三度目の奇跡と、完全なる神話の終焉。

もう散々メディアに報じられている話ではあるが・・・。

今回の宮城・福島地震での「やまびこ223号」の脱線事故は、自分にとっても二重の衝撃だった。

一つは、事故が起きたのが、「3・11」以前から、阪神・淡路大震災中越地震を契機に耐震補強を進め、2011年の災厄後、よりコストをかけて万全の地震対策を講じてきたはずの福島~仙台間の線区で、しかも営業運転中の列車が17両中16両脱線する、という「3・11」でも起きえなかった規模の事故になってしまったこと。

もう一つは、「脱線」が報じられた直後、見かけたTweet等の中に「復旧に明日の朝まではかかるかな」的な軽いノリのものがやたら目についたこと。

冗談を言ってはいけない鉄道事業者にとって、営業運転中の列車の脱線は、原発を運営する電力事業者にとっての「炉心溶融」とほぼ同義である。当然現場には運輸安全委員会による事故調査が入るし、現場検証を迅速に済ませたとしても、16両も脱線した列車を物理的に撤去するだけで2週間、3週間は優にかかる。さらに最低限の応急対策を施して列車を再び走らせるまでには、ざっくり見積もっても1か月くらいはかかるはずで、それは、まだ(自分の中では)記憶に新しい中越地震の時にも多くの人々が経験したはずなのに、それが共有されていないという残念さ・・・。

今回、居合わせた乗客・乗員から負傷者の報告は出ていないようで、それが不幸中の幸いであったことは間違いないのだが、一方で、そのことをもって「やっぱり日本の鉄道は安全だ」という”神話”を上塗りするのは、正直やめた方が良いのではないか、と自分は思っている。

中越地震時に「とき325号」が転倒を免れたことは今でも奇跡として語り継がれている。「3・11」で試験列車以外に脱線した列車がなかった、というのもそれ以上の奇跡だったと自分は思っている。そして今回も・・・ 三たび奇跡は起きた。

だが、「3・11」の時にも、分かる人は皆囁いていたとおり、これはただ「運が良かった」ということ以外の何ものでもない

今回事故が起きた福島~白石蔵王間は、「3・11」の時は、在線していた列車が1本もなかった区間*1。もし、数分でも地震波の到来するタイミングがずれて、このエリアを高速通過しようとしている列車が存在したらどうなっていたか。

また、事故にあったやまびこ223号は、東京発仙台行きの最終列車。人が動き始めてきた時期とはいえ、東京圏はまだ「まん延防止」発令中で、21時を過ぎれば人の動きはめっきり減る。ましてや各駅停車のやまびこで終点近くの区間、となれば、乗車していた方の人数も”平時”に比べれば格段に少なかったはずで、だからこその「負傷者ゼロ」だった、ということも念頭に置く必要がある。

もちろん、11年前も今回も、線路を支える高架橋が損傷こそすれど一本たりとも倒壊していないのは建設土木技術者の日々の尽力の賜物に他ならないし、今回の地震の第一波で緊急停止装置が作動したことも、脱線による被害を最小限にとどめた、という点で特筆すべき技術の力であることは間違いない。

ただ、それでも「脱線」を防げなかった、ということに問題の根深さがある。

そして、仮に1か月後”復旧”したとして、次に運行会社がどういう手を打つか、が「4度目」の帰趨を決めるような気がしていて、今は会社がその一歩目の選択を誤らんことを、祈るような思いで眺めているところである。

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