2022、北京五輪が終わった。
今の世界地図の中では政治的にはかなり微妙な立ち位置の国、しかも世界的なオミクロン大流行中の開催、ということもあって、開会式が始まる頃になってもムード的にはあまり盛り上がっていなかったのだが、始まってみたら、日を追うごとにドラマチックさが増す、冬季五輪の、いや、夏冬合わせても歴史上これまでにないくらいヒートアップした五輪になった。
数日前に↓のエントリーをアップした時点では、「さらなる興奮が呼び起こされる気配は満ちている」などと書きつつも、正直言えば、内心、「もう五輪のハイライトは終わったかな・・・」と思っていたところもあったのだが、そこから最終盤に突入したところにこれほどのドラマが待っていようとは。
k-houmu-sensi2005.hatenablog.com
悲劇のシルバーコレクターで終わっても不思議ではなかった高木美帆選手は、5種目めの1000mで遂に頂点に立つ。
短距離から中長距離、そしてチームパシュートまで、出場して全種目入賞、3種目で銀メダル、ということだけでも十分すぎるほどの偉業なのに、最後の最後を金メダルで締めるなんて、これがドラマだったら、ストーリーがベタ過ぎる、と批判されても仕方ないくらいだ。
その陰で、全ての競技を終えた後に負傷の事実を明かした小平奈緒選手や、最後の種目で再び転倒に泣いた高木菜那選手、ずっと男子短距離陣をけん引してきながら、今大会では後輩の森重航選手に先を越され、最後まで報われるところのなかった別海町出身の新浜立也選手、といった選手たちもいる。
フィギュアスケートの女子については既にエントリーを上げたとおりだし、いつもの大会ならスルーしてしまう「ペア」でも、日本ペア初の入賞に、中国ペアが地元で悲願の金メダル、と話題には事欠くことはなかった。
そして何よりも衝撃だったのは、ロコ・ソラーレ。
実力が拮抗したチームがしのぎを削った1次リーグの最終戦、スイスに敗れて万事休す、と思ったところで韓国が敗れて一転ベスト4進出。
さらに2日続けての対戦となった準決勝のスイス戦では、チーム4名全員のショットが冴えわたり、まさかのアップセットをやってのけた。
その結果、前回大会よりもさらに前に進んだ決勝で、英国と4年越しの戦いを繰り広げることになるなんて、誰が予想しただろうか。
昨夏のパラリンピック、車椅子バスケの日本代表が決勝戦まで進出した時にも感じたことだが、大会中、長い期間をかけて行われる団体種目で、自分たちの国の代表が最後まで勝ち残って、大会のトリを飾ってくれることほど嬉しく、誇らしいことはない。
試合の方は、すべてを賭けてきた英国・スコットランド代表チームのショットが冴えわたり、一方のロコ・ソラーレはこれまでにないくらいのショットの微妙なズレに苦しみ続けた。飛び交う「ナイス~」の掛け声は同じでも、表情を見れば、藤澤五月選手も吉田知那美選手も、国内選考大会でフォルティウスに追い詰められていた時のそれに戻っていた。
大敗・・・だが、それでも輝く「銀」。
終わってみれば、今大会活躍して名を挙げた選手の多くは、過去の大会でも実績を残してきた選手たちだったし、裏返せば、4年後は?8年後は?という疑問も当然頭をもたげる。
ただ、大会ごとに主役が入れ替わる「夏」とは違って、傑出した才能が第一線に立ち続けて泣き笑いを見せる「冬」には、それだけ人生に与える学びも多い。
そして、自分じゃできない、見ることしかできない、そんなコンテンツに満ちた大会だからこそ、「4年に一度」の価値もより増すんじゃなかろうか、と改めて感じた2022年の2月だった*1。
そして、そういえば、この4年に一度の冬のビッグイベントが起きるたび、自分の人生にも何かしらかのターニングポイントが訪れるのだよな・・・というジンクスを、閉会式の余韻に浸りつつ、改めて振り返って思い出したりもしている。
今年この先、何が待ち受けているかは神のみぞ知る、だが、いつかこの隣の国の五輪の記憶とともに何かを振り返る時が来るならば、それはこの五輪の記憶と同じくらい”熱”のあるものであってほしい、と、今はささやかに願っている。
*1:願わくば、これだけの素晴らしいコンテンツの日本国内での灯を消さないように、今大会の「史上最多メダル獲得」の躍進を契機に、アスリートたちを支援するスポンサーの裾野がより広がることを願うのみである。