前激しく競り合って3着を確保したのは、勝ち馬のジョッキーと同様、パートナーが別路線に行ってしまった福永祐一騎手が騎乗したディヴァインラヴ。

ほぼ完璧な騎乗をしながらも、福永騎手にほんの数センチの差で勝利をさらわれてしまった横山武史騎手にとって、今年のダービーは「悔しい」なんて形容詞で表せるようなものですらなかったと思うし、雑誌の取材記事などを見ても、あのレースは未だに思い出したくないもの、ということになっているようだが、パートナーを変えて臨んだレースで、うっ憤を晴らすような圧倒的な逃げ切り勝ちを決めたことで、その心理はまた変わっていくのだろうか。

クラシック、しかも騎手の腕が問われる長距離戦、ということもあって、ルメール、福永、吉田隼人といった両騎手だけでなく、武豊、幸、デムーロ、池添、和田、松山そして1番人気馬に騎乗していた川田騎手まで、関西の顔役がずらりと顔をそろえたこのレースを、まさに自らの技量で制した、というこの結果が、確たる自信となって、まだ22歳の若きジョッキーの成長をますます加速させてくれることを自分は期待している。

そして、路線の棲み分けさえうまくできれば、来年、いや、もしかしたら今年の秋競馬から、タイプが異なる2頭の「一冠」馬を操って、横山武史騎手がGⅠを取りまくる・・・そんな時代が突然やってくることも夢想しつつ、引き続きまだ残っている2か月に備えたいと思うところである。

*1:2歳時のGⅠ馬2頭(グレナディアガーズ、ダノンザキッド)もマイル路線、ということでこの日の舞台からは程遠いところに行ってしまった。

*2:最後は2番人気に落ちたが、間違いなく主役の一頭だった。吉田隼人騎手も、GⅠでここまで続けて人気の馬に乗った経験はこれまでほとんどなかったのではなかろうか。

*3:馬自体もGⅠ2着。

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html