朝、届いたメールを見て思ったこと。

今朝、仕事を始めるその前に、と一瞬目をやったタブレットの画面に表示された1通のメールがあった。

「2022年4月6日よりEEA圏およびイギリスからYahoo! JAPANはご利用いただけなくなります」

というインパクトのある標題に思わず釘付け。

続く本文には、標題と同じ告知のリピートに続き、

Yahoo! JAPAN欧州経済領域(EEA)およびイギリスのお客様に継続的なサービス利用環境を提供することが困難であるとの判断から、以下の「2022年4月6日 (水)以降もご利用可能なサービス」に記載のサービスを除き、2022年4月6日 (水)以降EEAおよびイギリスからご利用いただけなくなります。
EEAおよびイギリスからのご利用が多いお客様におきましては、Yahoo!プレミアムなど月額利用料金が自動更新されるサービスをご利用の場合は解約の手続きをお願いいたします。
また、有料サービスをご利用の際には、サービスの利用可能期間にご注意いただきますようお願いいたします。

と、シンプルだがこれまでに見たことのないような言葉が並んでいた。

「ヤフーが欧州でのサービス提供をやめる」というニュース自体を知らなかったわけではない。

さる2月1日に報じられた以下の記事は、自分も目にしてそれなりの驚きとともに受け止めていた。

Zホールディングス傘下のヤフーは1日、英国と欧州経済地域(EEA)で大半のサービスの提供を4月6日以降に中止すると発表した。検索サイト「ヤフージャパン」やニュースサイト「ヤフーニュース」がこれらの地域からは閲覧できなくなる。「コストの観点で、欧州の法令順守を徹底するのが難しくなったため」(ヤフー)としている。」(日本経済新聞電子版2022年2月1日15時57分配信、強調筆者)

だが、一ユーザーとして当の事業者から直接その知らせを受け取る、ということの衝撃は、記事を見た時の比ではなかったし、”欧州の脅威”をよりリアルに感じる一つのエピソードになったことは間違いない。

検索サイトに関していえば、自分はGoogleを日本人が目にするようになった初期の頃からそれ一択になった側の人間だし、ニュースサイトも日常的に見に行くのは、オリジナルの新聞社、通信社のもので、コメントが騒々しいかの会社のものではない。

日本の中にいてすらそうなのだから、後は推して知るべし。

欧州には仕事でもプライベートでも、ちょっと前まではかなり行く機会も多かったが、当地から日本のヤフーのサイトにアクセスした記憶など、ほとんどないに等しい。

だから、今回の対応で自分自身に何か実害があるか、といえば皆無といって等しいのだが*1、これはそういうのとは別の次元の衝撃である。


GDPRの施行前後、欧州(特に英国)に行くと、欧州のデータ保護規制に対する日本企業の過剰反応が現地のリーガル系のコミュニティでは、結構な笑い話として語られていた。

その後、それなりに規模が大きな法執行が報じられたこともあって、少しは空気も変わったかと思いきや、現地でアドミを担当している方々の話を聞けば、依然として「いやいや全然、日本に比べたら・・・」という反応がこぞって返ってくる。

その背景には、極東の島国にいるとそれがあたかも全欧州市民を代表して発せられているかのように見えてしまうブリュッセル発の様々な規制が、必ずしも市民レベルの意識にまで浸透していない*2、ということもあるのだろうし、「リスクマネジメント」を「リスクをゼロにすること」とは考えない(あくまで損が出ないレベルにリスクをコントロールする、という思想ですべての物事を考える)成熟した企業社会と、舶来思想をよりナイーブに受け止める島国のそれとの差、ということもあるのかもしれないが、いずれにせよ、現地の人々はほとんど気にしていないことを、なぜか「大ごと」として受け止めようとする日本企業は多い。

だが、今回サービス中止のリリースを出した会社は、決してそういうマインドに陥るような会社ではないと自分は思っていた。

今回の重大な判断の裏に何があったのかをうかがい知ることは難しいし、もしかすると「欧州から日常的にアクセスする人は極めて少ない」という現実を前に、冷静な皮算用でリスク判断した、ということに過ぎないのかもしれないが、どれだけ制裁を食らっても果敢に欧州の一部階級の貴族的価値観に立ち向かおうとする米国の巨大プラットフォーマーたちの姿と見比べてしまうと、いろいろ考えさせられるところはある。

もちろん、会社としての経営判断は尊重されるべきではあるのだけれど、今は、このジャッジが、欧州から日本の情報にダイレクトアクセスしたいと願っている希少な方々にとっての悪しき先鞭にならないことを願うばかりである。

*1:しいて言えば、SNSでリンクされた記事を見ようとしても、欧州からだとアクセスできない可能性が高まる、ということくらいだろうか。

*2:もちろん国による温度差はある。

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