涙雨の後にやってくるのは変わらない日常か、それともまだ見たことのない変化、なのか。

金曜日の悲報を聞いた時に一瞬頭をよぎり、日曜日の開票速報を見ながら確信に近い感触を得ていたことが、今朝の日経紙の記事で見事なまでに裏付けられた。

日本経済新聞社参院選について投開票日の前日から7週前まで、自動音声による電話調査「世論観測」で有権者の投票意向を分析した。物価高とみられる影響を受けて低下傾向にあった自民党への投票意向は9日の最終調査で再上昇に転じた。」
「「経済対策・景気回復」を重視する層の投票先をみると、自民党は当初の45%から7月3日に38%へ低下した、その1週間後に45%へ戻った。同じ期間に変動がみられた他の政党を調べると、日本維新の会が14%から17%へ上がった後、13%と元の水準になった。
日本経済新聞2022年7月12日付朝刊・第4面)

元首相が凶弾に倒れ、突然の死を惜しむ声が飛び交うSNS上で聞こえてきたもう一つの声は、”弔い合戦”による保守系勢力の圧勝を危惧するリベラル側の嘆き。

だが、先ほど引用した↓の記事のグラフからも、実際の選挙結果からも分かるとおり、今回の不慮の事故が「革新系」政党*1に及ぼしたダメージはほとんどなく、実際に起きたのは「保守系」政党の内部での票移動だけだったように思う。

www.nikkei.com

世界が激動の波にのまれる中でも慌てず騒がず、その結果、ここまで高い支持率を維持したまま無難に乗り切ってきた与党が今回の選挙で圧勝する、というのは、最初から分かっていた話。

それよりも、ここ数回の選挙で勢いを増してきていた日本維新の会が複数区で「革新系」政党の議席を奪い、自民と合わせて圧倒的強さで参院を牛耳るようになることの方が自分は気になっていたから、いつもなら最終盤の”営業攻勢”で議席を奪い取ってきたかの党が、まさかの事件により結果的に多数の票を失い、「少し増えた」程度の結果にとどまったことで安堵したところはある*2

もちろん、こういう結果になったということは、今や「革新系」政党に引き寄せられる「浮動票」すらほとんどなくなっている、ということだから、支持する人々にとって喜べるような話では到底ないわけだが、こてこての「保守系」に二層三層固められるよりは、右から左まで混在する自民党(&それに付随する公明党)が一人勝ちする方が、まだ永田町のダイバーシティは保たれるから、個人的にはこれでよかったのではないかと思っている。

開票結果が出揃った後、勝利宣言をする与党の総裁と、沈鬱な表情の野党第一党の党首、そして悲喜こもごもの少数政党の関係者たち。メディアに流れる光景はいつもと全く変わらない。

ついでに言えば、間髪明けずに「一票の格差」訴訟が一斉に提起される、という流れまでデジャブ、である。

ただ、いつもと違うのは、本来浮かれ立つはずの与党側も、世の中も、平行して進んでいる元総理の追悼行事の真っただ中にいる、ということ、そしてこの服喪期間が明ける頃、何かが大きく動き出す予感がすることくらいだろうか。

本来なら、万人から愛されても不思議ではないくらいの一個人としての魅力を押し殺してまで、「保守政治家」としての顔を徹底して守り続けてきた元総理がこの世を去った、そのことの本当の意味に我々が気付かされるのは果たしていつのことになるのか分からないのだが、おそらく、そう遠くないうちに一つ二つ、大きな地殻変動が起きるだろうな、と自分は感じている*3

それが、この国にとって良いことなのかどうなのか、まだまだ読めないところではあるのだが、まずは今、亡くなられた方に追悼の思いを向けつつ、「次」への備えをしなくては、と思っているところである。

*1:今やかつての「保守」とか「革新」とかいう言葉が各政党やその支持勢力に当てはまる日本語ではないのは重々承知しているが、このエントリーでは、便宜上、これ以降もこれらのフレーズを使い続けることにする。

*2:一時は勝利が確実視されていた京都や愛知で議席を奪えず、関東圏でも「全敗」となれば、代表が早々と辞任を表明するのも分かるような気がする。

*3:もちろん、予想が外れて、この先もひたすら変わらない日常が流れ続ける、ということもあり得るとは思うが・・・。

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