ルメールは勝てなくても、競馬は続く。

ここ数年、主役を張ってきた馬たちが次々とターフを去ったこともあってか、今年は年明けから何となく”異変”の空気が漂っている中央競馬界だが、中でも一番の異変は、といえば、これまでもちょこちょこ書いてきたとおり、

ルメール騎手がこれまでのようには勝てなくなった。」

ということに尽きるような気がする。

年明けから本命馬で思わぬ負けを喫するレースが続き、国内では未だ重賞勝ち星なし。

数週間前にサウジアラビアに渡った時は、日本馬たちを操って何度となく勝利を飾り、「さすが世界のルメール!」と思わせてくれたのだが、運悪く帰国後に新型コロナウイルスへの感染が判明して2週間意図せぬ隔離休暇・・・。

そして、ようやく復帰したこの3連休の3日連続開催、中京の1レース目で1番人気馬で勝利を飾り、これでエンジン全開か・・・と思ったのもつかの間、次のレースから1番人気馬で連敗。翌日も2勝こそ挙げたものの、1番人気馬で4連敗を喫し、メインのスプリングステークスでも逃げた岩田康誠騎手の馬にハナ差届かない2着。

最終日の今日にいたっては、単勝1.3倍のレッドロワで6着に敗れて波乱を引き起こすなど、6レース騎乗して0勝、という散々な有様だった。

目下リーディングを走る川田騎手は、今年は例年に増して騎乗が冴えわたっており、(時々信じられないような取りこぼしもあるものの)現時点で重賞2勝を含む47勝、勝率29.2%。このペースで行けば年間200勝にも届く勢いだから、それと比べるのはちょっと酷だとしても、現時点での勝ち星が岩田望来騎手の37勝も下回る33勝にとどまっている、というのは、何とも”らしくない”状況だというほかない。

そういえば、これまで、下級条件戦の勝負どころでは当たり前のようにルメール騎手が騎乗していたノーザンファーム系のクラブ馬たちにも、今年は岩田(望)騎手や横山(武)騎手が乗る機会が随分と増えてきていて、それは勝ち星にも明確に反映されている(横山武史騎手はルメール騎手に次ぐ31勝)。

日本で活躍するようになってから、それなりに日が経っているとはいえ、まだ42歳。

武豊騎手を筆頭に、40歳代後半から50歳代になってもまだ一線で戦っている騎手が複数いることを考えれば、まだまだ老け込むような歳ではないはずなのだが、積極的に好位に付けて抜け出しを図る下の世代の騎手たちの騎乗と比較すると、今年のルメール騎手の騎乗には「慎重に過ぎて脚余す」的なものも多いように見受けられて、騎乗馬が人気になればなるほど馬券からは外したくなる…そんな衝動にすら襲われてしまう。

それでも多くのファンは、

「例年のスロースタートの助走期間が少し長くなっただけ。これから本格的なGⅠシーズンに差し掛かれば、必ずチャンスを生かしてくるだろうし、シーズンが終わるころには「定位置」に戻っているはず」

と心の中で思っているはずだし、自分も、今年こそ川田騎手に騎手三冠を!と期待しつつ、最後は逆転されるんだろうな、と思いながら見ているのは確かだが、調子の悪さが騎乗依頼を減らし、さらに調子を落とす負のスパイラルに突入させてしまう、というケースも多いこの業界で、果たして再び上昇気流に乗れるのかどうか・・・

残酷なことに、ルメール騎手が勝てなくても休んでも、いつもの年と同じように競馬は続く。

この2022年の終わりに、我々がどういう景色を見ることになるのか今の時点では全く想像もつかないが、来週から始まる怒涛のGⅠウィークでどれだけの存在感を示せるか、それが今年一年の運命も左右するように思えるだけに、時代が変わることへの恐れと期待を同居させながら、静かに見守りたいと思うところである。

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